そして変態でした…
土曜日。本来なら大学でも講義などなく休みを設けられている日。しかし、私の大学サークルは土曜日は参加自由なのだ。
毎週月曜日から金曜日のうち3日、ランダムで設けられている。そして土曜日は来る人は来る。来ない人は来ないという事になっている。
私、長知蜜樹は…サークルに来たのだ。というか休日は毎日暇である。バイトはしている事はしている。派遣のようなバイトだ。街中でティッシュ配りしてる人達をサラリーマンの方とかよく見るでしょ?アレです。
で、今日は何もないからサークルに来た訳ですが、なんと私が昨日告白した真人先輩が来るのだ!だから来た!
「……暇だなぁ」
サークル部屋は誰もいない。私のみ。今日は私と真人先輩と後3名来るらしい。
私のいる文芸サークルは人数で約15人。少ないのか多いのかわからないが、そのくらいである。男子が9名女子6名の計15名だ。誰もが私と同じ物語に触れるのが好きで、それはそれは個性豊かな世界観を持った方々である。私もその一人。
コンコン
誰かがドアをノックする。
「はーい。空いてます」
「…おう、蜜樹」
「先輩!」
今日も素敵な姿の先輩。一番最初に私の前に現れたのだった。
「飯食ったのか?」
「まだ食べてないんですよ」
「そうか!なら丁度いい。これ」
何やら白いビニール袋を手に取りこちらに見せてきた。
「今日大学に向かう途中、キッチンカーで来てたパン屋さんがあってな。気になって買って来たんだ。種類が全部で4個あるんだが、俺は既に1個頂いたので残りをどうだと思ってな」
「えっ!いいんですか?」
そして中のパンを出して貰うと、メロンパンが2種類、ドーナツ1個、カレーパンが1個。先輩曰くカレーパンが人気だったらしいので、残りがそんなにないとの事だった。だから2つ買っていたという。
私は先輩と同じカレーパンを1つ頂いた。
「うーん。美味ー!」
外はカリカリ、中はたっぷりのカレーが入っており、なんと半熟卵入りである。さらに変わっているのが、パンにも何やらスパイシーな味がするのだ。そして意外と大きいからいい感じの量であった。
「これいくらだったんですか?」
「それぞれ200円だったかな?いや、カレーパンは350円だったな。確か1500円出して足りたくらいだった気がしたな」
「ありがとうございます本当に!」
「日頃からみんなには世話になっているからな」
本当に先輩はいい人だ。一番世話をしているのは先輩な筈なのに。だって真人先輩は、そのまた上の先輩のレポートを手伝ったり、後輩達にはこういう食に関する物を買って来たりして奢ってくれる事なんてザラにあるのだ。だから、みんなからウケがいいと評判されている。そして何より、勉強面が優れているらしく、大まかに文系と理系という風に分かれると両方できるのが私にとって素敵なのである。
「かっこいい…」
「うん?何かいったか?」
「え?いや、ありがとうございますって…アハハ…」
「どういたしまして。あっ、そういえば昨日の件だが」
本を片手に持っていた先輩が急に私の昨日の事を思い出したらしく、本をサークルに設けられた本棚に入れる。どうやらサークルの棚から借りてた本だったらしい。
「昨日ですか?」
「あぁ、昨日の蜜樹の言ってた、『お前の事をどう思っているか』についてなんだが…」
なんだか、急にドキドキし始める。ちゃんとした返事が聞けそうだ。いや、ぶっちゃけ昨日ので十分であるが、まだ先輩からのトータル結果が聞けていない。
私の方を向きながら、黒のガラステーブルに私の反対側の正面に座った。
目と目が合いながら沈黙が流れる。
「お前が俺の事を人として、一人の男として好きでいてくれたっていうのは大変嬉しい事だ。だが…」
不安がよぎった。え?もしかして…今からいう返事って、フラれるの?
「…………」
「……はい」
「……俺は色々考えたんだ。俺達生命を持つ者は何故相手を愛した事で生まれるのか。いや、正確に言えば!」
目つきが変わった。あんなに目を見開いて何かを訴えるような表情になった先輩は初めてである。
「何故セッ○スをするのか!」
また大声で公共の場では言えない事を口喋った。
「な、何を言ってるんですか!先輩!こ、ここに女子がいるというのに!」
「え?いや昨日人気が多い所で大声で変な事言うなと言っていたじゃないか」
「いやいやいや、確かにそうでしたけど、それ以前の話ですよ。まずここに異性の人間がいるのにその…セ…」
「セッ○スか?」
「それ!そんな事平気で言うなんて…」
「だがそんなに大きな声で言ってないだろ」
「いや先輩!そこじゃないです、問題は。声のボリュームとか以前なんですよ!セッ○スって言うのがダメだって事なんです!っていうか私までセッ○ス言う羽目になったじゃないですか!」
「お前、昨日大声で変な事言うなって言ってたのに、今日セッ○スって思い切り大声で言ってないか?」
……そうでした。さっき先輩に訴える為に大声で言ってしまいました…失礼致しました。
「とにかく、セ…もうそういうのは無しにしましょう。場をわきまえてください」
「いや、それでは俺の伝えたい事が言えない!言い方の問題なのではないか?……求愛行動…と言い直そう。それならいいだろ?」
「そうですね。それなら…」
「求愛行動をしてしまうのか!!」
「だから大声で言わないでくださいって!言い方変えたから言い訳じゃないです!」
「わかった。大声で言わないから聞いてほしいんだ!求愛行動!オスとメスが互いに体の関係まで至るようになり、動物的本能のままに行動していき、性の交わりによって交尾に至った結果我々のような新しい生命が誕生する。そうやって子孫が繁栄するのは、その求愛行動があってこその連鎖で存在する。そんな求愛行動によって生まれた者達がまた求愛行動をして求愛行動に…」
「求愛行動言い過ぎです!それも少しは控えてくださいよ!」
「しかしここには俺達しかいない!大勢の前ではない。しかも言い方も先程と違って丁寧な言葉に変えた!だから言い放題だろ!」
「セクハラじゃないですか!?」
「そのセクハラな事で生まれたのが我々だ!だからお前も、その事を受け入れなければならない!お前もセクハラによって生まれた命なんだ!」
「意味がわかりません!それもうモラハラです!」
「だが、お前の昨日の話からこう繋がった訳で、こうなるのもお前も少しは原因ではあるぞ!」
「いやこうなるように思考したのは先輩です!そんな卑猥な話一度も私はしていませんから!」
「していなくても、俺達はそんな卑猥な出来事から生まれた産物なんだぞ!文句言えないだろ!」
「やめてください!」
「そもそも何故世の中オスとメスしかいないんだ!それが悪い!」
「とうとう生物論に文句言い始めた!」
「うぃーっす!ってどうした?」
誰かがサークル部屋に入って来た。先輩の友達の『
「先輩!?」
マズイ!さっきまでの話を聞かれてたら!
「どうしたどうした?なんか大事な話でもしてたのかよ」
「あぁ…。俺達は皆卑猥な奴らなんだ」
その場が真人先輩の一言で、さっきまでのうるさかった部屋が沈黙の空気に包まれた。
「………ごめん、俺警察呼ぶわ」
「「やめてぇぇぇ!」」
二人でなんとか説得した。
一旦蓮先輩を椅子に座らせた。
「真人、後輩を汚すなよ…」
「違う!俺は汚してない!汚す予定もない!」
「何言ってんの…」
「先輩もうやめましょ…」
「なんでだ。俺は伝えたい事がまだ伝えられてないぞ」
「真人、後輩が嫌がってる。マジで警察行きにならない為にも、もうやめとけ」
「なんでだ!警察の連中だって汚れている奴もいるだろ!」
「まぁ、そうだよな…」
「いや、蓮先輩も乗らないでくださいよ」
「汚職に手を出す奴なんていっぱいいるもんな」
あ、そっちか…。よかったぁ、蓮先輩まで伝染しないで済んで。
「警察は世の中の汚職に手を出す連中を取り締まるのに毎日大変だからなぁ。自らの手でそんな現場に足を踏み入れなければならないから苦労するもんなぁ」
「全くその通りだ…」
いや真人先輩の考えてる事と全然違いますから…
「あの、真人先輩。今度にしましょ、今度に…」
「……そうだな。今はだめだ…」
やっと落ち着いた。
蓮先輩は真人先輩の買ってきてくれたパンを1つ頂いていた。そして、残りのパンをもう2人に上げる事にする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます