猫を見る②
良く晴れた土曜日。こんなに気持ちのいい日はみんな街に遊びに出かけているのか、小さな神社の境内には誰もいない。
その代わり、そこは猫の楽園となっていた。
「いっぱいいるなあ」
身体の大きな猫や手足の短い猫、鼻先だけが白い黒猫など様々な猫がそこにはいた。まるで我が家のようにくつろいでいる。
僕は気配を消して猫たちをじっと見る。『watch』だ。
木陰で寝転んでいる猫たちは一様に動く気配がない。前に本で読んだが、猫の瞳孔は明るい場所では細く、暗い場所では広くなるらしい。確かにこの間見た猫と違って、みんな目が真ん丸で真っ黒だ。
「……あれ」
どこから現れたのか、やけに毛並みの整った猫が歩いてきた。細い赤色の首輪がついている。近所の飼い猫だろうか。
すると辺りの猫たちは丸まっていた身体を素早く持ち上げて立ち上がった。毛を逆立て、眼には殺気が滲む。
叫び声が耳を
鼻先の白い黒猫が赤い首輪の猫の頭を殴り、殴られた猫のシルエットがぶれた。それは猫パンチなんて可愛いものじゃない。
明確に相手を傷つけようとする、攻撃だ。
殴られた赤い首輪の猫はなんとか応酬するも敵わず、早足でその場を去っていく。
「縄張り、か」
猫は一見自由そうに見えるが、それぞれ確固とした自分のテリトリーを持っているそうだ。そしてそこを侵されることを何より嫌う。
赤い首輪の猫は知ってか知らずか彼らの縄張りに侵入した。だから排除された。
猫たちはまるで何事もなかったかのように再び丸くなっている。
これが猫の楽園。なんて仮初めの平和だろう。
彼らは僕たちが思うよりも狭い世界で生きているのかもしれなかった。
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