第七話 次なる一歩

 よーし今日からおれも学校へ! ……とはならなかった。

 残念ながら、学校は五歳以上でないと入れなかったらしい。テオスには「ごめんな」と謝られたけど、これに関してはしょうがないとしか言いようがない。学校は保育園ではないからな。

 あと二年経って、まだ興味があったら検討するとしよう。


 しかし、悪いことばかりではない。それの代わりと言っちゃなんだけど、なんと『神権術 中位』~!

 またもや見たことない代物だが、相変わらずテオスの私物だそう。もうこの辺の詮索はよそう。

 学校は少し残念だったがこの本をもらえたので結果良しとしよう。




◇◇◇




「はあー!? むっっっず!!」


 早速本の中身を確認し、軽く読み流していただけで気付いたのだが、これは想像の遥か上だ。もちろんある程度は予想していた。だがこれほどとは。中位神権術、これは低位神権術とはまるで比べ物にならない。まさに別次元だ。


「これ本当に同じ魔法か?」


 と、そこに


「苦戦しているじゃないか」


 テオスが覗いてきた。今日はずっと家みたいだ。そういえばテオス自身の神権術は見たことがないな。


「神権術かい? ははは、すまないこう見えて神権術はおろか炎すらも出せないんだ」


「え、そうなの? それなのにあんな神権術の本を持っているの?」


「はは……は、子どもの何気ない発言はたまに凶器になりうるね」


 しまった。これじゃ死体蹴りしているようなものじゃないか。おれも同じ立場で同じこと言われるとかなりきつい。


「そ、それより、何かわからないことがあったんじゃないのかい?」


「あ、そうだった。えーと……」


 正直最初は炎も出せないテオスに聞くのもどうかとは思った。しかし、少し話を聞いてみたらすぐに神権術の理解者だというのがわかった。寄せ集めの知識とかそんな安っぽいものではなく、ちゃんと筋が通っている。なぜここまで理解わかっていて炎すら出せないんだ? そんな疑問を持ちながら、テオスと本を読み進めて一日が過ぎた。




◇◇◇




 その次の日の朝。海辺。


「さあやってみせてごらん」


「うん……」


 本の通りに炎をイメージする。

 ぼわっ!!


「まだ足りない、もっとだフレイ!」


「くうっ!」


 ぼわわっ!!


「そうだ、そこでイメージを固めるんだ!」


 (イメージ、イメージ……!)



 中位神権術 <凍結魔法> “氷晶の城アイスクリスタル・キャッスル



 きぃぃぃん!

 その凍り付くような音と同時に、前方に三メートルほどの氷の城が出来上がった。やった、成功だ!


「よくやったな、フレイ」


「う、うん! ……ハァ、でも、なんていうか……ハァ、疲れたよ」

 

 中位神権術を一発放っただけで息が上がった。膝に手をつかないと立っていられない。こんなにも体力を消耗するものなのか。もうだめだ、寝っ転がろう。

 

 ざざーん。海の音がする。

 大の字になっている横にテオスも寝っ転がってきた。


「ははっ、疲れたか。……しかしこうしていると気持ちが良いな」


「そうだね」


 海辺の近くに氷の城。異様な光景には間違いないが、自分が神権術で生み出した城だと思うと誇らしい。


「それにしてもそうか、中位でさえもその内出来るとは思っていたが、読んで次に日でいきなり出来てしまうとはね。まったく凄い才能だよ」


「テオスの教え方が上手かったからだよ。あと……今日はもう今ので疲れちゃったな」


「ああ、これ以上やっても止めるつもりだったよ。おうちに帰ってまた一緒にお勉強しようか?」


「うん!」


 中位神権術の一歩目を踏み出せた達成感とその疲労感から、この日の実践はここまでにした。

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