第五話 神権術と才能
リリアは愉快に、テオスは少し何かを考え込むようにしていながらも二人は魔法について丁寧に教えてくれた。
この世界の魔法について。
まず『魔法全書』でも読んだ通り、この世界には数え切れない種類の魔法が存在する。そのため、魔法は大きく分けて四つの系統に分けられている。
順に
・強化系統:その名の通り自身に様々な強化を施す。上級者になるとその影響は回
りにも及ぶ。
・攻撃系統:自然現象や物理法則に影響を与え、その力を行使して直接攻撃する。
・回復系統:傷ついた者や病気、悪い状態を癒やす。
・特殊系統:召喚や弱体化、結界など様々なものがあるが、雑に言えばその他。
そして魔法の中でも階級として、
低位<中位<上位<最上位<
それから、どうやらこの世界の住人は誰しもが魂に
炎の種類には炎の三原色と呼ばれる赤・青・黄の炎が存在する。
人それぞれ色の混じり具合や明るさの違いはあるが、結論明るければ明るいほど適正魔法は輝く。
その適正となるのが、
・赤=強化系統
・青=攻撃系統
・黄=回復系統、特殊系統
とりあえずは、“持って生まれた炎の色によって魔法の得意不得意が別れ、その炎の色の中でも明るいほど魔法の才能がある”、ということだな。適正のない魔法も習得はできるが、やはり適正のある魔法を極めるのがベターなようだ。
あれ、神権術はどの系統に分類されるのだろう?
「え、分かっていない?」
なんと、神権術はどの系統に分類されるか未だに分かっていないらしい。
いや、でもおかしい。ここまで魔法について詳しくまとめられた本が世に出ている中で、分類すら分かっていないとは一体どうゆうことなんだ?
それもそのはず、
「炎を出すのに丸二年!?」
なんと衝撃の事実。才能のある者でさえ、何も学んでいない状態から炎を目に見える形で出そうと思うと、その多くが丸二年かかるらしい。さらに言えば、一般人はおろか、才能の無い者はどれだけかかっても炎を出すことは難しいという。
それをどうしてわずか三歳の幼き少年ができると思ったのか、うちの親バカっぽりにはさすがに驚きだ(実際出来たけど)。
それはさておき、そもそも神権術というのは世間では認知すらほとんどされていないみたいだ。
理由は様色々あるが、大きく分けて二つ。
まず、敷居が高すぎる。神権術というのは、炎を自分の手足のように扱った上で炎を魔法に変換する。その炎すら出すのに丸二年かかるというのに、そこからさらに磨き上げるのはかなり大変なものだろう。
そしてなにより、他の魔法の便利さ。現代において魔法というのは、個人の炎の力を引き出す
聞いているだけで納得する。そりゃそうだろう、二年も必死に炎を出す修行をする時間があれば、さっさと魔道具を買ってきて魔法をポンポン出したほうが有意義だ。
そんな理由もあり、神権術がどこからきてどう伝わってきたのか、どういったことができるのかなど、まだまだ研究が進んでいないのである。いや、言葉を濁さずにはっきり言おう。神権術はとんでもなく
ここまで説明されてふらふら~っとなる。おれの夢見た神権術は世間ではそんな扱いなのか。はあ。
あ、そうだ。それともう一つ気になることが残ってる。
「橙の炎については?」
「! ……そうだな。一人だけ知っている、橙の炎を持つ人物を。私も多くの者を見てきたがそれ以外に見たことはない。しかし、その者はもう……」
儚げな顔で少し上を見るテオス。余計なこと聞いちゃったかもな。この話題はよそう。
話を整理しよう。神権術というのは敷居が高い。その敷居の高さは炎を出すのに……ん? いや、待てよ。おれ炎出せたぞ? これってすごいことなんじゃ?それに、
「間違いない。炎を出せたこと自体ももちろん、あの明るさ・純度は類を見ないほどに綺麗だった。とてつもなく大きな才能だ」
テオスが確信を持って言う。
……そうか、そこまで言うなら。
いや違うな、もしかしたら神権術についてもっと知りたいと思ったあの時から、心の内は決まっていたのかもしれない。うん、決めた。おれは
「神権術を極めたい!」
「! ……ああ、そうか、そうか! いいだろう、私たちが出来ることは全部やる。頑張ろうなフレイ」
「うん!」
かつて味わったことのない高揚感。今までなんとなくだらだらと過ごしてきて生きてきたおれが、初めて自分から本気でやりたいと思った事だった。
おれは神権術を学んで極める。そう誓った。
―――――――――――――――――――――――
~後書き~
魔法についての説明が長くなってしまったかもしれません。要点をまとめますと、
・『持って生まれた炎の色によって魔法の得意不得意が別れ、その炎の色の中でも明
るいほど魔法の才能があるということ』
・『フレイ君の炎の色も、極めようとしている魔法(神権術)もまだまだ謎である』
の二点を抑えていただければ今後も苦労せず読み進めていただけると思います。
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