だから、俺は生徒会役員じゃ無いんだよ!

鈴木 那須

第1話 何度も言ってるが

奴は俺の前に現れるのだ。いくら隠れようとも逃げようとも必ず前に現れるのだ。この金曜日の6限が終わって1分以内には必ず現れる。だから俺は1分以内にこの校舎を出る!

俺が今居る教室は1階。幸運にも1階なのだ。奴に出くわさない為には俺は手段を選ばない。そう! 外に出る!先生に見られないようサッと、パッと、大胆に窓から外へ出る。本当は窓ガラスをパリンッ!なんてやりたかったけど音でバレるので今回はやめる。外は当たり前だが下が土だ。上履きが汚れるが致し方ない。目的のためには多少の犠牲は付き物だ。すまん、上履きくん。そう思いながら地面に着地する。

後は、騒がれないように昇降口に回るだけ!なのだが、それでは時間をロスする。だから、賢い俺は運動靴を持ってきている。履き替えは、学校の敷地を出てからでもできる。後は、外へ逃げるだけだ!

後はただ走った。放課後の自由を求めて走った。正門はすぐそこだ。奴の気配は微塵も感じない。やっと、やっとだ! これで、俺は自由だー!


門をくぐり切ったその瞬間、俺は背中をチョンっとつつかれた。嫌な予感しかしない。

振り向く前と見覚えのある美少女が居た。整った顔で笑顔のような怒り顔を浮かべている。嘘だろ?と絶望する俺に彼女は怒りを混じえて問いかける。

「どこ行こうとしてたの?」

ここは素直に答えるしかあるまい。

「か、帰ろうと」

そう答えると彼女は俺の襟元を掴んで自分の顔の方に引き寄せた。その状態でさらに彼女の尋問は続く。

「今日は何曜日かなぁ?」

「き金曜日です」

「金曜日の放課後、4:15分からは何があるのかなぁ?」

「せせい生徒会でしょ?」

この学校では毎週の金曜日、生徒会会議が行われている。と言っても日々の活動報告と長めの雑談くらいだが。

「そうだよね? なんで、帰ろうとしてるの?」

「そ、それは……」

「特に用事ないなら早く会議室に行こうね」

そう行って俺は今日も会議室へと連行されたのだ。


会議室にはまだ誰も居なかった。

「私たちが1番だね」

もう答える気力は無いし、抗うつもりもない。俺はされるがままに椅子に座らされた。

「それにしても、なんで君は何度も何度もサボろうとするの?あっ、もしかして……いや、それは無いか」

彼女は俺の返答が無くても話続ける。


……いやもう神様でもハエでもいいから聞いてくれ。

この学校の生徒会の会議に出席する義務があるのは生徒会役員(生徒会長・副会長・書記・会計・議長・副議長の6名)だけだ。

何度も何度も何度も彼女には言っているのだが、俺は生徒会役員じゃぁねえんだよぉお!!!!!

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だから、俺は生徒会役員じゃ無いんだよ! 鈴木 那須 @kanade0625

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