無関心
「ただいま」
おかえりなんて、言われた事は一度もなかった。
「チンしろよ」
兄が、通りすぎる時に言った。
「うん」
親に愛されていない子供は、兄妹の絆が強いと何かの本で読んだけれど…。
あれは、大嘘だ。
私は、電子レンジで晩御飯を温めていく。
無関心な家族は、全員無関心のままだ。
兄妹の絆?そんなものを感じた事は一度もなかった。
私は、ご飯を食べる。
小野田先生と管野先生と坂口君と花村君は、親の愛情をもらっているタイプだ。
小花さんと赤池さんと佐伯君は、親の愛情をもらっていないタイプだ。
私は、人を観察するのがいつしか好きになった。
そして、その人達が両親からどんな愛情をもらっているのかを考える事が楽しくなったのだ。
私は、自分が家族に関心をもたれない分、人に関心を持つ人間になってしまった。
煩わしさもないけれど、幸せもない。
家族って、一体何なのだろうか?
私は、そんな中で新田君に恋をしたんだ。
そして、季節はどんどん巡っていった。
飛び出したって話だった。
みんなは、疑問に思っていたけれど、私はやっぱりねって気持ちだった。
小花さんと花村君と坂口君に、何かあったのなんて、簡単にわかったから…。
何でも手に入ると思っていた花村君にとって、手に入らなかった事の辛さは相当だったんだと思うよ。
放課後の教室で、赤池さんと坂口君を見つけた。
坂口君は、小花さんに振られたんだと思った。
赤池さんが、坂口君を好きな気持ちが報われるんだと思うと何だか嬉しかった。
「琴ちゃん、帰ろう」
「うん」
私は、芽唯ちゃんに呼ばれて、その場を後にした。
「卒業式の日に、佐伯君に気持ち伝える」
「高校、離れるもんね?」
「そう」
「うまくいくといいね」
「ありがとう。琴ちゃんは、新田君には?」
「私は、いつかでいいよ。番号ぐらいは、聞いてみようかな?」
「そっか…。それも、ありだよね」
芽唯ちゃんと話ながら帰宅した。
そして、あっという間に卒業式の前日。
小野田先生にストーカーしていたのに、見失った。
「おのちゃん、俺ね。ずっーとおのちゃんが好きだったんだよね」
空き教室を覗き続けていて、その声に足を止めた。
新田君だ。
涙が流れて、動けなかった。
先生を助けてあげなきゃいけないのに…。
その光景を見続けていた。
私は、新田君達と何ら代わりない人間なんだ。
「夢野、何してる?」
しばらくすると、息を切らした菅野先生が、私に声をかけた。
「ごめんなさい」
私は、その場から消えた。
隣の教室に、私はまた戻ってきた。
先生の声がして、新田君達が出ていったのがわかった。
やっぱり、小野田先生と管野先生は付き合ってるんだ。
私は、ずっと気づいていた。
先生、ごめんなさい。助けられなくて…。
私は、涙でグチャグチャな目で、あの場所に行った。
やっぱり、居た。
「何でだよ、何で…。」
新田君は、一人号泣してる。
そして、あの時と同じ事をしてる。
違うのは、唇に#触__ふ__#れてる事と手についた感触を引き寄せようと頑張っている事
ガラガラ…
「また、君はそんな所で何してるの?」
「夢野」
私は、ゆっくりと歩いて新田君の腕を引っ張った。
フワッとして、尻餅をついた。
「いてーな。何するんだよ」
「死ぬのは、もっと痛いんだよ。君がいなくなって、悲しむ人間がいるのを忘れないでよ」
「俺なんかいなくなったって、誰も悲しまねーよ。おのちゃんだって」
バチン…
殴るのは、違う気がしていたけれど…。
新田君に、殴らずに愛してると伝えるすべが見つけられなかった。
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