嫌でしょ?

「夢野、痛いよ」


「私は、もっと痛いよ。君よりもっと痛い」


「何、言ってんの?」


「あの日、言ったよね?下半身と好きを連動させるべきじゃないって」


「わかってる。わかってたけど…。明日で、最後だって思ったらおのちゃんとしたくなったんだよ。あの日、噛みついた日からずっと忘れられなかったんだよ」


「君は、馬鹿でしょ?無理矢理されたら、嬉しいの?だったら、君が今ここで私に、君が先生にした事と同じ事をしたら君は、私を好きになってくれるの?」


新田にった君は、首を横にふってる。


「嫌なら、嫌だって言わなきゃやめないよ」 


さっきので、手首を痛めてるのはわかっていた。


だから、動けないのもわかっていた。


私は、彼の上にのって押し倒した。


「ほら、ちゃんと言わなきゃ。」


ネクタイをはずして、ブレザーのボタンをはずす、カッターシャツをブチンって引きちぎってあげた。


「夢野、やめて…」


「声が小さくて、よく聞こえないよ」


下に着てるTシャツに手をいれようとした時だった。


「夢野、やめてくれ」


新田君は、怯えていた。


「なーんだ、君だって小野田先生と一緒じゃない」


私は、新田君から離れた。


拒絶された事が、何よりも悲しかった。


「死ぬのって、どんな感じが見せてあげようか?」


新田隆太にったりゅうたの世界にれない私なんか不必要だ。


どうせ、これから先も私は無関心を貰うだけ。


「見てて」


「や、やめろ」


フワッとして、新田君の上に落ちた。


「いってーな」


「離して」


「離さない」


新田君は、私を強く抱き締めた。


「君は、小野田先生が好きなんでしょ?」

 

「好きだよ。どうしようもないぐらい好きで、好きで、堪らないよ」


「だったら、私なんか放っておいてよ。離してよ」


「同じだってわかるから、夢野が俺を思ってるってわかるから。好きになれるかどうかわかんねーけど。俺、お前といると下半身と好きが連動しなくてすむんだ。俺、みんなみたいに普通な人間になりたいんだ。だから、夢野。お前だけは俺をいらないなんて言わないでくれよ。」


「何言ってんの?君は、やっぱり馬鹿だね。君の世界にいれるなら、私は何だってするよ。利用されたって、殴られたって、構わないんだよ。」


「お前の方が、馬鹿だよ」


「キスも、その先もしない。君がちゃんと小野田先生に謝りに行くまでしないから…。それと私はワガママだから、1ミリでも君が私を好きになってくれないと嫌だから…。」 


「わかった。約束する。」


5年後ー


「やっと、謝れたよ。手紙になっちゃったけど」


小野田先生から、新田君に葉書が帰ってきた。


【新田君をまだ許すことは出来ないけれど、私は、先生だから許す努力をし続けるから。だから、新田君は、私なんか気にせずに夢野さんと幸せになるんだよ。】


小野田先生らしい葉書だった。


「琴子、そろそろよくない?」


「隆太は、私を好きなの?」


「当たり前だろ。何かさ、あの場所から離れたら、先生の事なんか少しずつ忘れていっちゃったんだ。」


「先生は、隆太の通過儀礼だったのかな?」


「何だ、それ?」


「馬鹿には、わかんないね」


「うるせー。」


隆太は、私にわざと顔を近づけた。


「あのさ」


「何?」


「琴子のお陰で、殴られるのが愛じゃないって知った。俺は、確かに愛されてた。琴子と違ってそうだって言ってくれたけど。あんな愛は、俺は二度といらない。」


そう言って、隆太は、私にキスをしてきた。


私も、もしかしたら隆太の通過儀礼の一つなのかもしれない…。


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