第3.5話 才能を盗み見る



 ライトが去って数刻、真昼間と呼ぶくらいの時間帯。

 光の日はこのくらい時間になると、冒険者達が完全に居なくなる。

 そんなギルドの受付で、二人の人物が話し合っている。



「『クトゥグア』様~もう少し仕事の量減らしてくださいよ~。ライト君の観察が出来ないじゃないですか」

「はぁ~それはナイアが仕事溜めてるせいでしょ。大人しくやりなさいよ」

「む~このロリ上司めが、そんなんだからちっこいんですよ」

「は?何か言った?『ナイアーラトテップ』」

「ひっ……すみませ~ん仕事しま~す」



 まあ、正確には二柱であるが。

 周囲の温度が下がったと思う程の極寒の雰囲気を出すトアに恐怖し、ナイアは渋々しぶしぶ仕事を再開する。

 

 数分経つとナイアが再び口を開く。



「ところでクトゥグア様、ライト君、行かせて良かったんですか?」

「大丈夫だよ。ライちゃん強いし」

「確かに強いです。でも"才能"は全くと言って良い程ありませんよ?私だって神器を贈ったものの、ライト君が何故『黒剛の王シュヴァルツ』になる未来が見えるのか意味が不明ですし」

「そうだね。でも大丈夫だよ」

「なんでそこまで自信を持てるんですか?」


 ナイアはトアに自身の考えていることを話す。

 それに対してトアは何の問題もない、大丈夫だと言う。

 ナイアは何故そう言い切れるのか意味が分からなかった。

 その理由を示すように、受付の下から水晶の玉のようなものを取り出し、何かをする。

 そしてその水晶から浮かび上がったウィンドウのようなものをトアに見せる。

 

「レベルも低く、これしかスキルが無いのにですか?」


 ウィンドウのには、


■=====================■

 ライト・ミドガルズ 性別-男 年齢-16

 種族-白魔 ジョブ-

 レベル-114 ランク-D 

 称号-『』

 スキル-剣術:初級,魔法:初級,怪力,聡明,会心

    -回避術,気配遮断,気配探知

 加護-

 状態-正常

■=====================■


 と表示されている。

 この内容はライトの持つギルドカードで確認することが出来る、ステータスである。

 ギルドカードとは、ギルドが発行するギルド協会に所属することを証明するカードで、サイズは手の平くらい。

 Fランクは白、Eランクは黄、Dランクは緑、Cランクは青、Bランクは紫、Aランクは赤、Sランクは金、Uランクは黒色をしている。

 機能は三つ、一に身分証明書、二に金銭のみ特別な異空間に収納することが出来る、三に自身のステータスを確認できる。

 ギルド協会の創設者が創り出したらしいが、詳細はギルド協会最上部のみが知る超超トップシークレットだ。

 このライトのステータス、普通は見れる訳ないのだ。

 個人のギルドカードでなければ見えないもの、言わば個人情報を何故閲覧えつらんできるかといえば、まあそれだけの権限と能力があるからにすぎない。



「こんなスキルとレベルで冒険者が出来ている。『迷いの大森林』で生きられていること自体が奇跡のようなものなんですよ?」



 スキルとは、その生命が持つ技能だ、ステータス閲覧、又は鑑定系スキルや魔道具でのみ見ることが出来る。

 そして、その生命の才能そのものでもある、一部を除き才能は全てスキルとして表される。

 意識的に使うもの、無意識に使われるもの、先天的なもの、後天的に得れるもの等、成長するもの、様々なものがある。

 即ち、スキルが少ない=才能が無いと同義である、ライトが見捨てられたのもこれが原因である。

 〇級と付いているスキルが最も分かり易い、これが付いているスキルには位があり、初級、中級、上級、超級、天級、神級そして最後に〇〇のことわりとなる。

 初級は初心者、誰でも取得可能、中級はちょっと戦闘ができる者が持つ、上級はその技術に特化した者ならある程度持っている。

 超級はその技術の達人と言われるものが持つ、天級からは後天的に得ることが出来ず正に天才と言われる者が持つもの。

 神級は化け物、以上。

 その先の理はというと、その系統のスキルに於いてたった一人しか持つこと出来ない特別なものだ、同時に同じ理のスキルが存在することはない。

 持つ者はその系統の頂点に立ち、その一点のみならば神とも互角に渡り合うことが出来るとか。


 次にレベル、説明長くてごめんね。

 その生命の経験の値を示すものだ、よくゲームとかであるよね。

 この世界では意外とレベルは上がりやすい、戦闘無しで普通に生活しているだけでも上がったりする、日々の生活だって経験だからね。

 何故かライトはコレの上がりが極端に遅い、何故だろうね?

 大体民間人で50~100、Fランクも同じ、Eランクは100~200、Dランクは200~500、Cランクは500~1000、Bランクで1000~2000、Aランクで2000~5000、Sランクで5000~9000、Uランクは9000以上、大体だけどね。

 レベルの上限は9999とされている、まあ本当かどうか知らないけど?

 

 さて説明終了、戻ろう。



「そうだね。けど、心配しても仕方が無いよ。ライちゃんが何をするかは私達が決めることじゃない。私達がするべきことはライちゃんを何かの色眼鏡で見ることなく、正当に評価してあげることだけ。そして私はその評価のもと、ライちゃんを信用・信頼している」


「そうですか……。私は……いえ、確かにクトゥグア様の言う通りかもしれません。私の言っていることは、自分勝手なのでしょう。一度、頭を落ち着かせて考えてみます」

「仕事は忘れちゃ駄目だよ?」

「分かってます。でも今はそちらを自分の中で解決しないと効率が悪くなりそうなので」

「…………」



 複雑な表情をして受付の奥へと下がっていくナイアを見ながら、トアは小さくため息を吐く。

 そして少し申し訳ない表情をしながら、懐から半透明の左上に"G"と書かれた手のひらサイズのカードを取り出し、



「ライト・ミドガルズのステータスを投影」



 そう呟く。

 すると目の前には、


■=====================■

 ライト・ミドガルズ 性別-男 年齢-16

 種族-白魔 ジョブ-

 レベル-114 ランク-D 

 称号-『』

 スキル-剣術:初級,魔法:初級,怪力,聡明,会心

    -回避術,気配遮断,気配探知

 加護-

 状態-正常

■=====================■


 先程と同じ表示のウィンドウが現れた。

 それが出現したのを確認したトアは続けて、



「隠蔽、完全解除」



 と呟く。

 するとウィンドウがザザッという音と共に切り替わる。

 そこには、


■=====================■

 

   [※第三者は閲覧が許可されていません]


■=====================■


 と、表示されている、私達には。

 トア視点ならしっかり表示されている、それを改めて確認したトアは、今度は隠すことなく大きな溜息ためいきを吐く。



「流石にコレは見せられないんだよね。私達の封印がほどこされているのに、今もあれだけ出来てるってホントに化け物過ぎる。全く死ぬビジョンが見えないよ」



 心底疲れた表情で、そうトアは誰もいない虚空こくうへ語る。

 だがその顔には疲れだけでなく、わずかに喜びも含まれていた。



「"ステータス"」



 トアは喜びを更に強くし、別の言葉を発する。


■=====================■

 クトゥグア 性別-女 年齢-Error

 種族-神 ジョブ-始炎神

 レベル−Error ランク-God

 称号『始原なる炎』

 スキル-始炎,概念,騙る面,破天荒,流言蜚語

    -湾曲歪曲,明鏡止水―――……

 加護-炎の概念

 状態-正常,観測隠蔽

■=====================■



「私は永い、永い間待ち続けた。そして、時は満ちた。徐々にライちゃんに合わせて封印は溶けて行く。ざっと十段階くらいあるんだっけ?まあ、そんなことはよくてさ。これで大きく世界は動く、それを近くで見守れる権利があるのが嬉しくてたまらない。……心がおどるのは本当に久しぶりだよ」



 そう、それはもう嬉しそうにトア――始炎神しえんしんクトゥグアは騒動巻き起こる未来を想像しながら呟く。



□■□■□



語り部「第三者読者でライトの本当のステータス見れなかった皆様、こ~んに~ち――グオッ」

蛇の王「煽るでない、作者が決めてるのじゃ、仕方ないのだからな」

語り部「最近、普通に殴ってくるようになったよね、蛇王」

蛇の王「そういうキャラで行こうかと思っての」

語り部「止めてくれない?蛇王のパンチってギャグモノのパンチじゃないのよ。ガチのバトルモノのパンチだからさ、俺いつか死ぬよ?」

蛇の王「問題無い、そんな軟な奴は我の隣に立っとらん」

語り部(仮に僕がそれだけ頑丈だったとして、なら殴っていいのか?いや、駄目だろ)「蛇王、俺は決めたぞ」

蛇の王「何をじゃ?」

語り部「お前のその暴力キャラ化を止めるってことをだよ、何とか進路変更させてやる!」

蛇の王「ふっ、やって見せろ、我に敵うと思うなよ?」


その後、語り部が蛇の王にボコボコにされるまで、そう時間は掛からなかった。


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