第1話 【無能】と呼ばれる者
世界[ミルフィリア]は複数ある何らかに特化した界が次元の壁によって隔てられ層状に重なった、複数で一つの世界だ。
それぞれの界は『次元の門』という神々が作り出した門で移動することが可能であり、それぞれの界には必ず複数の種族が存在する。
そんな複数ある界の一つ、人界は大きな一つの大陸と他四つの島で出来上がっている界……と言うことになっている。
大陸には三つの大国が存在しており、現在は起きていないが定期的に戦争が起きている状態だ。
人界の三大国、大陸の東側に位置するクリムゾア帝国、西側に位置するリソプレーズ聖国、南側にアウトライル王国。
その中のアウトライル王国、その南西の辺境にあるハジノスという街にとある少年が居た。
「はぁ~、今日の稼ぎはこれっぽっちか、明日も頑張んなきゃ」
名はライト・ミドガルズ、長い黒髪を後ろで一つに纏め、灰色の軽鎧の上にボロボロのマントを羽織り、長剣を背負った今年で16歳になる少年だ。
そんな彼が街の通りを歩いていると、ある会話が聞こえて来た。
「おい【
「はぁ~全く、さっさと居なくなって欲しいぜ、あんな疫病神」
「私達他の冒険者が、どれだけ迷惑していると思っているのかしら」
少し離れたところから聞こえたその言葉に、ライトは一瞬眉を
【
途轍もなく高い身体能力と魔力を持ち、髪が真っ白な種族だ、それ以外は基本、人と変わらない。
白魔は誰もが才能を持ち、白魔に生まれたならば未来は約束されていると言われるほどである。
そして、今では少しマシだが昔は実力が全て、実力の無い者は見下す、という種族でも有名だった。
何故こんな話をするかというと、ライトが白魔だからだ。
少し疑問に感じるだろうがちょっと待とう。
ところで、
隔世遺伝とは、個体の持つ遺伝形質が、その親の世代では発現せず、祖父母やそれ以前の世代から何世代も飛ばして遺伝しているように見える遺伝現象である。
実際には、発現していないだけで、遺伝はしている。
それは当然、
白魔の隔世遺伝の者は『髪が黒い』そして通常の者でも他種族を上回る身体能力と魔力が更に高くなり、誰もが追いつくことの出来ない程の圧倒的な才能を持つ。
そのような者を白魔では敬意と
話の流れで分かるだろうが、ライトは白魔の隔世遺伝だ。
しかし何故か、身体能力も魔力も白魔の並であった、それだけならばまだ良かったのだが、ライトには才能というものが欠けていた。
武器を扱う才能然り、魔法を扱う才能然り、戦闘に重きを置く白魔にとって最重要な才能が欠けに欠けまくっていた。
幸い頭はかなり良く、回転も早かった、けれど白魔にはそんなもの必要ないとされる、必要と期待されているのは武力のみ。
新たな英雄の誕生だと喜んでいた村の白魔の者達は、時が経つにつれ、ライトを無能と
家族、友人、その村の同族全てから見放され、最終的には金と生活に必要な最低限の物だけ渡され村を追い出されることとなった。
「やっと着いた」
目の前にあるのは、豪華とは言えないが貧相でもない、しっかりした建物。
慣れた動作でその宿の扉を開ける。
「いらっしゃいませ、ってライトさん!今日はどうでしたか?」
「ん~駄目だったよ。ま、運が悪かったけど、多少でも稼ぐことは出来たよ」
「そうですか。これからも頑張ってくださいね」
「本当、感謝しかないよ。シアさんも頑張ってね。今日はもう休むことにするから」
「はいっ!」
声を掛けてきたのはこの宿の店主…の娘、シアという名前だ。
この街の冒険者に半ば除け者ようにされているライトをいつも気に掛けてくれる心優しい少女だ。
ライトの二つ下の14歳で、亜麻色の髪をショートカットにした少女だ。
顔も整っていて真面目で人当たりや性格が良く、この宿に泊まる者からの評判はかなり良い。
話を戻そう。
ライトは才能は無いが身体能力は白魔の並ある為、そこら辺にものを言わせれば決して役に立たない訳ではなく【
けれど、才能と共にライトには欠けているものがあった、欠けているというか悪いというか。
……運が悪いのである、そこそこだが。
この街に初めて来て、生活費が減ってきたライトは一攫千金を狙える、冒険者になるのが、流石に一人で出来ることは限られる為パーティーを組むことにする。
しかし、ライトが行く依頼はいつも問題が起き、更には才能というものが欠けている為、戦闘は技術などは無く、力任せの乱雑なもの。
そんなものでは周囲に被害が出るのは明白。
何度もパーティー依頼をくり返していく内に冒険者達に嫌われ、ライトは『
話を変えよう。
冒険者とはギルド協会という国から独立した組織、世界そのものが運営する組織に所属して、都市や街などの民間や国から依頼を受けたり、
冒険者にはランクがあり、F,E,D,C,B,A,S,Uと上がっていく、Sランクは一人で都市を相手にできる程の強さを持ち、現在人界にはたった七人しか居ない、
更にUランクは一人で国以上を相手にできるとされ、完全に化け物だ、
そして現在のライトのランクはDである。
この町に来たのは10歳の時で、冒険者になったのは12歳の時だ。
四年掛けてやっと先日、Dランクになったのだ、初めの方に受けたパーティーでの討伐依頼で戦闘の才能の無さを痛感したライトは基本採集系の依頼しか受けておらず、依頼の達成数だけで考えれば既にBランクにになっても可笑しくない。
正直、そこまでしてまで冒険者として働くよりも普通にお店とかで働いた方が稼げる。
しかし、
「わかってるんだけどね。向いてないってことも、けど、プライドと白魔の血がそれを許さないんだよ」
たかがプライド、されどプライド。
才能が無かろうが、危険だろうが、無駄であろうが、最も戦闘に関わるであろう冒険者を辞めるということをしない根本はそこにある。
そして隔世遺伝で、才能が無くても、白魔だということだ。
見た目は違えど、その身体に流れる血は紛れもなく白魔の物であり、本能が戦いを求めているのだ。
「こんなこと、何時も考えないのになぁ。やっぱ疲れてるみたいだ。今日はしっかり休もう」
ライトは自身の借りている宿の一室へと入る。
長剣を下ろしてマントを外し、軽鎧や衣服を脱いで部屋着へ着替え、ベットに横になる。
横になると徐々に意識は
「スゥ……スゥ……」ZZZzzz……
意識は完全に眠りへと落ちた。
□■□■□
・蛇足
語り部「始まったな!本編」
蛇の王「まだ寝ただけじゃがな」
語り部「そうだけどね。相棒になる相手はどうよ?」
蛇の王「いや、だからまだ寝ただけじゃと言っとろうが、まだ全然分からぬわ」
語り部「それくらい読み取れよ、蛇の王だろ」
蛇の王「こっちが、知っとるがネタバレしないようにしてることを察せ!」
語り部「急にメタくなるな、ほらお菓子あげるから」
蛇の王「我は、子供ではない!まあ、菓子はもらうがな」
語り部(見た目は完全に子供なんだがな……それは言わない方がいいだろう)
蛇の王「ん~美味しいのじゃ、おかわり!」
語り部(いや完全に子供じゃん)「ほらよっ」
その後、子供のようにお菓子を頬張る蛇の王を語り部が眺めるという時間が続いた。
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