目を覚ますと
目が覚めると知らない天井……というわけでもなさそうだ。
しかし、香輔が倒れた食堂ではなかった。
学生が住んでいる寮の一室、つまり香輔の部屋だ。重たいまぶたを無理やり開き、周りを見渡す。
ここにはルームメイトはいない。薄暗く、静寂な空間に自分がベットに横たわっているだけ。必要最低限の簡素な生活感のある一部屋を確認して自分の部屋だと安堵する。
誰かがベットまで運んでくれたのだろうか。
保健室か病室ではないことを考えると、それほど酷い症状ではなかったのだろう。
「……うっぷ」
思い出したくもないことが頭に過ぎり、気分が悪くなってきた。
(まだ口の中に残ってるような気がする。よくわからない味ってゆうか、いろんな食材やら調味料やらをまとめて一個に凝縮して口にぶちこまれたみたいだ)
ありとあらゆる味が口の中に広がり、甘味、酸味、苦味、塩味、辛味。挙句の果てには、金属味、電気味と、味のフルコースに襲われる。しかも、食感も違うのだ。噛めば噛むほど硬くなり、液体化になり、ゼリー状にもなり、もはや口の中が地獄絵図と化した。
(鳴滝先生、こういうのを見越してニヤニヤしてたんだな……。確かに毒とか死にはしなかったけど、一瞬だけ大地の女神ガイアみたいなのに会えた気がしたぞ)
ひとまず、『あなたは土に還りなさい』と言うお告げは無かったようだ。
(つか、今何時だ)
気絶したこともあり、時間感覚が狂ってしまった香輔は薄暗い中、周りに携帯を探す。
しかし、自分のポケットに収まっているのに気づき、そこから携帯を取り出す。
ほのかな光に目を細めながらも時間を確認するが、まだ人が活動する前の早朝であった。
およそ一日ほど気絶していたことに香輔は、なんだかよく分からない脱力感が襲う。
(嘘だろ……。これじゃまた鶴宮のヤツに説教をくらうぞ。心配したことに違いはないが……)
彼女なら香輔を人一倍心配しそうだが、後が怖い。
「…………………………………………………寝よ」
とりあえず、朝食の時間まで少しあるので、このまま全てを忘却の彼方まで
ため息をつきながらもベットに寝転がり……そうなところで突然、ガバッと起き上がった。
「やばっ! ヤギの餌!」
そう叫び、血の気が引いていくのを感じながらベットから飛び起き、脚がもつれながらも、玄関のドアを体当たり気味に開けて出て行った。
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