3.「水の都の物語」シリーズ

 「無国籍ファンタジー」という言葉がこの時代はありましたな。

 今の「異世界」より設定がしっかり緻密なファンタジーです。

 当時は本当にこれがコバルトでは多かった。

 前田珠子とか~いやあまり実はあまり読んでいなかったんで何だけど。

 剣と魔法な世界ではなかったことも多かったんで、ワタシでも読めた話はあるんだけど、長くなるから離脱することもだなあ。


 まあその一つでもあったんですが。

 これはもう表紙が綺麗でしたなあ!


 そう、このイラストもあって、西洋風ファンタジーっぽく見えていたのですが、実際のとこかなり朝鮮風はいってます。

 たとえば舞。

 沢山の舞姫がというのは、日本で考える「舞姫」の発想ではない。

 まあ、当時も巷で言われていましたがね。

 たとえば「隠し名」というのも、現実には漢字を使えないからあくまで隠し名、という。

 だから西FT訳でして。

 あと、「改革をする王」が「愛妾が浮気したから」という辺りに首は捻るとこはあったんですね。


 余談なんですが、「見せしめで王妃とか王の愛妾とかが公開処刑」というのはやっぱり韓流とかピッコマとかのWebトゥーンの影響がでかい気がするんですよね。

 この「王族を人々の前で見せしめで処刑」という感覚は日本の時代劇にはそうそう出てこないですよね。

 それこそ出てくるとしたら、奈良時代くらい遡らないと出てこないと思うんですな。

 だってその後は「流刑」とか「そっと縊死」とかなんですよねー。

 だからこの「石打ちの刑で死罪」ってのは、当時もの凄く違和感があったんですわ。 

 と言うか、割とそういう微妙なとこで「発想の差異」があるんですね。


 まあこの時期はある程度作者さまも故国のことをあとがきに堂々と書いてましたからな。


・水の都の物語 前後

・月の迷宮 陽の迷宮 前中後

・陽炎の砂宮


 最初の話は王と補佐の従弟カイエン、そして水の女神の受け皿としての巫女になるための舞姫として競う少女達リランとサヒャン、それに別系統の魔法が絡んでくるという。

 最終的には王と、彼を姉の敵と狙っていたけど結局愛してしまった「魔女」の家系で先祖返りの力を持つリランが死ぬんだけど。

 このリランが友でライバルだったサヒャンが最終的には巫女となり、王の補佐で彼女に求婚していたひとと結婚するんだよな。

 で、ゾンビ化した友を女神の力で霧散させたのち、自分の腹から生まれ変わってくる様に、と再生。

 これが次の話のヒロインのリラン(記憶無し)。

 補佐だったカイエンが一番近い血族ってことで王になってサヒャンが巫女で王妃、でリランが第一王女、その下にサランという第二王女が居ると。

 このリランが姿変えの魔法で青年になって馬を手に入れるところで主人公セナルと出会って「友情」→「恋」となって、BLか? と思わせる展開の前編。

 だけど中編で実は王女だったよ! となって改めて愛を誓うんだけど、そのあと何故かお互いそれでいいのかと離ればなれになって、リランは皇太子としての何とやら~とかあって。

 ちょっとこの辺りの唐突な心境変化は首を傾げた記憶。

 それと並行して主人公の今世の兄が早世。


 ところでこの兄、太陽という隠し名でテヤン。

 元のリランは離郎。

 サヒャンは思郷。

 セナルは新日。


 で、生まれ変わった方のリランは「愛」と書いてリランと読ませる力技。実際愛はサランの方だと思うけどそこは。

 で、その死んでしまったテヤンが悪霊化してたいへん。

 生まれ変わる前の記憶を思い出してしまったリランが悔いたり死にかけたりするんだけど。

 そこを最終的にテヤンが惚れていた「彼女の記憶だけ持っていく」と消えていくと。


 で、セナルは皇太子王女を助けた勇者ってことでまあ王配候補みたいな形になるのが次の話、というか番外編。

 女神の器でもあるサヒャンおかーさまが唐突に何かあった様で硬直。

 その原因とか確かめにまた男性化させたリランとセナルともう一人(前作から出ていたのに名前が出てこない)が行って、砂漠の国の能力者の悲しい顛末を追体験するという話。

 ただここで、次の話に通じる何か、を提示しているんですが、……残念ながらその後は書かれなかったなあ。

 売り上げ+絵師様の事情と聞いては居ますが、やっぱり間が空くとあきまへんな。


 コバルトの場合、当時本を出す時には年間計画があったそーです。

 今年はこの本とこの本を、という風に決められて書くそうで。

 まあその意味ではこの作者様にはきつかったと思いますが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る