マジか~面倒ッ!



ユーティリナ・オーディン・ルクシリア View


 レイがウィリムライドに行って二日経った。

 今日は月に一回ある極晶会議クォーツミーティングの日だ。

 実はレイを行かせたのは試験もあるが、これを隠す目的もある。

 きっとレイなら、私に着いてくると思うから此処に来ると私や皆の正体がバレてしまう。

 だから試験で遠くに行かせた。


「大丈夫かな、レイ」


 黒竜の討伐を今回の目標にしたが、確かにレイは白竜を討伐している。

 けれどそれは、豪雪地帯レスロの竜だった。

 最難関迷宮の竜種は少し格が違う。

 知性は無いが魔力等がになる。

 龍と竜の違いは知性の有無や人化の可否、そして脅威が段違いに上がること。

 普通の竜はAランクが数人集まれば、五豪地帯の竜はSランクが討伐可能なんだけど、龍は一体で国を全壊させる程の強さを持つ。

 でも、基本的に龍は温厚だからよっぽどじゃなきゃ戦いにならない。

 そして、最難関迷宮の竜は一番質が悪い。

 知性が無いのに力は龍、だけど異常事態じゃなきゃ迷宮を出ない。

 もしレイが、あの白竜を基準に考えているなら苦戦は確定だと思う。


(大丈夫だって、何たってリューの使徒だしさー、リューが何も対策してないわけ無いし、レイのことチョー気に入ってるみたいだしさー)


 そうだ、きっと大丈夫。


(それに、リナが一番成功するって思ってあげなきゃダメでしょ~?)


そっか、そうだよ。

うん、大丈夫だ、私はレイを信じてる。

私は私のことに集中しなきゃ。

 もうすぐ会議室に着くんだけど、会議室の前に誰かいる。

 今日かなり早く来たはずなんだけど。


「おっ、ユナが来たのじゃ」


「ローズ、今日は先に来てるんだ」


「今日は特に予定も無かったしの」


「じゃ、オセロして待とう」


「何故オセロなのじゃ?」


「レイともっと一緒にやる為に」


「まぁ、確かにレイはオセロ強いからのぉ、妾もこの間やった時惨敗したぞ」


一週間の中でレイは皆とオセロした。

 結果は全勝無敗、とっても強かった。

 それにとっても楽しそうだった。

 そんなレイをもっと見る為、強くなる。


「じゃ、他の奴らが来るまでそれで待つのでいいかえ?」


「うん、入ろっか」


 今日は、皆どれくらいに集まるかな?




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




レイナイト・カラーレス View


 はい、またやって参りました。

 今日は黒竜の出現頻度とか見に来た。

 相変わらず人多いな。

 昨日と同じ場所に行き昨日気になったことについて書かれていないか調べる。

 ん~特に行かない方がいい日は無いようだ。

 ん?肩を触られた、後ろを見る。

 そこには昨日見た青髪の女性が居た。

 

「レイ殿、また会ったね」


「昨日はどうも、ベリーナさん」


「いやいや、私は何もしていないさ」


 べリーナさんに訊けば手間が省けるよな。


「ベリーナさん、黒竜ってどの辺りで出ますか?」


「それは奈落タルタロスでってことかい?」


「そうです」


「なら下層の大広間で偶に出て、深層なら確定で出現するよ」


「大広間限定ですか?」


「ああ、サイズのせいなのか大広間でしか出ない」


「なるほど……」


 マジか~面倒ッ!

 これは、深層である31階の大広間が最速っぽいな。

 中層までは簡単に行けたが下層からは分からない、急に難易度が跳ね上がってるかもしれんし。

 けど、頑張るしかないんだよな~。


「ありがとうございました」


「これくらいはいいさ、気を付けて」


「どうも~」


 急ぐぞ!出来れば今日中に下層を終わらせる!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ということで来ました下層、16階です。

 いや、昨日の内に20階まで行っとくべきだった。

 入り口の転移陣で10階までしか行けなくて、五階分また降りてくることになったからな。


「んなこと考えないで切り替えるか」


 まだ分からない状態で気を抜くのは危険すぎる。


カチャッ カチャッ ブンッ


「おっと、リビングアーマーか」


 所々錆びてる感じの全身鎧が後ろから切りかかってきた。


「場所も丁度良いし、下層からの奈落穴を試すか」ガンッ!


 黒白ノワール・ブランをハンマーに変えて、穴の方に行くように飛ばす。


「ナンカデテキタアァーー!?」


 気持ちわっるぅ~。

 リビングアーマーが記録にある穴の場所に行くと紫色の何か、というか触手が出てきて全体に絡みつき拘束され空いた穴へと引きずり込まれて行った。

 リ、リビングアーマーッ!!!

 くっ、済まない、俺がやっちまったばっかりにっ!

 今度はしっかり倒してやるからなっ!


「先に進もう……」

 

 中々衝撃的だった。

 極撃を発動させ、駆ける。

 道中で見る魔物は昨日の大広間で見た奴らだな。

 もしかして大広間って先の層の魔物が出るのか?ならこの道中また語ること無いじゃん。

 いや、まだ可能性を捨てるのは早い。

 リビングアーマーがいたんだから他もいるはず。


「極撃を発動しているせいで移動が速すぎて見逃してる可能性もあるな」


 でも止める気は無い。

 だってさっさと進みたいし。

 おっと何か発見!


「……宝箱か、然も何か前よりランク高そう」


 銅っぽい色の宝箱が落ちていた。

 これは、ランダム生成なのか?二回目だけど両方とも落ちてたし。

 ん~ま、いいかこれは帰ってから開けよう、今は急ぐ。

 グール、グール、レイス、スケルトン、レイス、リビングアーマー、アマスケ、グール、レイス、スケルトン、スライム、グール。

 ん?スライム?未だ会ってないよな?

 少し道を戻る。


「ぷるっぷるだ!こいつは、紛うことなきスライムだぜ!」


 楕円形の青いゼリーみたいのが跳ねている。

 ぷにぷにしてて可愛いな。

 けどよ~俺は騙されない、ここ下層だぜ?無害な見た目して凶悪なんだろ?

 丁度良くリビングアーマーが居たので、魔法で凍らせてスライムに投げる。


ジュ~ ドロッ


「……この世界のスライムはそういう系ね」


 投げられたアーマーにスライムは飛びつき包み込むとドロドロに溶かして、最終的にはアーマーが跡形もなく消えた。


「ごめんリビングアーマー、またしっかり倒せなかったよ」バンッ


 敵は取ったぞ。

 ん?お前が投げた?何を言っている勝手にスライムが飛びついたのさ。

 それにしてもスライムって死ぬと溶けて無くなるんだ。

 残るのかと思ってた。

 じゃ、先を急ごう、何かあるまでカットォ!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 全ッ然ッ何も起こらん、現在25階。

 いや、俺的には好都合なのだが、それはそれで退屈で。

 所々、大広間に冒険者が居たけど高ランクの人達みたいで手を加える隙が無かったよ。

 何もないのに後5階で今日は終わりだ。


ブォンッ パンッ


「え?うぉあ!危なっ!」


 後ろで音がしたと思ったら紫の玉が飛んできた。

 何かバチバチしてたし魔法か?

 でも何処から誰が出した?

 索敵圏内に反応は無かった、音的に転移のようなことをして後ろに回った?

 うおっと!


「今度は音のしない灰色の玉か……音のしない?」


 確かレイスの攻撃は音がしなかった筈、つまりレイス系の上位種か。

 攻撃後直ぐ何処かに潜るから見えないと仮定しよう。

 ならどうする?何かいい魔法あったっけ?

 ん~とアレにしよう。

 黒白を杖に変えて魔力を流しイメージする。


電雷波エレクウェイブ」ビリッ


 成功したっぽいな、レイスが死んだ時の音したし。

 唯俺を中心に超高圧電気を放っただけだがな。

 雷なら迷宮の壁に浸透するみたい、使えるから覚えとこうっと。


「結局姿は見えなかった」


 まあ、唯の俺の興味なので優先はしないけど。

 移動を再開する。

 極撃で移動が速くても、とうに昼を過ぎており出来れば今日も大浴場に入りたいので急ぐ。

 最短距離で降りてもしっかり時間かかるんだよな。

 もっと速く移動できる方法を探すか。


「地面に接触しないように移動……飛行は出来るのか?」


 でも、魔法でやると暴食グラがあったとしてもMPがすぐ底をつきそう。

 ユナさんの箒みたいに飛べる道具を探すか?でもそんなもの一般的に売ってるとは思えないしな~。

 それにユナさんのアレは多分何か特殊な物だろうな、じゃなきゃいくらユナさんの魔力が多くてもあれ程長時間飛べるわけないし。

 俺が持ってる装備で飛ばせものないしな。

 武器主で浮かせることしか………やってみるか。


「ん~と大剣、浮遊フロートここまでは予定通り」


 こっからが問題だ。

 地面と平行になるように意識して、黒白の位置を下げる。

 そして乗る、おおっ!いけたわ、でも仮にこのまま動かすと恐らく俺は落ちる。

 何か無いかな、そういう命令コード

 おっ、これで良いかな。


固定フィクス、これでOKだ、というかこの命令ここ以外に使いどころがあるのか?」


 黒白にはまだまだかなりの命令があるけど、全然検証出来て無いのばっかなんだよな。

 それは置いておいて、動かしてみるか。


「うおっ!…ムズイな、けど慣れればいけそうだ、それに思ったよりイメージ通りに動かせるし」


 ちょっと試してみて駄目そうなら後に回して走ろう。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 俺は今。


「サイコォーーーーーーー!!」


 爆速で奈落を移動している。

 いや~慣れたら楽しすぎる!慣れるのに若干の時間を要したが、これのお陰で元の到達時間の半分で30階に来ることが出来た。

 然も大剣の刃の部分で突撃すればそのまま魔物が倒せて楽だ。

 それに床に触れないから奈落穴の心配も必要なくなる。

 想像以上に成功したぜ。


「これで30階を周り終わったから、今日は戻ろう」


 早く温湯に浸かりたい。

 この移動法で何回かゾンビとグールを撥ねたせいで、体に汁がおもっくそ飛んできたからな。

 この服は勝手に綺麗になるが体は違う。

 疲れと汚れを取るためLet's go!


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