難易度バグってない?
試験の日から一週間たった。
その間は、ユナさん達が白竜を売ってきたり、オセロしたり、基本教養を習ったり、Sランクからの権利についての説明を受けたり、魔法の原理について詳しく教わったり、必要な物を買ったり、オセロしたりと色々と必要なことをやっていた。
ん?二回言った?ヨクワカラナイナー。
そして今、俺は。
「着いたぁーーーーーー!!」
王創国ウィリムライド王都アルカディアに一人で来ていた。
いや、言いたいことも分かる、前後の繋がりが分からないんだろ?
元は俺が白竜を狩ったのをシュティレさん達に知られたところから始まり、そこからローズさんが一人での活動の許可を出す目標に
一人での冒険者活動に許可など必要ないが、ユナさんがしっかりできるようになるまで駄目、と言ったため、許可を取る為にこんなことまでしなければいけなくなった。
「奈落に直行しなくて正解だったな」
既に日が落ち始めており、奈落に行って後だと宿が取れなかったかもしれない。
「ロードライトとか、アヴァロンとはまた違うな、何か全体的に和風感が強い」
完全に和風というわけではなく、何かごちゃ混ぜにしてるんだが、全体では纏まっている良く分からんな。
とりあえず、アルカディアでおすすめの宿屋に行こう。
「ん~これは、出汁か?いい匂いだ」
もう、夕飯時だからか何処も、いい匂いがする。
お腹減ってきた。
「王都なだけあって、貴族っぽい人も多いな」
アヴァロンと決定的に違うのはそこだ。
でも、その雰囲気が悪いとかは無く、何か服装以外に特に庶民と差は無いように感じる、あそこなんて一緒にご飯食べて、酒飲んでるし。
今更だが、この世界に差別は特にないらしい、一部の者が言っていたりするが、気にする人など皆無らしい。
だから、歩いている人も多種多様、人,獣人,巨人,魔人,翼人,竜人etc.etc.……。
「ここかぁ、またですか」
俺の前には何処かで見たことがある旅館のような建物がある。
「
俺は中に入り、受付まで行く。
「いらっしゃいませ」
「一人部屋一週間分宿泊で」
「では、身分証を」
「はい、これで」
俺は、ギルドカードを出した。
「えっSランクッ!すっすみません初めて見たもので」
「別にいいですよ」
そっちか、こんなチビがSランクなことに驚いたかと思ったぜ。
「はい、確認終わりました、代金は7万7200Dになります」
「んと、これで」
「……はい、ピッタリです、こちらが部屋の鍵になります」
「ありがとうございます」
「では、ごゆっくりと」
俺は、部屋歩き出した。
雰囲気やっぱり好きだな、ま、それは俺が日本人だからだろうがな。
「ここが部屋か」
ガチャ
「うん、変わらん」
いや、それがいいんだけども、色以外ほぼ同じだな。
「今日はもう疲れたから、シャワー浴びて寝よ」
もうクタクタなんだ、本当に、何故ならロードライトから鍛えるために極撃を発動して走ってきたからだ。
我ながら馬鹿だと思った、でもこれのお陰で一日で着いたんだよ。
馬車なら四日くらい掛かるらしいからな。
それじゃ、明日も頑張る為に寝ますか!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
コケコッコ――――――!!!!
「………」
朝だ。
さあ、張り切って行こう
先ず体を洗って朝食を食べてギルドに行こう。
そこで、奈落の現段階の攻略地図を見ることが出来るらしい。
因みにアルカディアのギルドの建物はウィリムライド支部って言うみたい。
主要都市にあるのはその都市の名前の支部になって、王都だと国の支部になるらしい。
それ以上に規模が小さくなると支店って言うらしい。
そんなことは、置いておいて動こう、時間は有限だし。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
本部は市役所くらいだったけど、支部は大きめのスーパーくらいかな。
早速入ろう。
ウィーン
ここも自動ドアなんだ。
「人の多さは変わらずか」
ん~と何処だ?…あそこか!
分かりやすくデカい水晶の板みたいのに、地図が映っていた。
俺はそれの前まで行き、しっかりと見る。
上層が5階、中層は15階、下層は30階、深層が現在42階まで攻略されていて、恐らく50階まであると予想されていると、なるほどで、上層がC、中層がB、下層がA、深層がSから入ることが推奨されていると。
推奨を超えて行動した場合、全責任が行動した者に移るね。
ああ、これが一番重要だ、深層特性、奈落穴のランダム化。
深層特性っていうのは最難関迷宮が攻略できない所以みたいなもののこと。
俺も
この場合のランダムって言うのは、日ごとに変わるってことみたい。
あ、元の迷宮の特性の話してなかった。
迷宮の内部は空間拡張がされているから、本来の地形より広い。
攻略されるまで、迷宮を外部から破壊することは不可能。
迷宮内では、一定時間で魔物が再出現する。
これくらいか?多分これで良い筈。
で、奈落は正確には、バカでかい穴の周りの地下に存在する迷宮で、外から見ると分かるのだが、奈落の内壁には穴が結構あるんだ。
それのことを奈落穴と言い、迷宮内には巧妙に隠されてその穴が存在し落ちると奈落に落ちて死ぬ。
この深層特性は、元は場所が固定されている奈落穴が、深層から毎日場所が変わるという意味みたいだ。
然も推奨ランクって、普通に出てくる魔物のランクの一個上になるんだ。
つまり深層で出てくる魔物は基本Aランク、それにプラスSランクの魔物が出現するんだ。
結論を言おう、深層、難易度バグってない?
ま、でも黒竜が出るのは下層からだし、必ずしも深層に行く必要もないのだが。
「頼むから、下層で出てくれ、俺も頑張るから」
とっ、よしこれで完了だな。
ん?何をしたかって?俺は唯、奈落の情報を見ていたわけじゃない!
字面から分かる通り、使うと見た物だったり、周囲の事柄を自動で完璧に記録してくれる、しかもそれは解析計を通して何時でも閲覧が可能!
我ながら、凄い技を作っちまったぜっ!
これで、紙に写したりしなくてもいいから楽だな。
俺は、他にも何か使えそうな情報が無いか室内を見回していると。
「おいっ!ここはテメェみてぇなガキが来るとこじゃねぇんだよ、さっさと帰れ」
確証はないが何故か自分に言ってると分かった。
そして、俺は振り向く。
「テメェだよ、そこの白髪のガキがよっ!」
「はぁ~」
「ガキはさっさと帰って家で寝てろっ!」
その馬鹿さ加減に笑いが込み上げる。
俺は嘗められるのは腹立つので、ちょっと本気で殺気を放った。
「ひっ」 カチャッ
「黙れ、その頭ぶち抜くぞ」
周りから、武器に手を掛ける音がした。
恐らくは高ランクの奴らだろう、低ランクの奴等は震えてへたり込んでるの者もいる。
そこで、横から近づく足音が聞こえた。
「済まない、その殺気抑えて頂けないだろうか?」
長い澄んだ青髪の騎士みたいな恰好の女だ。
この女、強いな。
ユナさん達程じゃないが、俺と互角くらいだ、間違いなくSランク。
「私はベリーナ・サードニクスという、この男はどうでもいいのだが、他の者達やギルドの方の作業も止まってしまうのだ、済まないが頼む、この通りだ」
そう言って頭を下げてきた。
くくっ、良いね嫌いじゃない、そういうの。
まあ、今回はいいか、元々怒ってもないし。
「……いいですよ」
「感謝する」
「いえ、こちらも大人気無かったですし、それに貴方のような同格と戦うと、この後の迷宮攻略に差し支えますしね」
「同格とは?」
「ああ、貴方Sランクでしょ?俺もSランクですから」
『・・・・・・』
俺がギルドカードを取り出しながらそう言うと、周りから音が消えた気がした。
「やはりそうだったのか、途轍もなく強いとは思って当たりは付けていたが正解だったようだな」
「おっ!気づいてたんですか?」
「そりゃあ、高ランクや強い人程見た目なんて関係なくなるからね」
この人意外と話しやすいな。
見た目からもっと堅物かと思ったんだが。
「それじゃ、俺は、奈落に行くのでここらへんで失礼します」
「貴殿ほどの者には必要ないだろうが、気を付けてな」
「はいよ」
無駄に時間使ったから急ぐか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「マジで穴だな」
目の前には、視界の奥にギリ反対側の地面が見えるくらいデカい穴があった。
然も、内壁に所々穴が開いている。
言わずもがな、最難関迷宮の奈落だ。
「あ、何か落ちた」
内壁から魔物が落ちた、魔物も掛かるのかこれは使えるな。
奈落穴は、飛行できれば回避できるほど甘くない。
穴が生きてるかのように、引きずり込もうとしてくるのだ。
下層からだけどな。
「入るのは、あそこか」
辺りを見ると地下へと進む階段があった、これから奈落の内部に入ることが出来る。
これは全部で五か所あるらしく、どこからでもしっかり入ることが可能だ。
まだ朝早くだからか、人はいない。
昼前くらいになると、臨時パーティーの募集とか、商人とかでそこそこ人が集まるらしい。
「さっさと、行くか」
グダグダしてても始まらない、さっさと黒竜を狩って帰るぞ。
正直言って、寂しい、話し相手が欲しい。
早く帰って、ユナさんとオセロがしたい!
うん、何かテンション上がったし、張り切って行くぜ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「またか、ホントに多いな、ゾンビ」バンッ グチャ
うん、キモイ。
上層はゾンビとスケルトンしか基本的に出ないらしいが多すぎる。
スケルトンはいいのだが、ゾンビは音がグチャってて嫌だ。
それに触りたくないから、銃を使ってるから魔力の消費が地味に早いんだよな。
まあ、
「やっと3階か、1階ずつが広いな」
然も、あんま周りの風景が変わらないから、感覚が狂いそうになる。
何でこんな、石のレンガで迷路みたいな通路なんだ?
それに光源が無いのに周りが見える。
そこら辺がどうしてそうなるか、というのはまだ解明されてないようだ。
リュミス様に聞けばすぐわかるけど、それは何か味気ないからやめる。
俺は、攻略本は本当に行き詰った時にしか見ない主義だ。
「ウザったいから一気に進むか、代り映えしな過ぎて暇だし」
カタカタ バンッ カランッ
極撃を発動し、記憶庫の記録を頼りに突っ走る。
途中に居る魔物も一応倒しておく。
ん?これってこんな風にあるもんなの?
「紛うことなき宝箱だな」
木で作られた、宝箱が進行方向に落ちていた。
出るとは聞いたけど、ここ道のど真ん中だぜ?
そしてサイズが何か思ってたのと違う!
「手のひらサイズとは、これ如何に」
見た目は完璧な木の宝箱なのだが、何故この大きさ?
「というかこれどうやって開けるんだ?」
調べ忘れた、仕方ないな、ここは。
リュミス様ぁ~これどうやって開けるんですかぁ~?
(レイさ、僕のこと攻略サイトだとか思ってないよね?)
い、いやそんなことはありませんよ。
(ふ~ん……今回は許してあげるさ、で、迷宮の宝箱の開け方だよね?)
そうですね、これどうすんですか?到底何か入ってるように見えませんけど。
(内部は空間が歪められているから見た目よりも全然入るよ、それを開けるには本当は鍵士っていう専門の人に頼むんだけど、レイなら自分で開けれるよ)
そんな人いるんですか、でも俺は開けれるんですね?
(ああ、宝箱には基本的に罠と鍵が掛かっていて、開けるのに技能が必要だけどレイなら《
そんなことで開けれるんだ、本職泣かせだな。
(使えるものドンドン使う主義でしょ、君は)
まあ、そうですけどね。
開け方(非正規)も分かったところで、開けるか。
宝箱に意識を向け、鍵と罠のみ集中する。
「『死ね』・・・成功か」
感覚的に成功したか分かった。
開けよう。
カパッ ドッ
「いや、多い!」
内部に入っていたであろう物が飛び出してきた。
ふぅ~やっと止まった。
で、何だコレ。
「宝石か?いや、魔石か」
地面には色とりどりの宝石の原石のようなものが散乱している。
恐らくこれは魔石だ、魔力を感じるし。
然も、結構ランクの高い物だ、平均Aくらいだな。
「これは、ユナさんに良いお土産が出来た」
魔石は、魔力が魔物の体内や地下深くで物質化した物のことを言う。
唯の魔力だけだと水晶のように透明だが、混じる属性魔力によって色が変わる。
属性魔力が混じっている量が多く、魔力濃度が高い程ランクが高くなり、色彩も鮮やかになる。
「回収完了っと、先を急ごう」
まだ5階なんだよ。
今日で中層半分の所のセーフティーエリアまで行きたいからな。
先はまだまだだから、気を付けていくか。
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