漂流者ランク判断試験:武器職
ガーンッ!!!!!
「チッ、冗談じゃないな」
おかしい、俺が殴りつけた時は生身だったはずなんだけどな。
「いやぁ~やっぱりレイは想像を超えてきていいねぇ」
「…早着替えとかのレベルじゃ済ませらんねぇな」
いつの間にかシュティレさんは、深紅の重鎧を身に着け、それと同色の長剣と大盾を持っていた。
よく見れば、カルーさんもデカい十字架をネフィラさんは大弓を持っていた。
んなことだろうとは思ったよ、試験直前まで生身でいるってことは、瞬間で準備出来るか、必要無いかの二択だからな。
だから、速攻で行こうと思ったんだけどな。
スキル無しでガントレットで殴るだけじゃ、やっぱ駄目か。
「やっぱそうなるか、これはマジで本気じゃなきゃ無理そうだ」
「終わった後は、ボクが治療するので怪我は気にしなくていいですよ」
「なるほどね、シュティレが
「カルっち言わない方が良かったと思うっす、その方がガチになれるっすのに」
「見れば分かるよ、それにしても雰囲気の変わりようが凄いねぇ」
恐らく、シュティレを倒さないと後ろに攻撃できない、けど後ろから支援が飛んでくるからシュティレを倒せないって感じか、組み合わせが最悪だな。
遠距離で攻めてみるか。
「『
ドカドカ!x5
武器主を使い最大限
「少しは効いたかね」
「……面白ことするっすね、銃なんて持って無かったと思うんすけどね、ガントレットもっすけど」
「それは、あんた等も同じだろ」
「それにはボクも同意ですが、何か口調変わりました?」
「済まんが、戦いの間は、これだから失礼があっても許せ」
「これはこれで、面白いねぇ」
「チッ、無傷か、化け物共め」
「めっちゃ、口悪くなってるっすね」
このくらいの威力じゃ無理か、なら
「こっちからも行くよ、
「速ッ!グッ」
シュティレが装備からは想像できない速度で迫り、盾の横で殴りつけてきた。
咄嗟に黒白をガントレットに変え防ぎ、暴食で威力を喰らったが、押し切られて壁までぶっ飛ばされた。
「何であのッ、クソッ」
バリバリッ ドンッ!
喋ろうとしたら、雷の矢が飛来してきたので回避する、矢が当たった場所は漏れなく爆発した。
これはネフィラか、エグいな、けど少し間があったから手加減されてるな。
腹立つ、手加減されてるって事実が、だからデカい一撃を叩き込むッ!
「極撃ッ!」
「《
俺の体を暴食の黒が覆い、黒白の刀身までもが黒く染まり、光を放ち始める。
同時に俺の脳に大量の情報が流れてくる、前なら耐え切れなくて動くことも出来なかっただろう。
「《
これは
本来なら俺だけ加速してるから既に地面についててもいいのだが、黒纏で落ちる速度を遅くしている。
黒纏は、暴食を纏う技だけど、この暴食の黒い靄、集めて固めると触れるようになるのだ。
その固めた物も俺の自由に操作できるから、それで体を持ち上げている、けど流石に完璧に浮かせなくて少しずつ落ちてる。
だけどこれだけ時間があればかなり何でもできる、それに思考も加速しているので、大量の情報もうまく処理できる。
「これが、今一番良いか」
やることは決まった、準備して時間を戻して攻撃といきますか!
「
狙うはネフィラ、遠距離攻撃は厄介だからな。
「記憶庫・戦略予測、時間加速、解除」
遅れていた世界が戻る。
俺はネフィラ目掛けて落ちながら、黒白を構える。
「ネフィラ!!避けて!それかなりヤバいです!」
「ちょっと無理かもっすね」
「遅ぇよ」
「あたしが受けるッ!」
だから何でその装備で、そんな速度でシュティレは動けんだよ!
もう避けれねぇ、このままいくか。
漆黒の刃と深紅の盾が激突する。
「《
「《
バチバチバチッ ピシッ ドゴォ―――――――ン!!!!
「クソッ、決めきれなかったか」
俺とシュティレの技がぶつかった結果、両方の力の境界で爆発が起き、吹き飛ばされた。
壁にぶつかった、即座に起き上がり警戒する。
煙が邪魔だな。
黒白を地面と平行に構える。
「《
黒白を左から右へと振りぬく。
黒い斬撃が煙を吹き飛ばす。
極撃常時発動だから、これだけでもかなりの威力だな。
そして、あそこか、膝着いてるしここまで来たら先にシュティレを潰す。
俺が駆けようとした瞬間、左からの意識外の攻撃により弾き飛ばされた。
「ぐっ」
「次行きますよ」
「んなわけねぇだろっ!」
黒白を斧に変えて、刃を迫る十字架の角に引っ掛け止める。
「止めますか、でもシュティレが動けるようになるまでの時間は、ボクが稼がせていただきますよ」
「物理系の神官か、ちょっと予想外だ」
「一芸だけじゃボク達の領域では、やってけませんっよッ」
力技で押し切られた。
あのデカさの十字架をあの速度で振るとか力強すぎだろ、カルー。
チッ、この反応、矢か、右に回避だ。
バリバリッ ドカン! ブンッ!
回避に合わせた、カルーの十字架が腹に叩き込まれる。
「がっ」
「予測済みです、敵はボクだけじゃないですよ」
「さっきは、やられましたけど、今度は無いっすよ」
「……なるほど、面倒だ」
いくら黒纏を使っていても、威力が高すぎて喰らい切れないか。
ちょこちょこ体力が削られるな、何か無いか?
「ちょっと趣向を変えて、
「デカいな」
「火魔法は得意ですから」
カルーの十字架の先に直径一m程の炎の弾が出現した。
とんでもない熱量だ、けど丁度いい。
俺は、黒白を杖に変えた。
実戦は初だから上手くいくかね。
密かに魔力を黒白に流し、高めていく。
「行きますよっ」ズゴゴッ
「ここだ、
魔力の解放と共に唱えると辺り一帯が凍結した。
成功…し過ぎたな、やりすぎたわ。
けどこれを捕食して回復するか。
ん?いつ魔法なんて習得したかって?後で話す。
「暴食、おっけ、回復完了」
「その黒いの何なんですか、さっきから攻撃の度に何かが抜けてる気がします」
「そいつは、この試験が終わってからっだっ」ガキンッ!
黒白を杖から槍に変えて、カルーへ突き出す。
本来なら、直撃コースだったんだけどな、タイミング良すぎ。
「そうだねぇ、聞きたいこといっぱいだしね」
「早すぎだろうが」
「あれは、結構ヤバかったねぇ」
復帰して言うな、煽ってんのか、オラッ!
防御と共に繰り出された、剣を黒白で捌きながら、次の一手を探す。
バチッ「チッ、ネフィラがうぜぇな」
「この状況じゃなきゃ唯の悪口っすよ」
「だから無効化することにした、もう出し惜しみはしねぇぜ,《
「うわっ!何か気持ち悪いです」
「あたしも同意ねぇ」
「……それ、触れたら基本的に何でも死ぬから気を付けろっよっ!」
気持ち悪くないだろ。
「あ~うちの矢がマジで消えちゃうっすね」
「チッ、もうちょっと焦れよ、アチッ!ヤバッ、回避ッ!」
黒白を持っていた手に熱さを感じ思わず、黒白を落とした。
カルーの火魔法か、熱だけ伝えるとか器用なことしやがる。
俺が武器を落とした隙を狙いシュティレが剣で切りかかってくる。
それを間一髪で回避し、そこを離脱する。
「これで、武器はあの短剣だけだねぇ」
「それは、どうだかな」
「え?」
「
黒白は俺の命令通り、変形しながら俺の手に戻ってきた。
「ホントに何なんですかその武器、異常です」
「死滅の球体に触れても死なないあんた達のも同類だッ!」
「避けなっ!カルー」
言葉を返しながら、シュティレの盾を踏み台に飛び、黒白を振るう。
刃が当たる寸前で十字架を間に挟まれた、サイズ変更もできんのかよ。
「重いっ、けど直撃は避けましたよ」
「こっからだぜっ!短剣」
「なっ!」
黒白を短剣に変え、左手で持ち右手で戦壊無刃を引き抜く。
大剣が無くなったことでバランスを崩した、カルーを拳鍔で殴り飛ばす。
「グアッ」
「解ってるぜ、シュティレッ!」ガキッ
「後ろに目でも、ついてるみたいだねぇ」
後ろから迫ったシュティレの剣を黒白で受け流す。
「カルー!あたしの後ろっ!ネフィラがやるわっ!」
「はあっ、分かりましたっ」
「《
「ゴリ押しすんじゃねぇよ!《
何してのかと思ったら、これの準備かよ。
馬鹿みたいな数の矢は、流石に死滅の球体を抜けてくる。
戦壊無刃の破砕を使い、前面の空間を破壊することでそれを防ぐ。
中々、決め手が出せねぇんだよな。
『もうそろそろ、終了時間、大技で終わらせてね』
ユナさんの声だ、え?もう終わりなのか。
もうちょっと、やってたいんだけどなぁ、けどそれは今度で良いや。
三人から距離を取り、声をかける。
「ユナさんが言ったから準備するぞ」
「もう時間ですか、早いですね」
「うちあんま、活躍出来てないっすね」
「まあ、これ試験だし、また今度すればいいじゃない」
黒白を長剣に変える。
そして、さっき思いついたものの準備をする。
成功するか分からんが、上手くいけばかなりの威力なはずだ。
「黒纏解除,《
ヤベっ、やり過ぎたかも。
黒白が黒い光を放ちながら、細かく振動し始めた。
No~早くしてくれ、明らかに暴発しそうだから。
「準備出来たか」
「OKだねぇ」
「ボクの方も完了です」
「うちもいけるっす」
「先手は譲ってやるよ、全てを壊し俺が勝つ、今回わな」
「言うねぇ、ま、お言葉に甘えて先に行くよ」
何て言ったが、正直どうなるかは分からん。
うへぇ、ヤバいなアレ、馬鹿げた力が集まっとる。
「《
「《
「《
全力じゃない、けど威力を高めるように技を合わせやがった。
カルーの作り出した氷塊や雪が空間を凍結させた。
それをシュティレの炎が加熱することで、冷えた空気が急激に温められたことによる爆発が起き、訓練場全体に水分が広がる。
そして、この状況で放つネフィラの雷が猛威を振るいながら、俺へと向かう。
これ大丈夫か?見てる奴らに被害出ないか?
まあ、いい、今は自分のことだ。
俺は、黒く光り震える黒白を正眼に構え、力の解放と共に振り下ろす。
「《
漆黒の刃から放たれた黒き暴威と三つの技により昇華された神の雷が衝突する。
その結末は。
「てめぇら、避けろッ!」
「言われなくてもですよっ」
「負けたっすね」
「今は気にしない、回避に専念しようねぇ!」
黒と雷は一瞬の拮抗の後、黒が雷を喰い破った。
そして黒は、そのままの勢いで三人へと向かう。
あの人達なら、死にはしないだろうけど、怪我すると面倒だな。
でも、多分大丈夫だ、あの人が動いたし、あの人の種族って結局何なんだ?
「《
「ローズ、ナイスっす!」
「いや、妾の仕事にこれも含まれとるだけじゃ」
俺の放った極大の斬撃は、ローズさんの右手に当たると元々無かったかのように消滅した。
『これにて、漂流者ランク判断試験:武器職を終了するよ』
ユナさんだ、これどうやってんだろ、脳内に直接語り掛けてくるっ!って感じだけど。
あ、見ていた、少年少女と指導官の人達が礼をして出ていった。
今回の試合、反省点ばっかだな。
これから改善していくか。
「レイこれで試験は終わり」
「え?これだけなんですか?」
「本来はもうちょっとあるけど、そこら辺は私の方で省いておくから」
「そうですか……」
何で省けるんでしょうねぇ。
まあ、今回の件でこの人達が何者か予想付いたし、何でか分かるけどね。
「私達は、採点とかの話をするから、レイは先にホールに戻っててくれる?」
「分かりました」
俺は、言われた通り訓練場を出た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユーティリナ・オーディン・ルクシリア View
レイは行ったみたいだね。
じゃあ。
「それじゃ、レイの評価をしようか」
「言ってしまえば、Sランク以外無いと思うのじゃが」
「ボクもそう思います、ボク達は全力ではなくても、本気でやりました」
「そうねぇ、なのにあそこまで対応してくるとは思いもしなかったわぁ」
「最後の方なんて、完璧に軌道を読まれて回避されまくりでした」
「それにあの武器じゃ、一つでどんな武器でもなる、それは今は存在しないが昔なら
「武器職としても問題無いっすね」
最初は、武器職は無理だと思ったけど、あれを見たら武器職以外無いと思うね。
「それに、最初の大技、アレは、私の運命を覆せし憤怒の魔盾とかの
「最後のアレも、そこそこ魔力を消費したのじゃ」
「天王技じゃなきゃ相殺できない、既にボク達の領域まで来てるってことですね」
「もう使徒だったりして、やっぱそんなこと無いっすね」
「当然じゃ、レイはまだこちらに来て二日目じゃぞ」
天王技じゃなきゃ防げないのは当然だよ。
だってレイが放ったのも天王技だし、でも何でレイが使えるの?
レイは確かにリュミス様の使徒だけど、伝授される時間なんて無かったはずなのに、いつの間に?
「あたしは、もう一つ気になることがある、レイは、魔法使ってたよねぇ、ユナは教えて無いんでしょ?」
「うん、概要を教えただけで、練習すらしてない」
そこも気になる所、そっちもあそこまでの練度で扱えるだけの時間は、無かったはずだ。
それも、超級に迫る威力でなんて。
「不思議な所ばっかりっすね、レイ、でもうちは悪い子じゃないと思うっすよ」
「ボクも同意です、不思議と何かボク達と同じような感じがするんですよね」
「それは妾も感じたのじゃ、それに血で調べたが何も問題無かったのぉ」
「ローズが調べたなら大丈夫ねぇ、あたしも問題ないと思うわ」
ローズが血を使って調べたか、まあ、吸血鬼の力で調べられるのは、身体と魂までだから使徒ってことは、バレてないはずだ。
「じゃあ、問題無しでSランクね」
「でも武器職、レイ一人だけっすから、直ぐQランクになるっすよ」
「もうボク達と、会議することになりますね」
「また賑やかになるのぉ」
「で、あたし達が、
「疑問に思ってるくらいだと思うよ?」
大丈夫、私の隠蔽は完璧なはず、バレてないと思う……多分。
「じゃ、申請しにグラマスのとこ行こう」
「そうっすね、レイを待たせるのも悪いっすから」
「そうと決まれば、行動じゃー」
急ごう、試験を頑張ったレイの頭を早く撫でたいからね。
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