本気でやった方が良さそうだ



 あの裏路地を出た後俺は雑貨屋に行き、無事オセロを購入し、現在集合場所である南門前に来てユナさんを待っている状態だ。

 ホントここ色々あって目移りしたけど、何とか押さえつけて買うのを我慢した。

 お金は計画的に使わないと、衝動買い、ダメ、絶対。

 そんなことを考えていると、ユナさんが来た。


「私の方が遅かったか、待っててくれてありがとね」


「いえいえ」


「メモの物はしっかり買えた?」


「はい、どれも忘れてないはずです」


「じゃ、中身だけ頂戴、そのリングはレイにあげる、無いと不便だからね」


「ありがとうございます!では、これが買った物です」


「……うん、全部ある、レイは良い子だ」ナデナデ


「あの、頭を撫でないでください///」


「レイは可愛いなぁ、よし、じゃあロードライトに行こうか」


「はい!」


 ユナさんについて行って門を出る。

 草原ですね~。


「また箒に乗って行くよ」


「……またですか」


「そうだね、早いからね、レイしっかり摑まっててね」


「…はい///」


「フフッ」

 

 また抱き着かなきゃいけないのか……嫌じゃないけど心臓に悪いんだよな。

 然も今回は前よりも乗ってる時間が長いんだ。

 頑張れ、俺!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 30分位経って漸く都市が見えてきた。


「あれが、神盟友好都市ロードライトですか」


「そうだね、天王六国の協和の証だね」


 アヴァロンも結構デカかったけど、ここはレベルが違うな、元の世界の小国よりよっぽど広そうだ。

 確か主要建造物はロードライト共栄学院、ルーアス大聖堂、極総王会義堂の三つだっけか。

 学院が北、聖堂が南西、会義堂が南東で位置関係が三角だったはずだ。

 アヴァロンの位置から考えてここは大体北か、つまりは一番近いデカい建物が学院、左奥が聖堂、右奥が会議堂か、上から見ると解りやすいな。


「そろそろ降りてくよ」


「分かりました」


 見えるくらいの距離から到着が早すぎる。

 降りていく―。

 人結構いるな、ていうか多くない?時間かかりそう。

 あれ?またもう一つ列あるね、俺もうこの先の展開が読めたよ。

 あーやっぱりね、だってまた軍服っぽいの着た人が二人いるもん。


「よっと」カサッ


「よし、行こうか」ふわっ


 久しぶりに感じる地面良いな。

 おっと、遅れないように付いて行く。


「これ」


「……はい、確認が取れました」


「ようこそ、神盟友好都市ロードライトへ」


「ありがと」


 何かめっちゃ早い、ユナさんが見せたの何だろ、前と違って早すぎない?

 

「先ずはギルドに行って試験を受けるよ」


「試験ですか?冒険者になるのにそんなの要りませんよね?」


「うん、けど漂流者は元々強いことがあるから特別な試験を受けてランクを決める、一から始めなくていいからお得だね」


「そんなこと説明の時に話しませんでしたよね」


「そうだね、意図的に隠したよ」


「何で…面白そうだからとか言いませんよね」


「その通り、レイ凄いね」クスクス


「ぬぅ~まあいいですよ、それがあると分かったら俺は受けますしね」


「なら問題ないね、そしてここがギルドだね」


「…なんかしっかりしてますね」


 俺の目の前には、レンガ造りの市役所みたいな建物がある。

 ギルド協会の本拠地は此処らしい、他のとこは支部でここまでデカくない。


「今回は特別な試験を私が用意した、元々は試験があるときに此処に居るSランク以上の冒険者が試験官になるんだけど、今回は私を含めた5人で判断する、私ともう一人が見ての評価、残りの三人が実戦での評価をする、後、今は新人冒険者の講座の最中だからその後にエキシビションマッチ的な感じでやるからね」


「………もういいですよ、何が来ても全力でやります」


 ユナさんが呼ぶんだから、その四人も化け物なんだろうな。

 今回ばかりは、本気でやった方が良さそうだ。


「そう、楽しみだね」


「俺は、憂鬱ですよ」


ウィーン


 自動ドアなんだ。

 中は何かフードコートみたい、人がいっぱいだ。


「ん~と、あそこだね」


「……あれすか、あそこだけ人いませんけど」


「多分あの四人が固まってるからだね、一人一人だったら、ああなんないよ」


 ユナさんに付いて行き、四人へ近付く、何か周りがザワついとる。

 近付くと、四人の恰好が見えてきた、個性が強いなー。

 情報だけまとめるか。

 竜人,身長175㎝位,赤髪のショートヘア―,赤いコート,ブレスレット,女性

 エルフ,165㎝ちょい上,薄黄髪のボブカット,白衣,ペンダント,女性

 人間,170㎝位,灰色水色が混じり髪でマッシュヘア,灰色神官服,片眼鏡,男性

 判断不可恐らく人間ではない,160㎝ちょい上,黒紫髪の三つ編み,改造した忍者服のような何か,アンクレット,女性

 種族,身長,髪,服,装身具,性別で簡潔に纏めたけど文字ならそこまでな気もする、いや、嘘ついた全然普通じゃなかったわ。

 今からあそこに行くのか、正直嫌だな、けどもう着くんすよね。


「皆、今日は来てくれてありがとうね」


「気にしなくていい、あたしは暇だったしね」


「そうですよ、ボク達の仲ですし」


「うちもそう思うっすよ」


「妾も同意するのじゃ、で、そやつが今回の主役かえ?」


「そう、レイ、伝わってるけど一応挨拶してくれる?」


「分かりました」


 一斉に見てくるな!緊張するだろ。


「どうも、レイナイト・カラーレスと言います、今回はよろしくお願いします」


「良い目だねぇ、あたしはシュティレ・ヘリオドール、よろしく」


「次はボクですね、カルー・トリフェーンです、よろしくね」


「うちの番っすね、ネフィラ・ユークレースって言うっす、よろしくっすね」


「…………」


「……ん?ッ!?」


 最後の人がこちらを見つめてくるので見つめ返したら、猛烈な殺気が放たれた。

 反射で俺はバックステップで離れた、いつでも戦壊無刃ホロウ・エンドを抜けるようにして。

 試されてるのか?なら殺気が来たわけだしこっちも殺す気で行くか。

 足に軽く極撃を発動させ、一気に距離を詰める。


バンッ!「シッ!!」ガキンッ!


「チッ」


 いつ取り出したか分からない双剣に戦壊無刃が止められた、絶断の効果で基本的に切れないものは無いはずなんだけどな。

 それに俺はかなり力を込めて切りかかった筈なのに動いてすらいない。

 マジで化け物だな。

 あの笑顔が腹立つ。

 それに反応して、俺が殴りかかろうとした時。


「ローズもういいよ、レイごめんね、試して」


「……なるほど、こいつも試験の一部ってことですか」


「そうよのぉ、中々良い一撃だったのじゃ、これなら妾も来た甲斐があるわっ」


「ちょっと殺気を放って確かめるだけだったんだけど、ローズが想像より強くするからびっくりした」


「それは、ボクも思いました、漂流者といえども強くし過ぎだと思ったのですが、杞憂でしたね」


「この程度耐えられねば、妾達が来る必要などないのじゃ」


「まあ、それにはあたしも同意するね」


「ユナの頼みでも限度があるっすからね」


「レイよ済まなかったのぉ、初対面であれは必要であっても失礼じゃった」


「別にいいですけど」


 個人的にやったとかならまだしも、試験なら別にいい。

 むしろいい経験になったぜ。


「改めて、妾はローズ・アズライト、よろしくのぉ」


「はい、皆さんよろしくお願いします」


「いやぁーでもローズの殺気に耐えるだけじゃなくて、反撃するとはあたしも想像できなかったね、これは意外に楽しめそうだね」


「楽しむという表現は失礼だとボクは思います、まあ同意ですけど」


「ねぇレイ、さっきのナイフって何?」


「ああ、これはミタール工房にあった何か曰くつきのやつですね、死にかけましたけど従わせて只で貰いました」


「そう……」


 戦壊無刃のことユナさんに伝え忘れてたか。

 これ武器主ウェポンマスターを発動させないと上手く扱えないな、黒白ノワール・ブランはもう結構扱えるようになったんだよな、夢の修行のお陰で。


「そろそろ時間だから、移動しよっか」


「はい」


「OK」


「分かりました」


「了解っすよ」


「行くのじゃー」


 返しがバラッバラだな、後俺は未だにネフィラさんの喋り方に慣れん、エルフであの口調はどうなのだろう、唯の俺の想像だけど、何か違う気がする。

 まあ慣れだな、今はそんなこと気にする必要ない、この後の試験に集中しよう。

 連携とか手加減してくれるだろうけど、油断したら一瞬で負けるからな。

 そして、視線を集めながら、訓練場に向かった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「デカいですねぇ」


 俺の眼前にはザ・闘技場みたいな空間が広がっている、観客席のもある。

 この空間の真ん中に戦うであろう円形の場所があり、そこに俺と同じくらいの歳であろう少年少女が二十人ほどと指導者であろう男女が五人居た。


「そういえば、レイは何のジョブにするのかえ?」


武器職ウェポナーですね、最も俺に合ってますから」


「「「「「………」」」」」


「……レイそれ本当?」


「ん?何です皆さん止まって、本当ですよ俺の戦闘スタイルにピッタリですし」


「…なるほど、皆行こうか」


「はい」


「「「「ああ」」」」


 何でそこは合うんですかねぇ、俺が空気読めてないみたいになるじゃん。

 俺達は歩いて、先ほどの集団の許へ向かった。


「そろそろいいかな」


「はい!こちらも丁度終わった所ですので存分にお使いください」


「ありがと、勉強になるか分からないけど、見ていってもいいよ」


「ありがとうございます!!」


「お前達、上の観覧席に行くぞ、とんでもないものが見られるぞ!流石にお前達でもこの方達が何者か解るだろうから、気を付けて行動してくれ!」


『『はい!!』』


 元気だなぁ、それに目がキラキラしてるんだが、憧れのスターに会ったみたいな感じだな。

 ユナさん達ってそんな凄いの?気にしても仕方ないか。

 俺も準備始めますか。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「これでいいかな、皆準備出来た?」


「出来てます」


「あたしはOK」


「うちも完了っす」


「ボクも行けます」


「妾も出来とるぞ」


 まあ、別に特殊なことはしてないけどね、唯さっきの人達の移動を待って、軽く準備運動した位だ。

 戦うのは、シュティレさん、カルーさん、ネフィラさん、みたいでローズさんがユナさんと一緒に見ての評価か。

 皆さんまだ武器出してないんですよね、まあ、それは俺もだけど。


「じゃ、行くよ、『漂流者ランク判断試験:武器職』開始」


バンッ「オラァ!」


 俺は合図と共に全力で駆け一番近くのシュティレさんを全力で殴りつけた。


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