取り敢えず、物理で行くか



コケコッコ――――――!!!!


「うるさいわっ!!!」


「んにゅ?」


 何でこんな和風なとこなのに鶏の鳴き声で起きなきゃいけねえんだよ、然もバカみたいに声がでけぇ。


「レイどうしたの?」


「すみません、起こしちゃいましたか」


「あの鶏の声は創設者が考えたらしいよ」


「………そうですか」


 創設者は確か漂流者だったっか、本当にネタ仕込むのやめてくれませんかねぇ。

 マジでうるさ過ぎる。


「レイ、風波出たら少し別行動しよう」


「いいですけど、何するんです?」


「買い物、そろそろボックス内の物減ってきたから、それに薬とか金物ならアヴァロンが一番だし」


「なるほど、分かりました……それで離れません?」


「やだ、もう少しこのまま」


 俺は現在昨日寝たままの形でいる、つまりユナさんに抱き着かれたままだ。

 ユナさん着てるの生地が薄すぎるから感触がさ、あれだから早く離れて欲しい、じゃないと俺の精神が持たない。

 ん~やっぱり夢でのことのせいで、あんま寝た気がしないな。

 ま、為になったしいいか。


「もう少ししたら、朝ご飯食べてから行動しようか」


「分かりましたよ」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 朝食を食べて風波の外に出た、因みに朝食は和食だった、何故あそこまで完璧に再現できるのだろうか?

 おー朝なのに結構人多いな。

 ん?ユナさんが何か持ってる。


「レイ、はいこれ」


「何です、これ?」


 ユナさんが手渡してきたのは、腕輪?

 分析アナライズを使ってみるか。


――――――――――――――――――――

▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽

 {ストレージリング}

 時空属性が付与されており、触れている

 間に物の出し入れが可能、内部では時間

 が経過しない、容量は製作者の魔力量に

 依存する

 製作者 ユリナ

▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△

――――――――――――――――――――


 マジックボックスの腕輪版みたいな感じか、でもボックスの方は触れて無くてよくて、内部の時間が経過するんだっけか。

 どっちも一長一短だな。

 

「そのリングに100万Dと買う物書いたメモを入れといた」


「多くありません?」


「何か気になるものがあったら買ってきてもいいよ?それに元々買う物で半分くらいなくなるから」


「それでも多くないですか?」


「あの白竜売ったらそれの五十倍くらいになるよ?」


「あっ、そうすか……」


 あの白竜そんなすんのかよ。

 まあいい、なら白竜売った後に返そう。


「じゃ、行動開始ね、集合は南門でその後ロードライトに行くよ」


「分かりました」


 俺が返すとユナさんは歩いて行った。

 じゃあ、しっかりやることしますか。

 先ずメモ出そう、念じればいいんだっけ、今右腕に着けてるから触れていることになってるはずだし。

 お、これか主にポーションとか薬系とナイフとかか。

 

「店の場所まで流石ユナさん」


 先ずは、薬屋から行きますか。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ここか……何か想像より綺麗というか」


 俺の目の前に、レンガ造りの建物がある。

 もっと木で作ってあって、老婆がいる感じだと思ってた。

 とりあえず入るか。


「「いらっしゃいませ!」」


 挨拶をしてきたのは、俺よりす背の高い男女の組だ、多分店員さん。

 紙にはその二人に書いてあるものを言えば準備してくれると書いてあるのでその通りにしよう。

 カウンターへ向かう。


「すいません」


「はい、何でしょうか?」


「えと、ポーションを14本、マナポーションを27本、反状態異常薬を7個、万能薬エリクサーを5本、混沌薬ケイオスを1本ください」


「…なるほど、君はユーティリナ様の仲間の人なの?」


「ユーティリナ?ユナさんのことですか?」


「多分ね、銀髪で魔女のような格好してるかい?」


「そうですね」


「やっぱりそうでしたかー、頼んでるものが同じなのでそうだと思いましたが、当たりですね」


「ちょっと待っててくれ、今持ってくるから」


「あ、はい」


 ユナさんってユーティリナって名前なんだ、意外な所で分かったな。

 じゃあ、ラストネームは何だろう?

 後、混沌薬って何だよ、明らかにヤバい薬だろ。


「はい、これで全部だと思うよ一応確認してくれるかい?」


「わかりました(記憶庫)……はい、しっかりありますね」


「全部で20万4530Dだけど、いつもお世話になってるから、20万Dでいいよ」


「では、20万で」


「……確かに20万ですね」


「それじゃ、ありがとうございました」


「「またのお越しをお待ちしております」」

 

 ふぅ~いい人達でよかったぜ。

 薬は気になるものないから、そのまま出てきたけど一応見るべきだったか?

 まあ、良いか、次は鍛冶屋でナイフとかだな。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ここか……イメージ通りだな」


 俺は今、ユナさんのメモに書いてある鍛冶屋に来た。

 コンクリートのような物でできたデカい竈みたいな建物だな。

 めっちゃ上の煙突から煙出とる、熱くないのか?

 ミタール工房か、入ってみよう。


「いらっしゃい」


 厳つーい、なまら厳つい人が居る、というか全然熱くないな。

 ん~とここもメモ通りに言えばいいのか。


「銀鎖の刃をください」


「ほ~お前さん銀鎖の嬢ちゃんの連れか、ちょっと待ってな」


 厳つい人が奥に行った。

 それにしてもここ凄いな、素人の俺が見ても一級品だと解る武器ばかりだ。

 あ、戻ってきた。


「坊主、こいつらがご注文の品だ、確認してくれ」


「はい」


 ナイフ、鎖、鎌、金属球、鋼板、etc……全部ある、何に使うか分からんけど。


「全てありますね」


「これら全部で30万Dだ」


「では、これで」


「よし、きっちりあるな」


「少し、店内を見てもいいですか?」


「おう、じっくり見ていいぞ」


 許可をもらったところで見ますか。

俺には確かに神魔器でどんな武器にでもなる黒白ノワール・ブランがあるが、それと他の武器を持たないのはイコールじゃない。

 どんな武器にでも変形しても使えなかったり、手元に無い時だってあるかもしれないからな。

 やっぱりダガーとかサバイバルナイフとかがいいか?

 ナックルダスターでもいいな、アパッチ・リボルバーもあるのか。

 武器見るの楽しー。

 ……あれは何だ?

 ナイフが置いてある棚の一番上にアタッシュケースがあった。

 気になったので、台を使って取り、店の中央にある机に持って行った。

 あ、鍵開いてる、売り物の所にあったから商品なはずだから開けてもいいよな。

 俺が既に蓋を開けて、中にある何かに触れた瞬間。


「坊主!そいつを避けろ!!」


「え?ッ!!」


 急に背後から気配がしたから咄嗟に回避した。

 は?…こいつはヤバいな。


「武器が勝手に動くとかありえねぇ」


 さっき俺の後ろから来たのは、青紫の刃に幾何学模様が走った黒い柄のトレンチナイフだった。

 ナイフが当たったであろう、机とアタッシュケース、更には、床までもが綺麗に真っ二つになっている。

 当たったら唯じゃすまないな。


「坊主!そいつは曰くつきの武器で、触れた者が自身を扱うに相応しいか判断するらしい、今まで何人もの奴らがそいつを使おうとしたがどいつもこいつもバラバラに切り裂かれて死んだ、お前さんはもう触っちまった逃げることは出来ねぇ、俺は銀鎖の嬢ちゃんの連れのお前さんならいけるかもしれねぇと思ってる、頑張れ!」


「おい!おっさん!んなもん手の届くとこに置くんじゃねぇよ!!もし上手くいったらこいつの代金、只にしろ!!」


「良いぜ、お前さんがそいつに認めさせたらどっちみち、そいつはお前にしか扱えねぇしな」


「おし!絶対手に入れてユナさんのとこに戻る!」


ブンッ!!!!!!


 いや、早すぎるんだが。

 触れねぇと武器主ウェポンマスターが使えねぇんだよな……ん?

 何だこの引っかかる感じは。

 ………触れないといけない?

 ……ああっ!俺最初に触ってんじゃん!

 いけるかもな。


「『武器主』ッ!!!」


 ぬぬぬぅ完全に支配下に置けない!

 速度が遅くなったくらい、だけどこれくらいなら掴めるはずだ。

 ここだっ!

 俺は横を通るトレンチナイフのナックルダスターの部分に指を通し、グリップを全力で握った。

 引っ張られるっ!


フォン フォン フォン フォン


「振ってないのに斬撃が出るとかないだろ!!」


 ナイフに連れられないように踏ん張っていると俺の四方に黒い斬撃が出現し迫ってくる。

 ならまぁ、こっちも応戦するしかない。


「《死滅の球体アナイア・スフィア》ッ!!」


 唱えると俺の周りに真っ黒な球体が出現した。

 それは独りでに動き、斬撃とぶつかると、斬撃が消滅した。

 よし!成功、これは俺が夢の中で考えさせられた新技だ。

 この黒い球体は、《モルス》の力の塊みたいなもので、俺以外は基本的に触れた瞬間に死んで無くなる、基本自動攻撃で操作も可能、今の最大同時展開数は4個だから危なかったぜ。


「ヤバいッ!」


 絶え間なく斬撃が飛んでくる、まだギリ死滅の球体で対応可能だけど、一気にしないとこっちが持たなくなる。

 覚悟を決めて全力で行く!


「クソがぁ――――!!俺の物になりやがれぇ―――――!!!!」


 瞬間、斬撃が止まる。

 やったのか?おし、成功したぁ~。


「はぁ~マジで疲れる」


「やったじゃねえか坊主!そいつが出るたびに人が死ぬから困ってたんだ、しっかりと契約した後だから犯罪にはなんなかったけど、外聞きが悪くてよ、いやぁマジでよかったぜ」


「この笑顔マジでぶん殴りてぇ」


 俺は、手に持つナイフに目を移し分析を発動する。


――――――――――――――――――――

▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽

 {戦壊無刃 ホロウ・エンド}

 破壊の力が込められた、製作者が不明の

 トレンチナイフ、青き刃は万物を切断し

 拳鍔は万物を砕く、所有者を自身で選び

 相応しくない者は皆殺す

 装備能力 絶断 破砕 飛撃 所有者適応

      破壊不能

 装備状態 神格未覚醒

 製作者 ???

▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△

――――――――――――――――――――


 ん~ヤバいねぇ、扱いをミスると大事故になりそう。


「おっさん、こいつの鞘ってあるか?」


「おっさんじゃねぇよスターグ・ミタールって名前がある、此処の店長だ、鞘ならそのアタッシュケースに一緒に入ってたはずだ」


「ありがと、おっさん、アタッシュケースか…切れてないと良いな」


「お前さん……まあ、いいぜ」


 アタッシュケースの中を見る。

 お、無事だ、というか鞘なんだからナイフの力を無効化出来なきゃ駄目か。

 真っ黒い鞘だな、しまうと傍から見たら服と見分け付かないだろうな。

 腰に着けてっとこれでOK。


「うん、良いな」


「なら良かったぜ、今回はこっちのミスでもあるし、修理費とかはいらないぞ」


「ありがとよおっさん、また来るわ」


「おう、また来い坊主」


 俺はミタール工房を出た。


「良いもん手に入れたし、買う物は全部買ったし次はオセロ買いに行こ」


 あの神様から貰ったオセロはナユタのインフィニトスの中だし。

 自分用にも買っておこうと思ったのだ。

 早速行こう!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ん?これは、襲われてんのか?

 練習で記憶庫メモリーズを使って索敵しながら、雑貨屋に向かっていたら、変な反応を見つけた。

 裏路地っぽいな、見てみよう。


「なるほどね」


 ガラの悪そうな男三人が、フードを被っているが明らかに身分の高いと解る少女を取り囲んでいた。

 うへぇ、面倒事だな、正直関わりたくない。

 けど、ここで見捨てたら、俺はあいつらに顔向けできない、だからやるか。

 どうするかねー……取り敢えず、物理で行くか。

 で、三人をやってから、あの少女に声をかけて面倒そうだったら、即逃げよう。

 時間無いし、それが一番だ。


「《音捕食エッセントーン》」


 これも新技、というか唯暴食グラで俺の周りの音を喰らって、気配を殺してるだけだけど。

 これの欠点は、発動中は周りの音が聞こえないから、こちらが逆に奇襲されると弱い点。

 そのまま男達に近づき、黒白をガントレットに変える。


「ハッ!!」 バタンッ


 一人目を背後から頭を掴みそのまま地面に叩きつける。

 二人目がナイフで切りかかってきたので、ナイフを右手で掴み極撃で壊し、左手で腹を殴り気絶させる。

 三人目は、銃を撃ってきたから、暴食で捕食し、回し蹴りで壁にぶつけ、意識を奪う。

 これくらいなら簡単だな。

 ……ありゃ、怯えられちゃったかな?

 先ず、音捕食を解除してっと。


「怪我無かったか?」


「あのっ……はい」


「なら良かった、気を付けろなよ、君みたいな一目で身分が高いと解る子は狙われやすいからな」


「はい……ありがとうございましたっ」


「じゃ、俺は面倒事は御免はだからここらへんで」


 俺が歩き出そうとした時。


「あの私、アルンと申します、せめて名前だけでもお聞かせいただけませんか?」


 なるほどね、こういう時はこれでしょ。

 俺は表通りに歩きながら。


「レイナイト・カラーレス、もし機会が会ったら、またね」


 そう言い残し俺はそこを去った。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




レイが去った直後


アルン View


 レイナイト・カラーレス様。

 あのお方は、いったい何だったのでしょう、不思議な方でした。

 音も無く颯爽と現れ、暴漢達を倒し、直ぐにいなくなってしまいました。


ドタドタ ドタドタ


 誰か来る。


「姫様ッ!心配しましたぞ、一人で行動しては危険と言ったでしょう!」


「じ、爺や、どうしてここに?」


「どうしてですと!?姫様が居なくなったと報告を受けてこの爺、全力で探しましたぞ!」


「あ、ありがとう爺や」


「本当に困ったお方です、お怪我はありませんか?」


「ええ、それは大丈夫」


 来たのは爺やだった、また暴漢だったら本当に終わりでした。


「姫様?この男達は何ですか?」


「ああ、暴漢です」


「何ですと!?姫様本当に何もされていないのですか!?」


「ええ、あのお方のお陰でね」


「あのお方?」


「レイナイト・カラーレスと名乗ったお方です、私が囲まれてるのを見て、この暴漢達を倒して去って行ってしまいました」


「何と!そのお方には感謝しなければいけませんな、できれば感謝を込めて盛大な宴をしたいのですが、去ってしまいましたか」


「こんなことで大袈裟だよ、それに面倒事は御免だと言ってました」


「大袈裟なことではありませんよ!何たってこの国のであられるアルン様の命を救ってくださったのですからね!もう少し姫様は自覚を持った方が良いと思いますぞ!」


「分かりました、確かに今回は軽率な行動でした」


「なら良いですぞ、では戻りましょう、王が心配しておられましたぞ」


「そう、じゃあ爺や、行こう」


 トラム様また、あのお方に会えますようにこのアルン・トラム・アルラスエゴを見守りください。


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