……マジすか



 目の前に銀髪の魔女っ娘がいる。

 然もめっさ美少女の、俺は少し彼女と話すのには相応しくないと思うナー。

 逃げたい。


「どうしたの?大丈夫?」


「……いっいや、大丈夫でっ、です///」


(おや、レイは彼女みたいのがタイプなのかい?)


 ちょっと!うるさいですよ!リュミス様!

 いや、ね、ナユタで見慣れてると思ったんだけど、この人は系統が違って照れるというか、声がめっちゃ綺麗というか。


(使徒のなのに、僕に隠すのかー、良くないと思うなー♪)


 くっ、この神ウザすぎる。

 ああっ!そうだよ!めっちゃタイプだわ!

 これで良いですか、リュミス様!


(フフッ、そうか、君はこんな感じの子が好きなのかー♪)


 ぬ~この人、本当に死の神か?意地悪の神じゃない?


(そんなこと言って良いのかな?ナユタとシンラに伝えちゃうよ?)


 なっ!卑怯な!確かに俺達はいつも一緒だが、プライバシーとか、踏み込まない部分とかあるんだよ、やめろ!

 ……あれ?そういえば、シンラ達との連絡取れ無くね?


(それは、安心していいよ、僕の方からレイが遠くに行って暫く戻れないこと伝えておいたから、二人ともしっかり都市へ向かっているよ)


 そういうことは、先に行っておいて欲しいんだけど。


「本当に大丈夫?顔赤いよ?」


「いやっ///…ふぅー…大丈夫です」


「なら良かった」


 落ち着こう、そうすればマシになるはずだ。

 ふぅー、にしても、サファイアみたいな瞳が綺麗だ。

 いや!待て、この人が善い人なのか不明な内は警戒を薄くするのは良くない。

 この人は、俺の感知をすり抜けてきた、恐らく相当な強者だ。


(ああ、その子のことは、警戒しなくていいよ、いい子だから)


 え?どうしてですか?この人のこと何か知ってるんですか?


(知っているよ、よくね。けどそれを君に教えることはできない、レイはさっき使徒になったばかりだからあまり情報を言えないんだよ。ごめんね、そういう決まりだからさ)


 ん~まあ、決まりなら仕方ないですね、それでこの人、大丈夫なんですよね?


(そこは問題ないよ、しっかり信頼していい)


 ならいいです。


「君はどうしてこんなところにいるの?」


 彼女は、俺の目を見ながら、そう訊いてきた。

 リュミス様が信頼して良いって言ったし、面倒だから一人で来たことにするか。


「気づいたら此処にいたってところですね」


「そう…じゃあ君は漂流者ドリフターみたいだね」


「漂流者?」


「君みたいに、他の世界からこの世界に何らかの要因で来た人たちのこと」


「なるほど」


 そういう言葉が作られてるってことは、俺達以外にも来てしまう人がいるってことか。


「この白竜、君が倒したの?」


「まあ、そうですけど」


「そう………なんだ」


 ん?今の間は何だ?それに今、目が光らなかったか?


「私の名前は…ユナ、宜しく」


「レイナイト・カラーレスです、宜しくお願いします」


 偽名…か?分析アナライズで一応確認するか。

 ……あれ?見えない、俺の分析は解析計で超強化されてるはずなのに。


「ごめんね、今ちょっと理由があって本名は、名乗れないんだ」


「…そうですか」


 ステータスを覗こうとしたのがバレたか?まあ、リュミス様が大丈夫だって言うんだから別にこの人に問題は無いのだろうけど、名乗れない…か。

 何か、特殊な地位の人なのだろうか?ま、今は考えなくても良いし後にするか。


「レイは、マジックボックスとかある?」


「ん?何故ですか?」


「この白竜を持って帰る、これほどのサイズで、これだけ傷が無いならかなりの額になると思うよ?」


「それは、ありがたいこの世界の金銭がないので、困っていたところでした。けどマジックボックスは持ってないです」


「なら私が持って行くけど、良い?」


「良いですよ」


 そう言うと、彼女は少し驚いた顔をした。


「本当に、良いの?さっき会ったばかりの私に任せて、レイを騙して、この白竜を持って行っちゃうかもよ?」


「ええ、良いですよ。理由を挙げるならば、僕とユナさんの実力に差がありすぎるから、もし逃げられても僕にはどうすることもできませんし、それにそんなこと訊く人が悪い人なわけありません」


「ん!……レイは良いね。良い目をしてる、私気に入ったよ」


「ッ!…ありがとうございます///」


「これを仕舞うから降りてくれる?」


「あ、はい」


 本当は、神様から聞いたからだけど、今言ったことも嘘ではない

 後、笑顔が眩しすぎて、照れます。

 俺が照れてる間にユナさんは、白竜を収納したみたいだ。


「レイは飛べる?これから一気に都市まで行こうと思ってるけど」


「飛べません、でも結構な速度で移動できるかもしれませんが」


「ん~なら私の箒に乗って一緒に行こうか」


「……はい」


 箒ってどれだ?……ってそれがそうなるんですねー。

 ユナさんの首に付いていたネックレスが離れ、箒に変わった、見た目は某世界的魔法使い映画の眼鏡をかけた主人公が乗るような箒だ。

 そして俺が思ったのは、似合いすぎだ!いや、そこかよとか言われるかもしれんが、これがマジ凄いんだって、全身から魔女というか、魔法使いのオーラが出てるんだよ。

 黒い大きめのとんがり帽子、流れるようなストレートの銀髪、黒に青紫の模様が入った大きめのコート、腰に差してある短杖、手に持った箒、全てがベストマッチ過ぎる!

 済まん、少し熱くなってたわ。

 そんなことを考えているとユナさんは、箒に跨った。


「レイ、後ろに乗ってくれる?」


「後ろって、そこですか?」


「そうだよ?」


 いや、そこですか。

 この箒150㎝位のサイズになったのだが、ユナさんに乗ってと言われたところに乗ると確実に体が密着するのだが良いのだろうか?


「あの、体が密着しちゃいます」


「ん?それでいいんだよ?結構速度出すからレイには、私に抱き着いてもらうよ、その方が安定するし」


「……ま、マジすか」


 それは、よろしくない、主に俺の精神的に。

 ユナさんは、見た目に反して大人な感じがあって、というか俺より年上だろうけど、流石に抱き着くのは戸惑うというか、兎に角、色々とマズい!


「やっぱり、私に抱き着くのは、嫌かな?」


「いや!全ッ然ッ!嫌じゃないです!」


「なら、良かった」


 いや、あの顔は無理だ、あんな顔されたら良いって言うしかないじゃん。

 ハァー、頑張れ俺、落ち着いていこう。


「じゃ、じゃあ後ろに乗りますね」


 この箒、意外に乗りやすい、いや、やっぱり近いなー。


「……手、回しますね」


「もっとしっかりしないと危ないよ?」


「ちょ!?」


 俺があまり触れないようにユナさんのお腹に手を回したら、ユナさんが手を引っ張りもっとしっかりと抱き着かせてくる。

 急なことに、俺は対応できず、ユナさんの背中に顔を埋める様な形になった。

 あ~何か安心する匂いだ、ずっとこうしてたい。


「流石にここまでくっついてると、恥ずかしいかな」


「はっ、す、すみません」


「別にいいよ、じゃあ、行くからしっかり摑まっててね」


 おお、浮いてっ、速ッ!

 車くらいの速度かと思ったら、ジェット機並みなんだけど!

 それにしても、空気抵抗がない、魔法的な何かで来ないようにしてるのか?


「10分くらいで着くからね」


「はい、わかりました」


 この体勢で10分か、頑張れ俺の精神!

 これだけの速度で10分は、どれくらい移動してるんだろ?

 あ、雪が減ってきた。


「そういえば、何処に向かってるんです?」


「先端都市アヴァロンだよ。時間的に着いたらこの世界のことを教えたら、今日は終わりだね」


「今、何時くらいなんですか?」


「午後1時くらい」


 時間の単位は同じっぽいな。

 それに、午後1時か、俺達この世界に来る前は昼過ぎだったはずだから、時間が合わないな。

 逆算して考えると俺達が、この世界に来たのはこの世界の早朝、8時くらいか。

 日にちにとかも気になるけど、それは後で教えてくれるみたいだしいいか。

 んー?この反応は・・静かにやっとくか。

 黒白ノワール・ブランをリボルバーに変形させ武器主ウェポンマスターで浮遊させる。


消音サイレント標的ターゲット誘導ホーミング、100×6、発射ファイア


「ん?何か言った?」


「いえ、何でもありません」


「……そう」


 ユナさん程の実力者だったら何をしたか分かっちゃったかもな。

 ま、指摘しないってことは良いのだろう。

 あー、これから行くのはどんな都市何だろーなー。

 俺は期待に胸を膨らませながら、物凄い速度で流れる景色を眺めた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「もうそろそろ着くよ、あそこに見えてるのがそうだね」


「もうですか、早い………何か想像より近代的ですね」


「漂流者の子は皆そう言う、多分、文明レベルにそんな差は無いと思うよ」


 俺の視線の先には、城壁に囲まれた都市があった。

 高層ビルみたいな高さの建物あるし、バカでかい病院みたいのとか、何故か浮いてる建物とか、車のようなものまである、確かに文明の差はなさそうだ。

 もしかしたら、魔法とかある分こちらの方が上かもしれない。

 もうすぐで恐らく入口であろう、大きな門の前に着く。


「俺、身分証とか無いんですけど、どうすれば?」


「それは、私に任せて」


「わかりました」


 俺達みたいなのが居るって解ってるはずだから、何かしらの対応は準備されてるはずか。

 ゆっくりと箒が下がり足をつけれる高さまで来た。


「レイ、降りるよ」


「はい、よいしょと」


「じゃ、行こっか」


「どっちに並ぶんです?」


「左だよ」


 箒をネックレスに変えながらユナさんは、そう言った。

 この門の前には二つの列のようなものがあり、右にはそこそこの人が並んでいるが、左には恐らく何かの確認をするであろう軍服みたいのを着た人が二人いるのみである。

 特別対応用の列とかなのだろうか?

 そこで、ユナさんが歩き出したのでついていく。


「入ったら、先ず風波かざなみに行くよ」


「風波って?」


「旅館の名前」


「そうですか」


 ずいぶん和風な名前だな。

 そして、軍服の二人の前に来た。


「これ」


「はい……確認が取れました、緊急依頼に出ていらした冒険者の方ですね」


「そう」


「ありがとうございます、それでそちらの方は?」


「こちらの報告だと一人で出たはずですけど」


「この子は漂流者だよ。レスロに居た」


「そうですか、ではそちらの方これに触れてください」


 そう言って軍服の人達は透明な板のようなものを取り出した。

 まあ、とりあえず、言われた通りするか。


「これでいいですか?」


「はい……確かに漂流者の方ですね」


「漂流者の方がこの世界に慣れるまでの間の手助けや援助は、第一発見者に義務と責任がありますが、問題ないですか?」


「問題ない」


「はい、わかりました」


「では、ようこそ、先端都市アヴァロンへ」


「ありがと」


「ありがとうございます?」


 ユナさんと共に門を潜る。

 こんなあっさりで良いんだ。


「しっかり、付いて来てね」


「はい」


 中は結構の人が歩いている。

 何ていうか、中世の街並みに所々近代的な物を組み込んだ感じだ。

 何か新鮮でいいな。

 ユナさんに付いて行きながら、周りを見ていると、場違いな和風建築が見えた。

 もしかして、あれか?マジで旅館じゃん。

 何事もないかのようにユナさんが入っていったので、続いて俺も入る。

 お~これは。


「凄いな」


「風波は、今はどの都市にもある、創設者が漂流者の宿屋だよ」


「漂流者がですか、確かにこれは基の知識がなきゃ無理ですね」


 俺は、旅館の中を見回す、広いなー、エントランスはバスケコートくらいある。

 しかもここ、温泉、食堂、遊技場、その他色々あるらしい。

 あ、俺が見回している内にユナさんは、受付に行っていたので急いで近づく。


「この子の分の部屋って準備できる?」


「申し訳ありません、現在満室でございます」


「じゃあ、私の部屋に追加で一人入れて」


「畏まりました……手続き完了しました、こちらがキーになります」


「ありがと、レイ行こう」


「あ、はい」


 追加で一人とかそんなことできるのか。

 長い廊下を歩き、ユナさんが止まった。


「ここが私達の部屋だよ、と言っても今日だけなんだけどね」


「今日だけ?」


「明日には、別の都市に一緒に行くよ」


 そうなんだ、ちょっと見回りたいかったけど、それはまた来た時でもいいしな。


「入ろっか」ガチャ


「失礼します、おお~」


「いいでしょ」


 これは良い、想像でしかないけど、高級旅館ってこんな感じだろーなって感じ。

 そして、窓から見える中庭が見事だ。


「レイ、私はギルドに報告しないといけないから、少し休んでて良いよ」


「わかりました」


「それじゃ、行ってくる」ガチャ


「…………ふぅー、やっぱ緊張するな」


 本当に疲れた、ユナさんは俺の周りに居なかったタイプだから気疲れがなー。

 でも、ユナさんいい人だし頑張りますか!

 休んでて良いって、言ってたしちょっとベットで横になろう。

 この部屋全体で和風なのに、寝るのはダブルサイズのベットなんだよな。

 ま、良いや、おっ、程よい硬さで寝やすい。

 これはヤバい、どんどん睡魔がぁ……ZzZzZzzzz




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




ユナ View


 風波を出てギルドに向かう。

 レイは良い子だ、それに可愛い。

 この後、教えることいっぱいだから、さっさと終わらせちゃおう。


「マジハ様、レイは本当にリュミス様の使徒なんですよね?」


(そうだよーいや、あたしもあのリューが新しく使徒を取るなんて思わなかったよ)


 そう、私は、レイが使徒であることを知っている、でも会ったのは、本当に偶然なのだ。

 偶々、緊急依頼の白竜討伐を受け、向かったところにレイが居た。

 あんなところに居るから、漂流者なのは、直ぐにわかったけど、使徒だとは分からなかった。

 然もあの、リュミス様の使徒だなんて。


(よっぽど、あの子のこと気に入ったんだろうねー)


 因みに私は、魔法天神 マジハ・オーディン様の使徒だ。

 まあ、縁があってなったが、あの選択は正解だった。

 毎日楽しいし、友達沢山できたし、何よりレイとも出会えたし。


(リナは、あの子みたいのがタイプー?)


 正に、ドストライク。

 本当に可愛い、あの世話を焼きたくなっちゃう感じが堪らない、意地悪した時の表情も最高だった。

 

(リナが使徒ってこととかQランクのこととか言わなくて良いの―?)


 言わない、黙ってて後で驚くところが見たい。


(楽しんでるなー、私も後でリュー揶揄いに行こうっと)


 ん、もうギルドか。

 一気に受付の前まで行く。


「ギルマスは、今何処に?」


「今は、奥にて作業中ですが、ユーティリナ様なら大丈夫でしょう」


「ありがと」


コンッコンッ


「どうぞ」


ガチャ


「ユーティリナ殿でしたか」


「緊急依頼、終わったよ」


「もうですか!」


「うん」


「流石は、極昌の魔法職クォーツマジシャン、ユーティリナ・オーディン・ルクシリア殿ですね」


「はぁー、そういう言い方は嫌」


「おや、お気に召しませんでしたか」


 この人優秀なんだけどこのノリがなー。


「一応、確認の為に白竜見せてもらえますか?」


「はい」フォン


「これほど傷無く仕留めたのですか!流石ですね……」


「この白竜、報酬でもらっていいんだよね?」


「ええ、私も欲しいくらいですが契約ですので良いですよ」


 よしっ!これでレイに色々買ってあげれる!喜んでくれる姿が楽しみだ。

 後は、あれだね。


「これは相談なんだけど、白竜の一部と交換で――――が欲しんだけど」


「なるほど――――ですか、ではこうしますか?」


 それじゃ、レイの為に頑張るとしますか。


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