Chapter 6. 推理ショー
その日の夜、俺と
待ち続けること一時間、ついに何者かが姿を
間違いない。犯人の姿だった。
「——そこまでだよ」
「っ!」
飛び出していった穂村の持つ
「お、お前は——」
遅れて飛び出した俺もそいつの姿を見る。照らし出されていたのは
「……誰だ?」
悲しいことに、この学校に転校してきてまだ三ヶ月。おなじ学校の生徒だとしても俺にはわからなかった。
「トミタくんだよ。二年九組のね」
探偵らしくすべての生徒の情報を
「やっぱりキミがこの事件の犯人だったんだね、トミタくん」
「な、なんのことだよ」と、富田は
「忘れ物、ね」
しかし探偵は
「それはまさか懐中電灯と間違えたわけじゃないだろう?」
「うっ……」
慌てて
視線をそらした富田に探偵は言った。
「暗い場所でいつまでも話し続けるのも面倒だね。続きは中に入ってしようか」
旧化学準備室、現在は美術部の倉庫として使われている教室内は、
いや、
「コレはなんだ?」と俺が
「
それから適当な椅子に富田を座らせた探偵は、制服のポケットからキャンディを取り出しながら言った。
「さて、トミタくん。キミがすんなりと
「……」
穂村からの視線を受けた富田はしばらく黙っていたが、やがて
「……ちょっと驚かせてみたかったんだよ。夜の学校で
「チッなんだよ、くだらねえ」
富田の言葉を
「そんなことして何になるんだよ。他人の反応を見たいって、お前は小学生か。そんな時間があるんなら勉強でもしてろよ」
「……悪かったよ」と富田はバツの悪そうな顔で、「別に俺だって本気で楽しんでたわけじゃねえ。ただ退屈な日常に我慢できなくなることってあるだろ? 毎日まいにちおなじ日常の繰り返しだ。何か刺激が欲しかった。そんな時だ。ここにある物に蛍光塗料が塗られてるってのをたまたまこの前を通りがかった時に気づいてよ、コイツが
「ったく、お前なあ……」
俺は
「ふむ——」
しかし探偵は目を
「——言い訳はそれで終わりかい?」
「なんだと?」
「キミにはガッカリだよ、トミタくん。どうやらキミに反省するつもりは
穂村にしてはキツい言い方だ。
「おいおい穂村。なに言ってんだよ。コイツがいま
「いいや、モリタニくん。彼の本当の目的はコレさ——」
そう言うと、穂村は机に
「——なんだぁ?! サソリじゃないか!」
ケージの中で動き回っていたのは
「待てよ穂村。いったいサソリになんの関係が……」
しかし俺のその疑問が最後まで口から出ることはなかった。表情を
探偵は笑みを深めた。
「もちろんキミには見覚えがあるだろう、トミタくん?」
「ぐっ……」
「ずっと疑問だったんだ。なぜ犯人はブラックライトを持って夜の学校を
それから穂村は口に
「——探していたんだろ? サソリを」
富田の顔がさらに
「聞くところによると、キミたちのクラスは今度の
「だけど普通に考えると、そんなふうに展示が出来るほどそれらの
「父親の商品を当てにしたゲテモノ館を提案したキミは、
「——しかし、ここで事件が起きてしまった。キミは何らかの理由で持ってきたサソリを逃がしてしまったんだ。さぞや
「だけど
「どういうことだ?」
ここまで黙って聴いていた俺だったが、思わず言葉を挟む。
「サソリを探すんだろ? なんでブラックライトが必要なんだよ?」
「知らないのかい、モリタニくん? 一部の生物はブラックライトを当てると光るんだ。——こんなふうに、ね」
穂村は電気を消し、それからブラックライトの光をケージに向かって当てる。その瞬間、暗闇のなかに、サソリの体が
「……ま、マジかよ」
驚く俺をよそに、教室の電気を点けなおした探偵は
「トミタくんは
「く……」
「キミは逃げ出したサソリを見つけるために
穂村が推理を話し終えると、教室内には
「……ああ、そうだよ」と富田が言った。「ホム子の言う通りさ! カゴを落とした隙に逃げてったんだよ!! でも教師に知られるわけにはいかなかった! 初めに持ってくるのだって許可を取るのに苦労したんだ、それを
「——キミはみんなを危険に
「き、危険って……」と、富田は
「それはキミの勝手な言い分だ。大多数の人間はサソリについて詳しく知らない。たとえ人間には無害だとしても、毒を持つというイメージが先行してのパニックは避けられない」
楽観的な富田の言葉を、穂村はバッサリと切り捨てる。珍しいことに、穂村は
「それに確かにマダラサソリは毒性が弱いことで知られている。けれど、だからと言って完全に無毒なわけじゃない。絶対に安全なんていうものはこの世には存在しないんだ。残念なことに、ね」
「うぅ……」
「先生を呼んで来てくれるかい、モリタニくん」
「あ、ああ……」
それから職員室に
「それじゃあ行きましょう、富田くん」
「……はい」
「大丈夫よ。悪いようにはしないから。もちろん、反省はしてもらうけれどね」
羽鳥先生はゆっくりと
最後に教室を出る前に振り返った先生は俺たちにむかって「ありがとう」と言った。
こうして俺たち推理部が
ただ。
事件を解決したっていうのに穂村が難しい顔をしたままなのが気になっていた。
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