Chapter 4. アズマの証言
「——まずは現場についてだけど」
「ボクたちも
「ふーん、美術部の倉庫か。ならちょっと
「うん、それもいいかもしれない」
穂村が頷いたので俺はさっそく電話を掛けてみることにした。きょうは
何回目かのコール音のあと、
『どうしたの
「ああ、ちょっとな。
『えっ……あ、ああ、最近噂されているやつだね。もちろん知ってるよ』
「何か
『んーごめん、噂以上のことは何も。ただ……』
東の言い
「ただ、どうした?」
『……ユウレイが出るって噂されている教室は僕たち美術部の倉庫になっていてね、今度の学園祭で使う予定の出し物が置いてあるんだよ』
「ああ、らしいな。俺もそれを聞いてお前に電話してみたんだよ」
『そうなんだ……なら話は早いね。実は、もしかしたらなんだけど……僕らの作品がユウレイの正体かもしれないんだ」
「なんだと? まさか、お前また……」
『ち違うよ! 僕が犯人ってわけじゃない!』
慌てる東に俺は笑って、
「ははっ悪い、ジョーダンだ」
『……もー。タチの悪い冗談は嫌いだよ、
「悪かった。それより教えてくれ。お前らの作品がユウレイの正体かもしれないって言うのは、いったいどういう意味なんだ?」
『うん、実はね……』と声をひそめるように東は言った。『――その作品には
「蛍光塗料?」
俺の呟きに穂村の
「それってあれか? 明るい時にヒカリを
『
「ブラックライト?」
『うん。詳しい説明は
「ふーん」と俺はよくわからないままに首を
『……まあ、僕は実際にそのユウレイを見たわけじゃないから断定はできないんだけど……話を聞く限りでは似てるなって思ってさ』
「似てるって、何が?」
『——蛍光塗料の発色に、だよ。今回の件はもしかしたら誰かが僕らの作品にブラックライトを当てたことで起こっているのかもしれない』
俺は東に
「どう思う?」
「……」
「おい、穂村? 聞いてるのか?」
「ん、なんだい?」
「いや、だから今回の
「ああ、うん、それは
「……なんだよ、あんま驚いてなさそうだな?」
「そうだね。
「……」
コイツはまたそんなことを言う。ならわかった時点で教えてくれよと思うが、探偵としての秘密主義は今に始まったことではない。
「なんだよ、じゃあお前はさっきからいったい何を悩んでいるんだ?」
「単純なことさ」と穂村はコーヒーカップを手に取りながら、「つまり、——なぜ犯人はあの時間にブラックライトを持ってあの場所にいたのか、だよ。まさか
「……それは、確かにな」
穂村からの指摘に俺は頷いた。言うまでもなく、ブラックライトを
「んーわかんねえなぁ」
と言いつつ俺は考えられる理由を
「美術部の
「なんのために? 有名な美術家の作品ならまだしも、
「じゃあ美術部の関係者とか? 暗闇で実際にどんなふうに見えるか気になったんだ」
「それもナンセンスさ。
「じゃあなんでだよ」
「だからボクもずっとそれを考えているんだ」
穂村はキャンディを手に取り、
「ただ噂になって
「……まあ実際、その可能性が現時点ではいちばん高いとボクも思うよ」
もうほとんど
それから何度か意見を
「……もう五時か」と俺は呟いた。「どうする? きょうはもう帰るか? これ以上は
「そうだね……帰る前にともかく念のため現場で検証してみよう。ボクらが見たのが本当に蛍光塗料の光だったのかどうかをね。すまないけど、もう一度電話をしてアズマくんを呼び出してくれるかい?」
俺にそう指示を出し、穂村は部室を出るために動き出す。これから現場に行こうと言うのだろう。
「待てよ。ブラックライトは?」
そう言ってはみたものの、すぐに東に借りればいいのかと思い
しかし。
「もちろん持っているよ。ほら」
穂村は当たり前のようにポケットからライトを取り出した。
「……相変わらずの
探偵としての
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