Chapter 3. ハトリ先生の憂鬱
翌日の放課後、俺たちは職員室に呼び出された。
もしや夜の学校に入ったことを
「……それで、どうだった、穂村さん?」
「そうですね……何かが起こっているのは間違いないと思います。実際、わたしも
「そう……やっぱり警察に相談したほうが良いのかしら」
穂村からの報告を聞き、
しかしふたりの会話を聞く限り、どうやら昨日の
「はぁ困ったわねぇ、もうすぐ学園祭だっていうのにこれじゃあ……」
「まさか、中止になるんですか?」
ため息を
しかし羽鳥先生は首を横に振って、
「いまのところは大丈夫だけれど、でもこれ以上
「思ったより
俺は呟き、それから穂村にだけ聞こえるように
「……おい穂村。やっぱ
「ダメだよ。たとえ犯人を捕まえられたとしても、目的がわからなかったら意味がない。証拠がない以上、いくらでも話を
「む……」
やはり証拠が集まるまでは穂村に犯人を
俺たちの会話を知ってか知らずか、羽鳥先生は
「こうなったらあなたたちが頼りよ。
そんな先生に穂村は真面目な顔をして言った。
「ハトリ先生。
「ええ、そうとってくれて構わないわ」
穂村からの確認に、推理部の顧問でもある羽鳥先生は
「わかりました」と、推理部の部長は言って、「それでは先生。お手数ですがもういちど今回の事件の
「わかったわ」
羽鳥先生は頷くと事件のあらましを語り始めた。
それによると、はじめてユウレイが目撃されたのは先週の水曜日。夏休みを終えた翌日のことであり、それ以降は
時間は大体午後八時から九時の間。うちの学校の
「どこかの部の
話を
だが羽鳥先生は首を振って、
「私も調べてみたんだけど、残念ながらここ一週間の
「そうですか……」
となると野球部が嘘を
「野球部が残っていたということはつまり」と穂村が言った。「
「ええ」と、羽鳥先生は頷いて、「あとは私ね」
「え、先生も?」俺は思わず声を出した。「そんな時間までなにしてたんですか?」
「先週の水曜日は
「へぇ、先生たちの宿直は廃止されたってなにかで見ましたけど、うちの学校はまだやってるんですね」
「——そうなのよ! ひどいと思わない!?」
「ちょ、先生?」
困惑する俺をよそに、羽鳥先生はつらつらと、
「夜の校舎は怖いし、この時期は虫がでるしでホント最悪だったわ! 生徒たちや他の先生
「は、はぁ……そ、そうですね……」
「それぐらいにしてください、先生。モリタニくんが困ってますよ?」
「あ、ご、ごめんなさい」
羽鳥先生は恥ずかしかったのか、それとも教師としての
「……
それから羽鳥先生は穂村を意味ありげな視線で見つめる。話題を変えてほしいと
「こほん。それでは話を続けましょう先生。
「え、ええ……ぼんやりとした光だったわね。
「緑色の光……」
俺は穂村に視線を送る。穂村は頷いて、
「どうやらわたしの見た光とおなじようですね。他に何か気になることはありましたか?」
「そうねえ……」と羽鳥先生は考えるそぶりを見せて、「あ、そう言えば……
自信なく呟いた羽鳥先生だったが、しかし穂村は笑みを浮かべて言った。
「ありがとうございます先生。知りたかった情報は全て
「う、うん。頼んだわよ、穂村さん。
そうして俺たちは職員室をあとにした。
部室までの道を歩きながら、俺は先ほどの羽鳥先生の様子を思い出して呟いた。
「
「教師と言ってもまだ二十代だからね。遊びたいのさ」
「ふーん、そんなもんかねぇ」
俺も社会に出たらあんなふうな大人になるのだろうかと思うと、なんだか
「それはそうと穂村。お前はわかったか? どうしてあんなユウレイみたいな光が現れるのか」
「違うよ、モリタニくん。いま考えるべきはユウレイが出現した理由ではなく、どうしてあの場所にユウレイが出現したのかだよ」
それからぽつりと付け足した。
「……それに、おそらくアレはユウレイなんかじゃないしね」
「なんだって? じゃあお前には正体がわかっているのか?」
しかし穂村は答えなかった。
部室へ戻ってきても穂村は
大体の場合、穂村の意識がこちらに戻ってくるまで何時間か待つのだが、
「——ハトリ先生が言っていただろう?」とちょうどコーヒーを淹れ終えたタイミングで穂村が口を
おそらくはさっきの会話の続きからである言葉に対して、俺はコーヒーを差し出しながら訊ねた。
「なんの理由があるっていうんだよ?」
「それはまだボクにもわからない」と言って、穂村はコーヒーをひと口飲んだ。「……
「ブラックなんだから当たり前だろ。ほら、ミルクだ」
「うぅ
「バーカ。俺は助手のつもりはないし、お前の
まあ、
それから俺はミルクを
「それより教えてくれよ、穂村。現時点でお前がわかっていることについてをさ」
「そうだね。キミにもわかりやすいように、いちど整理してみよう」
口を直したいらしい穂村はキャンディを
「楽しそうだな」
「うん、楽しいよ。
「そりゃよかった」
どうやら穂村
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