Chapter 2. 闇夜に浮かぶ光
行動力こそが探偵に必要な最大の能力だ、と
俺に話をした時点で
「——それじゃあ
いちど家へと戻り、午後八時に校門前で合流した俺たちは、そんな穂村の
「……なあ、穂村」
と、そんな世界でも変わらない様子で
「……
本当に今更だが、なぜ俺は言われるがまま素直にコイツに付いてきてしまったのだろうか。俺としては学校にユウレイがいようがいまいがはっきり言ってどうでもいい。そんなことを気にするくらいならはやく帰ってラノベの続きを読みたいものだった。
「それはまったくナンセンスな質問だよ、モリタニくん」
しかし穂村は手を止めて振り返ると、
「キミも知っての通り、探偵に
「……まぁ、たしかに探偵には助手が必要だな。ああ、それは認めるよ」
俺は穂村の言葉を否定しない。
だがそれは何もコイツの主張を受け入れたわけではない。ただ
ゆえに俺はひとつのテクニックを利用することにした。いつか読んだ本で
「お前が言うようにホームズにはワトスンがいるし、コ◯ンくんには◯原さんがいるしな」
「ふふ、よくわかってるじゃないか。安心したよ、キミが探偵に助手は必要ないなんて言い出さなくて。もしもそんなことを言うようならボクはどうしようかと思っていたところさ」
「……ああ、俺もそう思うよ」
俺は頷いて、それから不敵な笑みを浮かべ続ける探偵にむかって、
「――だがな、いつから俺はお前の助手になったんだ?」
「驚いた。キミはまだ自分が帰宅部のつもりなのかい?」
「そうじゃない。俺だって推理部の一員だっていう自覚はある。だがお前の助手になったつもりはないぞ。俺とお前はただの部活仲間だ。それ以上でも以下でもない。それに助手って言うなら
「それこそナンセンスさ。彼は依頼人第1号でありキミの紹介者だ。
「む……」
しかしどうやら狼煙のために準備していた
「……いや待て。この
「ふむ、まあいいさ。キミがそんなにも助手になりたくないって言うのなら
「……なんだよ、ずいぶん素直じゃねえか。……らしくねえな」
「ボクだって鬼じゃないからね。キミがそんなに嫌だっていうのなら仕方ない。
「……そうか」と俺はなんだか
「もちろん構わないよ。だけど――」
そして次に穂村の浮かべた
「――だけど、仮にそうでなくとも、キミはか弱い女性を夜の学校に、それも何か異変が起こっているかもしれない場所にひとりで行かせるのかい?」
「……」
俺は口をつぐまざるをえなかった。
「……
実際去年まではいわゆるスポーツマンであったが、無茶な練習がたたって左肩を故障した
しかし口の減らない探偵はニヤリと笑って、
「——大丈夫さ。ボクはこれでも柔道の経験があるからね。助手のひとりやふたり守ってみせるよ」
「……そうかい。そりゃ安心だ」
よく考えなくても穂村の発言には
——穂村の減らず口には
それが俺を含めた
「はぁ……」
俺はため息を
「……それで。例のユウレイってのはどこにいるんだよ」
「いくつかの目撃情報によれば、どうやら旧校舎の三階に
「旧校舎だぁ?」
穂村からの情報に俺は声をあげる。なぜなら俺たちが今いるのは中央棟の二階。B棟と呼ばれるそこから旧校舎までは校舎ひとつ
「……おい、じゃあなんで俺たちはここにいるんだよ。出る場所がわかってんなら、はなっからそこで張ってた方がいいんじゃないのか?」
「本来ならね。でもそんな単純なことじゃないんだ」
「どういうことだ?」
俺は首を
困惑する俺に穂村は
「つまりはね、モリタニくん。――そんなことをしたら事件は簡単に終わっちゃうかもしれないじゃないか」
「…………は?」
「せっかくの面白そうな出来事だ。やっぱり楽しみは
「……お前は何を言ってるんだ?」
頭が痛くなってきた。本当にコイツは何を言っているのだろうか。
そんな俺に穂村は笑って、
「冗談だよ、モリタニくん。ボクだって
「……ホントかよ、なんか嘘くせーなぁ」
俺が
「キミが今回の事件に何らかの形で関わっていたとして、事件の現場付近に通りがかったところを
「……そりゃあまぁ、やっぱ言い訳するだろうな。たまたま通りがかったんだとか言ってさ。
「そう」と、穂村は満足げに頷いた。「大抵の場合、これから何かを
なるほど。確かに穂村の言い分には一理ある。……あるが、
「……でもなぁ、そんなことしてる間に被害が拡大するようなことがあったらどうするんだよ?」
「もちろんケースバイケースさ。ボクだって
「……」
まあ、言いたいことはあるが、しかし現時点では穂村の言う通り
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と穂村は
「……お前やっぱただ楽しんでるだけだろ」
「考えてみなよ、モリタニくん。いったい目の前の
「……」
「それにそもそも、キミにとやかく……」
と、そこでなぜか穂村の言葉が不自然に途切れる。
「……おいどうした? 穂村?」
声をかける俺に探偵はニヤリと笑って、
「——どうやらお出ましのようだよ」
「なっ、マジかよ?!」
穂村の視線の先、
「——行くよモリタニくん!」
「——お、おいっ!? 待てって、穂村ぁ!」
いち早く走り出した穂村のあとを俺は慌てて追いかける。推理部での
「ああ、くそっ! アイツはなんだってあんなに早いんだよ?!」
「はぁ、はぁ……ひとりで突っ走るなよ、穂村。もし危険な奴がいたらどうするんだ」
「
「……だけど?」
「今回は逃げられた、みたいだね」
残念そうに呟く穂村。しかし月明かりに照らされた穂村の顔は、まったく残念そうな顔には見えなかった。
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