プロローグ② 白衣の男
駅から数分歩いたところに、その施設はあった。
高層ビルばかりの灰色の街並みで、2階建のそれは異質な存在だった。
入口に『たちばなラボ』の看板が入口にある。通りかかり、気になったらしいサラリーマンが検索したところ、脳の周波を研究する施設だった。政府公認のマークがあり、白い機械が並んでいる写真が掲載されていた。
サラリーマンの目の前を、白衣の男、青木が通る。
青木は白衣のポケットに手を突っ込んだ。青い眼に涙がにじみ、口が変な形に曲がる。次の瞬間、大きく欠伸をした。
建物内に入ると階段を下がる。外と完全に遮断された空間に、足音が響いた。
「寝坊しましたあー」
青木が扉を開けると、数十人の視線が集まった。
「今更何の用だ」
1番奥にいた男が言う。所長である橘銘治ネクタイを締め、前髪をオールバックにしている様に周りの空気もピリピリしていた。
「何って、会議に出席しに来たんですけど。終わったなら内容のまとめでも教えてくれます?」
青木は動じずに空席に座る。しかし他の人らは関わりたくないとばかりに席を立って出て行ってしまった。あらら、と見守っていると小柄な人物が近づいて来た。
「あらら、道尾くんじゃないか。小さくて気づかなかったよ」
「僕は窓際に立っていたんですっ。それよりもこれ、今日の会議内容です」
渡されたノートを開くと、走り書きだが細かい内容が書かれていた。
「ありがとう道尾くんっ」
「はいはい、早く出ましょう。所長、先に上がらせていただきます」
道尾は丁寧に頭を下げたが、橘所長に反応はなかった。
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