第3話 デビュー前、練習室
事務所に入って何か月か経った頃。
社長に、この五人で仮ユニットとしてしばらく練習するよう言われた。正直俺は一人でも大丈夫だと思っていたが、ここで拒否しても道が遠のくだけだと思って、承諾した。
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「あのさーマジメにやってくれない?迷惑なんだけど」
「は?俺は真面目にやってる。それに、レッスン以外の時はいつもだるいだの眠いだの言ってるお前にだけは言われたくない」
「はあ?僕はただ────」
「おつかれ~……」
って、何この険悪な空気……。うわぁ~またあの二人喧嘩してる……。
俺じゃ止らんないって~。あの二人、早く来ないかな~。
「お疲れ様」
「お疲れ」
「お!!二人ともいいタイミング」
「…?どうかしたの?」
「あの二人、また喧嘩してんだよ~」
「あ~なるほど」
「喧嘩するほど仲が良いとやらで放っておけばいいんじゃないか」
「さすがにそれは…。今後、一緒に活動していく俺らだし、いい加減なんとかしないとだろ~」
「うん、そうだね。それじゃあ──」
**********
急に、お互いのことをよく知ろうとか言いだして、
「アイドルを目指してる理由を話してみるのはどうかな」
「おっ!それ、名案!!」
「じゃあ、言いだした僕から。僕は、小さい頃から歌が好きでね。歌手になるって道もあったんだけど、僕の心が、アイドルが良いって言ってね。それで事務所に入ったんだ」
「俺は~ダンスが大好きでさ。アイドルってすっげーキラキラしてて派手な演出とか衣装とか、ダンスしてて楽しそう!!って思ってさ。何よりモテるし!一石二鳥じゃん!!って思ってアイドル目指してるんだ!!」
「俺は単純に金が欲しいから。それだけだ」
どいつもこいつも、くだらない。
こんなやつらがアイドルとかありえないんだけど。
「で?二人は?」
「……アイドルを目指すのに、アイドルになりたいから以外に理由がいる?」
小さい頃から、何でもできた。両親も周りも天才だってもてはやして。でも、どんな言葉を言われても嬉しくなかった。全部、できて当然だから。ある日、両親の知り合いに伝説と呼ばれたアイドルがいて、その人の引退ライブに行った。
初めて、誰かを凄いと思った。自分もこうなりたい。こんな風に、誰かの心を動かして、魅了して、他のものなんて見えなくなるくらい夢中にさせたいってそう思った。だから僕は、アイドルになりたい。その気持ちは、誰にも負けない。歌もダンスも。全部完璧にして、僕もあの人みたいな────トップアイドルに。
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