第2話 理想のお兄様
デビューしてから、一年。仕事も増え、ライブの規模もデカくなり、やることが増えた。最近ではグループでの活動以外にソロでのオファーも増えて、朱音と一緒に学校へ行くことができなくなった。何度辞めようかと思ったことか。まぁ、一週間に一度は最低でも学校に行けているが、新曲の準備をしているときは行けないときもあって、それが一番の苦痛だ。朱音の為にアイドルになったのは俺が選んだ道だ。しかし、ここまで忙しくなるとは思わなかった。あぁ、ずっと朱音と居られれば。…だが、そんなことを考えている暇はない。忙しくなったということは、目標に近づいているということだ。目標が達成できればアイドルなんて速攻で辞めて、朱音との生活を謳歌する。毎日毎日、朱音の為…と考えながら仕事をこなす。
スマホで時間を確認する。撮影まで時間があるな。朱音と連絡……は無理だろうな。時間的に、朱音は授業中だ。ここは、朱音の寝息でも聞いて落ち着くか。こっそり録音しておいた音声を聴くためにイヤホンをつける。朱音の寝息はいつ聴いても心地良い。今度は、心音でも録音するか。…ハードルが高いな。朱音が寝てる時が狙い目か。朱音に気付かれないようにしないと。朱音に、心音を録音するような兄だと思われたくはない。朱音には理想のお兄様として、認識してもらわないと困る。
朱音にとっていい
もう何度も聴いている朱音の寝息で、心を落ち着かせていると、楽屋の扉が開き、呼ばれる。撮影の時間だ。
あぁ……早く朱音に会いたい────。
扉を開けて、家に入る。
「ただいま」
可愛い足音が近づいているのが毎日の楽しみだ。
朱音は足音も可愛いからな。
「お兄様…!お帰りなさい。今日も…お疲れ様です」
「朱音、ただいま」
朱音に会えるだけで一日の疲れは全部消える。
あぁ、今日も朱音は可愛い。俺だけの朱音。
「お兄様、これ……」
「ん?これは…?」
「学校で……お兄様に…渡してほしいって…頼まれて」
クソ共が。朱音に頼むとかどういう神経してんだよ。
やっぱり朱音以外は全員ゴミだ。
**********
朱音が寝た後、心音を録音してゴミを燃やす。
炎を見てると結構落ち着くな。ゴミが燃える様はいいものだ。
ったく朱音にゴミ託すとかカスしかいねぇのか。
こんなもん貰って俺が喜ぶと思ってんなら浅はかとかのレベルじゃねぇ。まず、朱音に頼んでる時点でクソだ。渡したいなら金払って自分で渡してこい。どっちにしろ、朱音以外からの貰い物なんてゴミでしかないけど。全部燃やして、灰になれ。俺は───朱音さえいれば、それでいい。
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