(四)-2

「ねえ、何かあったの?」

 私は聞いてみた。

「うん。実はね、アシスタントが一人辞めることになった」

「え、それは困るんじゃないの?」

「うん。でもね。辞めるといっても卒業なんだ」

「どういうこと?」

「応募していた漫画賞で金賞をもらって、それを元に月刊誌に連載が決まったんだ。それで自分の仕事場を持つことになってね。ウチからは卒業って事になったんだ」

「そんなことがあったの!」

 私は驚いた。アシスタントの話は夫の口からたびたび聞く。新人賞惜しかったとか、どの漫画が好きとか、どこ出身だとか。描く作業も集中はするけど、集中が途切れると、何気ない雑談をよくするそうだ。そのときに知ったことを夫は話してくれる。


(続く)

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