(四)

 夕食の支度をしていると、夫が隣の仕事場から戻ってきた。

 私は昼の竹浦さんの行為にショックを受けてダイニングで動けないでいた。

 夫は風呂から上がってパンツ一枚でバスタオルを肩に掛けて「やっぱりなにかあったんでしょう」と缶ビールのタブを開けた。

 私は慌てて「そんなことないよ」と返した。今日の竹浦さんの旦那さんのことを話すべきだろうか。いや、夫を心配させたくない。それに私は夫の秘密を知ってしまった。そこから私たちの関係を壊したくない。

 私は夫の方を見ることができなかった。皿に盛った野菜炒めをテーブルに置いた。そのとき、夫の顔がちらっと見えた。嬉しそうな表情をしていた。


(続く)

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