(三)-6

「見ちゃったんですよ。二人が一緒に歩いているところ」

 私は嘘をついた。二人の関係は三川さんの奥さんが話してくれた。しかし、彼らを目撃したわけではなかった。

 とはいえ効果はあった。竹浦さんは真顔に戻り、手を離した。

「まあ、今日は仕方ないですね。また今度ということで」

 そう言い残し、彼は503号室に向かい、ドアを開けて部屋に入った。鉄のドアが閉まるとすぐに、内側から鍵をかける音がした。

 私は落とした買い物袋を拾い上げて、自分の部屋に歩いて行った。

 私は自室に戻ると、ダイニングで椅子に腰掛け、大きなため息をついた。


(続く)

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