(三)-4

 私は声を出した。しかし大声にはならなかった。

 その瞬間、エレベーターのドアが開いた。

 私がすぐに降りようとすると、竹浦さんが私より先に降りてしまった。そして「さあ、どうぞ」と言って私に手を取るように手の平をこちらに出してきた。私を見る目がイヤらしかった。

 私は竹浦さんを押しのけてエレベーターを降りた。

 すると私は手を掴まれた。

「奥さん、どう、うちでお茶していかない~?」

 私は手を掴まれた衝撃で、持っていたスーパーの買い物袋を落としてしまった。


(続く)

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