第12話 永遠少女、聖霊と再びまみえる
「それでアルギア、聖霊界に行くにはどうしたらいいのさ」
イリスの発言した【アポカリプス】。それはどうやらアルギアの知り合いだったらしく聖霊界に足を踏み入れることとなったのだが。
『簡単よ。こうやって門をひらけばいいのよ』
「本当に簡単だわ……」
一回大きく円を書いただけかと思ったが、そこにゲートのようなものが開かれた。これが聖霊界に繋がる門……。アルギアが躊躇なく通っていったから私もその背中をついていくことにした。
『あ、帰ってきた』
『アルギア様ぁ〜!』
「うわっ、どういう光景!?」
門を通るやいなやアルギアに2人くらい飛びついてくるもんだからさすがに驚いて後ろに後退りした。
『今日はオリヴィアが来ているんだから落ち着きなさいな。あなたたちが会いたがっていた人を連れてきたんだから』
『この人がオリヴィアか……。なんか平凡的だなぁ』
「お前は失礼という言葉を知ろうか、ねぇ?」
『貧相な体だね』
「シンプルにディスるのやめてくれないっ?」
普通に関わってくるこの聖霊たちに困惑していると、アルギアが一度手を叩いた。
『だから、みんな落ち着きなさいな。オリヴィアが困っているじゃない』
『それでこいつがエリメシアなの?』
「エリメシア?誰それ」
『あ、オリヴィアは知らなかったかしら。あなたの名前は本来エリメシアだったのよ。いや、この話はまだ完全に知らない方がいいかしら』
私が頭を抱えると、手招きをしだす。すると聖霊全員がアルギアに集まってコソコソ話をし出した。そして話終わると元の定位置に移動した。
『そういう理由なら私たちがわざわざ口出しすべきことじゃないね』
「ほんとなんなの……」
聖霊界の雰囲気の時点でただでさえ嫌いなのにここまでキャッキャされるとこちら側としてはただただ反応にも困るし迷惑なのだが……。
『それで、私たちに何かようだったのでしょう?』
『そうね。要件は……なんだったかしら?オリヴィア』
「私もよくわからないけど、アルギアが【アポカリプス】って人を知ってるらしくてさ。その人に会いに来たんだよ」
『アポカリプス……。あの子かしら?アポエリクスのことじゃ……』
『そういえばそうだね!あの子あの性格だからアポカリプスってあだ名で言われてるから誰かわからなかったよ』
「アポエリクス、って聖霊の元に合わせてくれないかな?」
『わかったわ。ちょっと待っててね』
すると一人の聖霊が立ち上がってどこかへ行ってしまった。どこにいったかだなんてわかったものじゃないから私は何も口を出さないようにすることにした。
数分後、私が何属性の精霊なんだろうか、と考察しているとさっきどこかへいった聖霊が戻ってきた。
『あの……オリヴィア?ちょっと相談があるんだけど、いいか?』
「ん、どうしたの?何か問題起きたの?」
『まぁ、確かに問題なんだけど……』
『はぁ……あの子、まだあの性格治ってないのかしら?』
『はい……。前の契約者のせいで……、人間不信っぽくなってしまって』
「つまり、一回赴いた方がいいの?」
『うん。ただ強く当たらないで欲しいんだよね……』
「わかった。じゃあアルギア……、私がやらかした時のバックアップよろしく」
『承知したわ』
さっき向かっていった聖霊についていくこと数秒、それこそThe引きこもり、みたいな空間がそこにあった。
『後は、まぁ頑張ってください』
「雑だなぁ……。まぁ話を聞くだけだしどうでもいいんだけどさ」
私が扉のノブに手をかけた途端。
「痛ったっ!?」
急に手首に微弱な電流が流れた。人が寄り付かないように厳重な防備固めすぎだろ……。流石にあっちでこんなことされたら私その人嫌いになる自信あるわ……。
『……誰』
「私は、オリヴィア。あなたに話を聞こうと——」
思って来たんだ、と言おうとした瞬間。
バコンッ
急に私の顔面からそんな音が発せられた。本来骨折とかしないと耳にしない音に驚きつつ、閉じていた目を開くと扉は開けられていた。
『え、女性?』
「私そんなに男子っぽかったのか……。結構ショック」
『そうなんだ……。だったらまだ人間と関わってみても……』
急に一人の世界に没頭し始める状況に唖然としていると、
『あ、ごめんなさい。男性だと思って接してたので……』
「別にいいよ。私はただ話を聞きに来ただけだし——」
『そうですか。では、私の部屋にどうぞ』
そう言われ、入った瞬間
『あっちゃー……無事だといいけど』
「え、どういうこと?」
そんな不穏な声が聞こえた気がしたが、扉は閉められていた。
『ふふふ……』
「えっと、それで君はアポエリクスでいいのかな?」
『はっ、あ、はい。私がアポエリクスです。闇の聖霊です』
やっぱり闇だったか。魔族は闇とかそういう系統を崇拝する傾向にあるから、予想をしていたがまさか本当にそうだったとは。
「それで——」
『私から、一つお願いしていいですか?』
「ん、何?聞くだけは聞いてあげるよ?」
『襲っていいですか?』
「それにまさかと思うけど私が頷くとでも思ったの?」
まさかあの聖霊が私を心配した理由って……。
「と、とりあえずアルギア呼んでくr——」
『なんで今二人きりの時間に他の
まさか百合好きに重ねて病み属性も持ってきてるのか!?流石に厄介を超えて逃げないといけない範囲だぞ……。
『あ、私以外がドアノブに触れても私の聖霊固有能力で固定されるから意味ないよ?』
「なんでそこまで厳重なのっ!?」
『だって可愛い子を思い通りにするのって悦でしょ?』
「私はそうは思わないけれどなぁっ?」
『私がそう思ったらそうなの!わかるっ?』
「全くを持ってわかりません!」
ここまで万全にされて逃げることの方が難しそうだな……。そう思っていると、ドアノブがガチャガチャ言い出した。
『これがあるから厄介なのよね……。オリヴィア、大丈夫かしら?』
「ごめん、やばいかも」
ガチャガチャ動き出したドアノブにびっくりしてつまづいた私はアポエリクスに馬乗りされかけている状況下だった。
『五月蝿いな……。私の大切な女の子を奪うつもり?』
『奪ってるのはそっちでしょ?私の召喚主なのに』
『この子そうだったの?なら食べがいがあるね』
「食べがいがあるって言わないでくれない?」
『だーめっ』
……可愛く言ったらなんでも許されるとでも思ってるんだろうな。私は少なくともさっさと逃げたいんだけれど。
「てか、さっさと離れて頂戴よ……。重たいんだけど」
『ふーん、そんなこと言うんだ。今の状況わかってないの?』
今の状況、と言ったら逃げることができなかった私を馬乗りにしているアポエリクス、としか思えないのだが……。それ以外に何か私が見落としている場面でもあるのか?
『ふふふ、私の能力知りたい?』
「……どうせ聞かなきゃ八方塞がりだし、聞くよ」
そしてこういった。
『私はね、一度触れたものを一定時間特定の範囲のみでしか動けないようにできるんだよ?』
「は、はは……。そんなわけないよな?この部屋からその一定時間抜け出せないって言うわけじゃないよな?」
『ご名答っ』
「ちょっと待って!じゃあ、馬乗りから解放されてもずっとここで逃げ回らなきゃいけないの!?」
『そもそも、私が貴方を簡単に逃すと思ってるの?』
「……これはやばいぞ」
聖霊界だからこそ面倒だ。私の唯一の特徴と言ってもいい魔法が使えないのはとてつもなく面倒だ。
魔法はあの世界にある魔素などを利用して編み上げている。
それらを相殺することができるのが精霊や、聖霊な訳だ。だからこの世界でそもそも魔法を打つこともできないし、してもアポエリクスは闇系の聖霊。多分無効化されるだろう。
『さて、私に服従して私のものとなる覚悟ができた?』
「できるわけないからね?」
『そっかー、なら洗脳しないと』
「どっちみちその未来しか見えないんですけれど」
『心外な。私は強制させるか、私に服従してこき使わせられるか。どちらかを選ばせてあげてるんだよ?優しいと思わない?』
「誰が思うって答えるんだ……」
やばい。本当にやばい。まさかここまで話の流れが難解になるとは全くを持って思ってはいなかった。
私は八方塞がりの状況だった。というかそもそも一定範囲しか動けない時点で相手の方が有利なのは目に見えていた。だからこそ抵抗せずに服従すれば反抗することもできる、だがそれ以前に私の体が色々と危ない。
だからこそ、どうしたらいいのか……。と模索していたが。
『あー、もうっ!面倒臭いから洗脳させてもらうね?』
「……はあっ!?」
……そんなことを、私に向かって言ってくるのだった……。
『こういうことに関してだけは頑ななんだから、アポエリクス!』
『どうしようかしら……。流石にそろそろ彼女も痺れを切らしている頃合いでしょうし』
私たちが頭を抱えていると、一つ名案が浮かんだものが現れた。
『ならいっそ——』
永遠少女は規格外の魔道士へと変貌する 神坂蒼逐 @Kamisaka-Aoi1201_0317
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