4. 売られた花嫁(4)

シャワーを浴びてもどると、ベッドの上に純白のサテンのウエディングドレスとシルクの下着が置いてあった。

ドレッサーの前に立ってドレスを着て頭にベールを載せたところで扉が開き、黒服のマネージャーが現れた。

からだをぐるりと回ってチェックしてからマネージャーは玄関へ導いた。

どこか別の個室で事が行われるかと思ったが、そうではなかった。

玄関に用意された白いハイヒールを履き裾を持ち上げて玄関を出ると、長大な純白のリムジンがドアを開けて待っていた。

外は漆黒の闇。

生温かい風が吹き渡っていた。

後ろに回ったマネージャーが、、黒いアイマスクで目隠しをした。

リムジンが走り出してしばらくすると、篠突くような雨がルーフを叩きはじめた。


小1時間ほどリムジンに揺られたろうか・・・。

いつしか雨は小止みになっていた。

坂道の途中でリムジンは停まり、ドアが開いた。

大きな傘を差しかけたドライバーが手を引いてリムジンから降ろした。

ポーチの濡れた敷石を伝って歩き、エントランスの庇の下に入ったところでドライバーがアイマスクを外した。

見上げると、煉瓦に蔦の絡まった洋館がそびえていた。

ドライバーがインターフォンのボタンを押すと、音もなく目の前のガラス扉が開いた。

扉の先の廊下は暗く、足元灯だけが弱々しく光っていた。

ドライバーにうながされて、平たい石を敷き詰めたような廊下に足を踏み入れると、背後で扉が閉じた。

廊下の突き当りは薄暗いホールだった。

禍々しいほど漆黒のグランドピアノが、さほど広くないホールの真ん中で息を潜めていた。

ホール右手の螺旋階段が中二階のバルコニーに続き、その奥から光が漏れていた。

どこからともなく結婚行進曲のオルゴールの音が聞こえてきた。

しばらくためらったが、・・・ドレスの裾を持ち上げ、螺旋階段を登った。

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