第5話

 通信機器に向かって、話しかければいい。

 そう言われたから。

 がんばって、話しかけた。

 三週間ぶんの、ストックがある。どうでもいい話ばかりだけど。

 彼のことは分からない。

 この通信だって、いみわからない。ぜんぜん理解できない。

 でも。

 彼に会いたい。

 いま。

 この通信を。切ってしまったら。

 彼に会えないかもしれない。

 彼に。


『あっ。おい。RCC値に変動がある。どこだ』


 どさっ、という。音。

 玄関のほう。


『ちょっと待って。待ってください』


 玄関まで走って。

 扉を。

 開ける。


「ああ」


 彼が。

 転がっていた。

 真っ紅。

 片手と片脚が。

 なかった。

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