二つの段ボール箱。
とはいえ私、ゲームは得意ではないのですよね……。
弟のタクマは、ゲーム大好き人間で幼稚園の頃からテレビゲームの虜になっていました。私もゲーム自体は好きですが、弟と私では好きなゲームジャンルが少し、異なります。私は一人で物語を進めていくRPGジャンル、弟は対戦ゲームが好きです。
そのため、タクマが誕生日などに買ってもらった対戦ゲームの相手をよくさせられたものです。まぁ、私が毎回ボロ負けでしたけど。手を抜いてたのかって? いえ、まったく。毎回全力で戦ってましたけど、瞬殺、というやつですハイ。
その弟が、一緒にゲームをしてほしいと言ってきている。これはきっと、対戦ゲームの類に違いありません。ああ、これからまた、弟に叩きのめされる地獄が待っているのですね、分かります。
思わず、一人でうんうんと頷いてしまう私。その時でした。
インターホンの音。画面をのぞけば、宅急便屋さんと思われる人が立っていらっしゃいます。
「わお……」
届いた荷物を見て、絶句。届いた段ボール箱は、二つ。どちらもかなり大きな段ボールさんです。
一つ目の箱には、これまた大きな箱に包まれたゲーム機。もう一つの箱には、辞書と同じくらいの重さの本が数冊。その本の上に、タクマと思われる筆跡のメモ。
『WFOを始める前に、必ずこの本を読むこと』
じゃすと・あ・もーめんと・ぷりーず!? 本気で言ってます!?
この段ボールの中に入っている本、全部を読み切ってから、ゲームを始めろと!?
いやそうなりますと、始めるまでに少なくとも一ヶ月はかかってしまいます。
それは、タクマ的にも嬉しくないことなのでは……?
「ちょっとだけ、読んでみますか……? うわぁ、さよならっ」
少しだけ、ページを開いてみて中身を確認しましたが……、無理。無理です。これは無理。この文字の量とこのフォントの小ささは……、読破に二ヶ月以上の時間を要します。すまない弟、姉ちゃんにはこの本たちを読破する努力がわきません。そのまま、ゴミ箱にダッシュート! してもよろしいでしょうか。いや、それはもったいないか。
仕方ない。まずはタクマに電話をかけてみましょう。再びソファに寝転ぶと、スマートフォンを操作し、電話をかけます。
『はい』
「私です」
『……新手の詐欺ですか』
「姉ちゃんの声が分からないというのですか」
『僕には姉はいません』
「だから、詐欺師ではないのです。古池愛良なのです」
『……だから言ったでしょう。最初に名前を名乗るようにと』
電話口で大きなため息をつく弟。なんて面倒な人間なのでしょう。
「……アドレス帳に私を登録していないのですか」
『してますが、番号だけ一致した別人の可能性があるでしょう?』
「……友達いなくなりますよ」
『問題ありません、姉さんと同じく友達少ないので』
私を巻き込まないで頂きたい。そうツッコミを入れようとして、辞めました。言っても無駄なことは、言わなくていい。アイラ百ヶ条の一つです。
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