質問に答えてくれないかな?<Ⅰ>

ーー


 1時間は経っただろうか。あれから数十回は木を殴り、合計して10点分は獲得できた。私は移動し、木が無くなり開けた場所に出た。開けた場所には崖と思える土の壁が立っていた。


「そうか、こういう地面も掘ってみたらいいのか」


 そう思い掘ろうとした時、近くで土が盛り上がり、扉が開くように動いた。中から袋を肩にかけた男性が出てくる。


「ふう……見っけ見っけ!とりあえず15点分か……順調じゃね?これならまだこの中にありそうだな……」


 そう言いながら別の所から入ろうとキョロキョロし、私と目が合う。教習所で見たことある気がするなあと考えていると、その人の顔がみるみる青くなる。


「ひぃ!ごめんなさい!攻撃しないで!」


と言い、慌てながら出てきた土の中に戻り、入り口を閉じた。


 目の前で怖がられるの初めてだな……。結構心にくるものだった。このまま自分も土を掘ったら余計に怖がらせてしまうかもしれない。そう思い、せめて別の場所から潜ろうかなと考えていると、


「ねえ」


 その声とともに、雷魔法が私にめがけて襲いかかってきた。


ーー


 1時間はとうに過ぎたか、と時間を確認し、魔法を閉じる。現状は27点だったか。そろそろ移動、あるいは地面の中まで探してみるか……。


 近くでバリバリという音が聞こえた。誰かが戦闘でも始めたのだろうか。こちらまで影響はあるだろうかと思い、そちらの方に感知魔法を飛ばす。


 三人はいるか。二人と一人、一人の方は先程の魔法によって負傷したのか、足をひきずっているように見える。これは……サラか!残りの二人にも覚えがある。


 気付いた途端、私はそちらに向かって駆け出した。そんな予感はしていた。でも、あ・の・人・がいたから抑えられてると思ってた。その抑止力がなくなって、ここで行動に移すとは……!


「確かカリムとアコ……と呼ばれていたわね」


 ギリギリと歯をくいしばる。「手を貸さない」とは言った。例えこれがただの戦闘であれば、わたしは手出しはしなかっただろう。


 私はさらに魔法を重ねがけする。周りの木々を倒しかねない勢いで駆け抜けていった。


ーー


 後ろからの攻撃を避けきることができず、左足を負傷してしまう。攻撃を撃ってきたのは、見知った人達だった。


「カリムさんとアコさん!どうして……」

「あらサラさん、ご機嫌よう。どうしてもなにもこれは「妨害あり」の試験ですよ?」


 そうやって話しかけてくるのはアコ。雷魔法を放ったのはカリムの方だ。


「そうですよサラさん。何か問題でもお有りですか?」

「そうだけど……でも……」


 右足を抑えながら二人の方を向く。先程の魔法は私の体を完全に覆うほどの大きさはあった。鉱物を奪うどころか、そのまま私の意識までも奪おうとするかのように。


「鉱物を奪うだけならあの規模の魔法はいらないはずだよ……!」

「別にあなたから点数を奪うつもりはなくてよ」

「じゃあ……」

「ただ試験中、あと1時間だけ動かないでもらえればそれで良いんですわ!」


 アコが風魔法で圧縮した空気の斬撃を飛ばしてくる。動く右足に魔力を注ぎ寸前のところでそれを躱す。アコが露骨に舌打ちをする。


「思えばあなたはロゼ様の邪魔ばかりしてきた!座学ができて調子に乗って、挙げ句の果てに昨日の魔法は何!?あんなことができたのにそれを隠してただなんて!」

「そんなこ──」

「そうだ!あの女だ!あの女があなたを魔法で強化したんでしょ!そうに違いないわ!」


 あの女──リリアさんのことだ。


「違う!リリアさんはそんなことしてない!私の緊張を解してくれただけで……!」

「やっぱりあの女が関わってるんじゃない!あなたの次はあの女よ!」

「強い魔法使っただかなんだか知らないけど、あんなの噂に過ぎないわ!」


 アコが魔法を使い、カリムが魔法の準備をしている。


「アコさん、あれをやりますわよ」

「わかりましたわ。カリムさん」


 アコの魔法は何かが起きたように見えない。だが、何かがやばい、そう感じ動こうとする。そよ風が私の服を撫でる。


 雷魔法が飛んでくる。体を動かすが、意志でもあるかのように魔法の軌道が私の方に向く。右肩を直撃し、袖の一部を焦がしていく。


「うっっ……あぁ……」

「博識なあなたなら知っているかしら?真空状態では電気をほぼ通さなくてよ」

「真空状態の壁を作り、その中に空気の道を作ってしまえば、真っ直ぐしか進まない雷魔法でも曲げることが可能ですの。後学のために……覚えておきなさい!」


 二人が私に狙いを定めて魔法を放つ。私は動けず目を瞑り──


 ドガンという音が響く。……地面にでも当たったのか、私には当たらなかった。私は恐る恐る目を開ける。


「……ごめんね、遅くなったわ」

「ううん……私がもうちょっとちゃんとしてれば、迷惑をかけずに済んだの……」


 土煙が吹き飛び、リリアさんの後ろ姿が目に入った。

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