気を付けるべきことは何かな?<Ⅲ>

会場を出て、訓練区域2とやらに移動する。大きな柵が見えてきて、中に木々が生い茂っている。あそこだろうか。柵の前に到着し、案内係の人が一人一人に袋を渡していく。袋はわたしの体の半分くらいはある。袋の紐にはわたしの番号が書かれた付札が付いていた。


「この袋の中に手に入れた物を入れてください。後、袋についているこちらの付札ですが、こちらを破くと近くにいる監視係に連絡が行く仕組みになっていますので万が一の時はお使いください。では、各自別々の場所に案内しますので付いてきてください」


 そう言って再び歩き出す。昨日の試験と言い、色々な準備をしていたり、時間がかかっていることを思うと試験官というのは大変な業務だと思う。わたしも等級が上がればこう言った係をやることになるのだろうか、などということを考えているうちに、わたしの開始位置に着いた。


「最後の方が到着次第、開始の連絡が入りますのでそれまで待機するように。では、ご健闘を」


 最後の一人、サラが係の人に付いて行く。


「頑張ろうね」

「……ええ」


 小さく手を振るサラにこちらも手を振る。三分くらい経っただろうか。


「それでは、「宝探し」開始!」


 大きく響く案内と共に、わたしは動き出した。


ーー


「それでは、「宝探し」開始!」


 案内が聞こえ、私は一度深呼吸して、自分の書いたメモを見返す。


〜〜〜


宝探しのメモ(重要!)


・点数の書かれた鉱物を探して袋に入れる!

・最後に持ってる点数が成績に!

・2時間(頑張る!)

・他の人の邪魔をしても大丈夫こわい……


ダメなこと(気を付けるべし)


・袋を壊しちゃダメ!

・鉱物を変形しちゃダメ!


「欲張り者は身を滅ぼす」(どういうこと?)


リリアさんより!


・移動し続けるべし!

・隠れるのはオススメしない!(そこまで魔法使えないので隠れない!)


〜〜〜


 見終わってからもう一度深呼吸をする。……よし、探そう。


「ただ、どうやって探そうかな……。そう言った魔法を使えるわけじゃないし……」


 リリアさんならきっと……いや、今は自分のことだけを考えるんだ。私は頭を振った。私にできる魔法でやれることを考えなければ。


「炎魔法と、他の属性は最低限。日常で使える魔法は……なんか応用できるかな……。うーん、やっぱり炎魔法でどうにかするしかないのか……」


 炎を出しても木を燃やすだけになる。木の上にあるかもしれないが、落とすためだけに燃やすのも忍びない。そうなると強化魔法をかけるしか……。


「とりあえずできることはそれくらいかな……試してみよう」


 右手に魔法を描くように想像する。魔力を込め、自身の力を上げる。近くの幹に向かって、殴ってみた。


「えいっ!」


 メキッという音がし、反対側に倒れていく。できれば折りたくはなかったが、加減しなくては。


「やっちゃった……。ごめんなさい!」


 樹木と、これを直すか新しく植えるであろう人に謝り、折れた先に向かう。葉っぱの中に鈍く光る鉱物を見つける。


「あった、これ……だよね?えっと……「2」点か。これを袋に入れてっと」


 掌の大きさはある立方体の鉱物を袋にしまう。確かにこれだけ大きな音を立ててしまったら、他の人に気付かれてしまい狙われてしまうなと思い、言われた通りに移動をしようとする。その時、草の陰に隠れていた別の鉱物を見つける。


「あ、見つけた!……なるほどね。「欲張り者は身を滅ぼす」……か」


 私はその鉱石は袋に入れずに、移動を開始した。


ーー


 わたしは風を起こし、周囲にある物を感知する。人は三人、内二人は右往左往しているように感じる。こちらには向かっていないので一旦置いておく。動いていないのは監視係だろうか。


 周りの石よりも大きい何かを見つける。しかしこれは……。一応確認しようと思い、その位置へ移動する。


 その場所には袋にギリギリ入るかどうかの大きさで、鋼魔法で作られたと思われる人型の鉱物を発見した。顔がある位置には「100」と書かれている。


「こういうことだろうとは思っていたけれど、ここまで露骨なものもあるのね……」


 別に入れても良いのだが、こんな序盤からこんなものを担いで移動したくない。それに──


キィンッ!


 わたしが張っていた防御魔法に何かが当たる。水だ。こちらを狙ってきたのか……。いや、攻撃には思えない。とすると……。


「こっちだ!魔法に当たった感覚がした!」

「はたして人なのか鉱物なのか。人なら鉱物を持ってるといいんだがな……」


 二人組の男達が駆けてきた。そして、銅像とも言える鉱物を見つけて唖然とする。


「おいおい……なんじゃこりゃ」

「「100」点か……どうする?」

「どうするも何もこんなもの持っていけねえよ……追われたら一発で捕まるぜ」

「首だけ持って行きたいが……クソ!「加工禁止」ってこういうことかよ……」


 男の一人が水魔法を使い水の塊を飛ばし、少し離れてからそれに付いていくように二人が移動をする。


 その一部始終をわたしは木の上に隠れて見ていた。音が聞こえなくなっとことを確認し魔法を解く。


「さて、どうしましょうか……」


 そう言い、木の上から降りて鉱物の上に着地をする。念のため隠しておこうと思い、そのまま地盤を緩くして鉱物を埋める。土を上から被せ、感知魔法を再度使用する。

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