質問に答えてくれないかな?<Ⅱ>

ーー


 サラに向かって雷魔法が飛んでいくのが見えた。風魔法の魔方陣も見える。あれで威力、あるいは軌道でも操作しているのか。私はそれに風魔法をぶつけて別の方向に軌道をそらす。


「……ごめんね、遅くなったわ」

「ううん……私がもうちょっとちゃんとしていれば、迷惑をかけずに済んだの……」


 サラは左足と右肩を負傷している。この二人がやったのか。わたしは二人──カリムとアコの方を睨みつける。


「来たわね……!あなたがいるから彼女が調子に乗ったのよ!」


 茶髪でショートヘアーの少女、カリムがそう言うと、


「そうよ!噂になっているからって、わたくし達に勝てるとでも!」


それに続いて後ろで一つに纏めた黒髪を揺らす少女、アコが話す。


 色々と言いたい気持ちがあるが、一度振り向いてサラの方を見る。


「大丈夫?もし辛かったら、監視係を呼んだ方が……」

「大丈夫……ではないけど、まだまだ集めないと点数が……」


 この状態で点数を気にするとは、なかなか意志が固い。しかし、強がってはいるが立ち上がれそうにもない。治癒魔法は使えるが、その場しのぎ程度でとてもすぐ立ち上がれるまでは治せない。


「ちょっと!わたくし達を無視するとは、良いご身分ですこと!」

「そうよ!そこの足手まとい抱えて、わたくし達と戦うつもりですの?」


「ねえ」


 わたしの態度に腹が立ったのか、まくし立てる二人にわたしは話しかける。二人は一瞬ビクッと反応したが、すぐに


「そもそも、今回の試験は「妨害あり」ですのよ!わたくし達はそれに従っただけ!咎められる理由はなくてよ!」

「そうよ!サラさんも仰っていたように、サラさんがしっかりしていれば何の問題もありませんでしたことよ!」


と言った。わたしは二人の方に向き直る。二人はまたビクッと反応をする。……今、わたしはどんな顔をしているのだろう。


「じゃあ、わたしが今からすることも「妨害」ってことで良いんだよね?それによってどうなろうと、お二人がしっかりしていれば問題ないんだよね?」


 そう言い、魔法を展開する。土壁を形成し、サラに被害が及ばぬように、わたしと二人を閉じ込め隔離した。わたしは二人に問いかける。


「まず、許された妨害ってどの程度なのかしら?試験官が言ってた緊急事態の「緊急」って、こういうことを指しているのかしら?」


 わたしは二人の方へ近付く。二人は少しだけ後ずさる。


「わたしはサラさんが怪我を負った瞬間を見ていない。だからどういう流れでああなってしまったのか知らないわ。ただ、怪我を負っているサラさんに追撃しようとしたのは見えたわ。あれはどういう意図があったのかしら?」


 一歩、一歩と歩む。二人はそれに合わせて下がる。が、土壁に阻まれてそれ以上下がれない。


「それに──」

「うるさいですわね、ごちゃごちゃと!」

「そうですわよ!文句があるのでしたら、わたくし達に攻撃すれば良いじゃないですの!」


 そう言い、二人は先ほどの魔法をわたしに向けて撃つ。魔法が当たり、大きな音と土煙が起こる。二人はしてやったりという顔になる、が土煙を払い無傷で立つわたしを見て途端に青ざめる。


「何よ……何をしたのよ!?」

「あんた……一体何なのよ!?」


と聞かれ、わたしは


「わたしの質問に答えてくれないかしら?」


と返す。怒気をはらむわたしの言葉に更に顔が青ざめる。アコが魔法をかけ、慌てて土壁を蹴って登っていき、カリムは


「ちょっと、アコさん!わたくしを置いていかないでくださいまし!」


と叫んだ。


「大丈夫、逃がさないから」


 わたしは自身に魔法をかけ、アコの後を追う。アコの三分の一の歩数で駆け上がり、すぐにアコを追い越す。


「えっ!?」


 土壁を超えられる前にアコを捕まえ、わたしとアコの二人に加重の魔法をかける。負担が大きくなり、登ることができなくなったアコは垂直落下を始める。


「きゃああああああああ!!」


 地面にぶつかる前に、風魔法で減速をし、勢いを殺してゆっくりと着地する。わたしはぺたんと座り込むアコから離れた位置に着地する。攻撃も、逃げることも通じないことに二人はすっかり怯え、抱き合って震えている。そんな二人にわたしは先ほどの続きを話す。


「さて、あなた達はあのままサラさんを攻撃し続けてどうするつもりだったのかしら?」

「そ、それは……あのまま気絶してもらって時間切れまで……」

「て、点数がなければ試験結果に響くかと……」


 怯えながらもこちらの質問に答える二人。


「へえ……気絶、ね。節度ある行動ってそこまでやって良いのかしら?それに、あの魔法を生身の彼女に当てて、果たして無事で済んだのかしら?サラさんは、あなた達にあそこまでされないといけないことをしたのかしら?」

「えっと……それは……」

「あの……その……」


 わたしが怒っているのは、ここまでわたしによくしてくれたサラを傷つけられたから。そして、その姿が師匠せんせいと重なったからだ。サラも、師匠せんせいも、なぜいわれのないことで責められ、攻撃され、そして──


 わたしは魔法を展開した。立方体の形になるように魔法陣を配置し、それを二人に向けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る