実力はどれくらいですか?<Ⅳ>
今回の試験参加者は、恐らく最後に登録したサラが「289」なのでそれだけいるのだろう。
一回につき五人ずつ、つまり五十八回目が最後となり、わたしの番となる。
何が言いたいのかと言うと、待っている時間がもの凄く長く感じてしまう。他の参加者の魔法を見ているが、サラやロゼ程の衝撃が起こらず、また、先程のサラと同じように魔法を展開するまで時間がかかる人も少なくないのでかなりの時間を要した。
他に待っている参加者は最善の状態で魔法を使うべく、各自でストレッチをしたり、瞑想をしている。
多分わたしは目をしっかり瞑ってしまったらこのまま眠ってしまうだろう。かといって、このまま寝て順番が来てからさらに起こして貰うのもなんだか気が引ける。こういった待ち時間の態度も評価に含まれる可能性がある。
あくびを出来る限りかみつぶし、時にはついあくびを出してしまい。わたしの後ろから抱きついているサラが
「次が最後だよ」
と声をかける頃には太陽が沈み始めていた。
「眠そうだけど、大丈夫?」
「うん……魔法は使えるよ……」
「そこに関してはそんなに心配したないのだけど……わざわざ人気の少ない時間まで待った理由、忘れないでね?」
「大丈夫……大丈夫……」
目を擦った後、一度深呼吸をする。
「最後、残っている四人は前へ」
声がかけられ、サラがわたしから離れる。
「頑張ってね!……ロゼさんの魔法を思い出して、あれくらいの力でね…!」
わたしを含めて最後まで残っていた四人が集まった。この時間までわざわざ残っているということは、緊張して参加しなかったのか、はたまたわたしのように余り他の人には見られたく無かったのだろうか。
残っている人も少ない。他の三人の中に知り合いでもいるのか、他の人の実力を確認したい物好きなのだろうか。
「それでは、始め!」
その声と共にわたし以外の三人が魔法を展開する。わたしはと言うと、使う魔法を決めかねていた。
「ロゼさんのように」とは言われたが、彼女のように自分の使える属性を三つ使用しなくても良いだろう。どちらかと言うとサラのように一つの魔法に絞った魔法を見せたほうが良いか。
そんな事を考えながら、わたしは手の中に魔法を展開する──
後の話は、サラと、わたしの魔法を一番近くで見ていた隣の人から聞いた断片的な話となる。
ーー
私、自分で言うのもあれなんですけど、養成所でそれなりに良い成績は収めていて、あ、得意魔法は雷なんですけど……雷だけであればロゼさんの雷魔法に負けないくらいのものは出せるんですよ……。
最後まで残ってたのも一番良い状態で魔法を使いたくて、ずっと瞑想しながら待っていたんですよね。そして来たんですよ、最後の順番。
私は雷魔法を四つ展開しながらそれを繋げた魔法を使ったんですよ。結果としては一番良い魔法を撃てたんじゃないかなーなんて、思い上がってましたね……はは。
「やった!出来た!」って喜ぼうとしたんですよ。その時、強い風が吹いてきたんですよね。「今日ってこんなに風強かったっけ?」って、何気なく風上の方向を向いたんですよ。
隣の人が手の中に収まるくらいの魔法を展開してたんですけどね。八面体を思い浮かべてほしいんですよ。そんな感じに並んでるんですよ、魔法陣が。
接合魔法のことを考えると、その人、十一個は魔法陣を展開してる計算になるんですよね。そして、その魔法を的に向かって投げたんです。後は、他の人も言っているような事が起きたんだけど……。
一瞬で三つの的が抉れたように消え、その後に私達が壊した的の残りを含めて風が薙ぎ払い、窓まで巻き込んで吹き飛んでいったんですよね。
試験上に使われてる今回の建物って、魔法使いの訓練が頻繁にあるから丈夫なように窓にも魔法かけてあるって聞いたことあるんだけどな……。
私、こんな近くで初めて見たよ、竜巻。なんだろう、「人っていくら強くても天災には勝てないんだろうな」って、思い知らされちゃった。
自信あったんだけどな……もう一度、養成所通った方が良いのかな……。
ーー
魔法を使い終わり、慌てたサラに連れていかれ中庭を後にする。あまりにも眠たかったわたしをわざわざ宿に連れていってくれたサラから話を聞き、改めて思い出して後悔したのはそれから10時間後のことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます