どうやって街に行くつもりなの? <Ⅱ>
4時間程経っただろうか。余力は残っているがわたしよりもへろへろの彼女のために休憩しようと思い、下に見えた森の中の小川付近に着陸した。
このまま4時間置きの休憩をし、夜に軽く仮眠を取りながら移動すれば間に合うだろうと考えていると、ぜえぜえと息を切らしながら彼女が話しかけてきた。
「ちょっと……飛べるなら……はあ……飛べるって……言って……はあ……欲しかったよ……はあ……」
「ごめんなさい。でも、あそこから間に合うように移動することを考えると飛ぶのが一番かと」
「はあ……はあ……そうなのかしら……いや……なんで飛べるの……?」
「え……?」
彼女にそう言われ、つい声を出す。
「これくらい魔法を勉強していれば出来るはずじゃ……」
「出来ないわよ……!そもそも、風魔法を重点的に勉強してないと浮くことすら出来ないわ……」
少し呆れながら彼女は言った。息切れは落ち着いてきたようだ。
「でも、ありがとう。もしあなたがいなかったら間に合わなかったかも」
「……どういたしまして。まあ、まだ間に合ったかわからないけどね」
と軽く答える。
「そう言えば、今更だけどお互い自己紹介してなかったわね。私はサラ。【サラ・J・クリスト】よ」
「わたしはリリア。リリア・F・ルーベルト」
「ふふ、長い時間一緒に飛んでいて、お互いの名前を知らなかったなんて、面白いわね」
お互いに自己紹介をする。サラはこれから向かうディラの街にある魔法使い養成所で魔法を勉強しているらしい。乗り物に乗っていたのは、試験の前に一度実家に帰っていたとの事。
「あ、そろそろ飛ぶから、もし喉が渇いてたら川があるからそこでで飲みましょ」
「……え?川の水って大丈夫……?」
確かに水質管理は大事だ。そう思い、わたしは魔法で水をすくい上げ、念の為浄化魔法をかけた。
「ねぇ……それって風魔法?」
「いえ……水魔法で操作して、光魔法で浄化したのだけど……」
「……後でいいから、また話を聞いても良い?」
「大丈夫だけど……」
サラの反応に疑問を覚えたが、後で話を聞くことにした。二人で喉を潤した後、再び彼女に手を差し伸べる。
「また飛ぶけど、大丈夫そう……?」
「平気よ。さっきは飛ぶと思ってなくてビックリしただけ。……ちょっとあの高さは怖いけどね」
そう言いながら、わたしの手を握る。森の中に入ったが、飛んできた方向は覚えている。風を起こし、宙へと浮く。
「それじゃ、今度はさっきよりも長く飛ぶけど、平気かしら」
「え……あれ以上に長く……!?私は大丈夫だけど……」
返事を聞き、街に向かって再び飛び始めた。
あれから2日程経過した。わたし達は6時間置きに休憩を挟みながら移動した。その間、サラから色々な話を聞いた。そもそも養成所の方では自分にあった魔法一つに絞って勉強をするとのことらしい。
「もちろん、日常で使うような簡単な魔法や身体強化に必要な最低限の魔法は習うけどね。光魔法で灯りをつけたり、土魔法を強化魔法として自身にかけて防御性を上げたり……」
それを聞くと、わたしの使う魔法に驚いてたのも納得がいく。日常で使う魔法はもちろん、各属性の簡単な魔法は八歳の時点でおおよそ学ばされており、それから2年は応用としてより深いところ……養成所で重点的に絞って学ぶところを行ったことになる。
そう考えると早いペースで学ばされていたのかと、
「というか、一つの魔法属性を絞って学んでも上達するの半分以下なのに、それを全属性って……リリアさんもだけど、その先生って一体……」
「あー……まあ、凄い人だったから……
わたしは言葉を濁した。わたしと
「そういうサラさんはどうなの……?試験を受けるってことは、それなりに自信があるように見えるけれど……」
「あはは……私はまだまだだよ……。座学ならまだしも、試験がね……。私、本番に弱くって……」
緊張しやすいタイプだそうだ。彼女は炎属性の素質があり、重点的に学んでいるとのこと。見た所魔力もそれなりに持っており、素質はあるように思えるのだが……。
「十八歳にもなったし、先生からも「力を出せればあなたなら受かるよ」って言われたけど……今から考えるだけでお腹が……」
「大丈夫……?もしわたしに出来ることがあれば……」
「大丈夫だよ……こういうのは自分でどうにかしないとね……」
とサラは苦笑いをした。こうやって知ったよしみなので、出来れば受かって欲しいものなのだが、変にわたしが手を出してサラやわたしが試験に落ちる……なんて事がないようにしなければ。
「あと、養成所にも凄い人はいてね。あ、リリアさんほどじゃないよ。さすがにリリアさんみたいな事は出来る訳がないんだけどね……」
……わたしの事ををなんだと思っているのだろうか。まあ良いのだが。わたしは腰掛けていた切り株から立ち上がり、
「じゃ、そろそろ行きましょ。あと3日はあるんだし、それまでに覚悟を決めなさい」
「あはは…そうだね。頑張るよ」
私が差し出した手を取る。もう飛ぶ事に対して恐怖は感じていないようだ。
「飛ぶことにも慣れたんだし、大丈夫なんじゃない?」
「それとこれとは話が違うよ……」
そんな話をしながら何度目かの移動を始めた。
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