第4話定例会①(side 伊織)

「おい! 双葉! 聞いてんのか?」

「……えっ?」

「えっ?じゃなくて、次は生徒会長の挨拶だぞ」

 そう近くにいた同じクラスの子に声を掛けられて、僕はようやく意識が覚醒した。

 今は月に一度行われる生徒会主催の定例会の時間だ。いつの間にか僕の思考は、別の所へトリップしていたようだ。

「あ……、ごめん。ありがとう」

「お前何度声かけてもずっと上の空だったけど、大丈夫か?」

「ああ、大丈……って、今……何の時間だって?」

「えっ? だから、さっきから言ってるだろ? 生徒会長である獅子堂司の挨拶が始まるぞって」

「……まずい。この時間だけは避けてたのに。何で僕はここにいるんだよ」

「はあ? 何言ってんだよ。俺が教室で行こうぜって声かけても、何も言わないから。引きずるようにここに連れて来たんだよ。それに、そのままお前も大人しくついてきたじゃねーか」

「そう、なのか……。……僕、急におなか痛くなったから、保健室行くよ」

 そう言って、すぐさまこの場を抜け出そうとするが、瞬時に腕を掴まれてしまった。

「ここまで来て何言ってんだ。あの生徒会長様である獅子堂司が話をしてくださる時間だぞ。お前見たくないのか? オメガなら絶対憧れる存在だろ?」

 彼はさも憧れるのが当然だと言い張っているが、僕は全く思わない。

 獅子堂司。この獅子堂学園の理事長の息子で、現生徒会の会長、僕の二つ上の三年生。

 そして第二の性がアルファで、多分……、いや、確実に僕の「運命の番」だ。

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