第2話
「樹居る?」
「出たな!!ナルーシスト
「てめぇに湊呼ばわりされる筋合いはねぇ。てか変な呼び方すんな」
サングラス、無駄にヒラヒラして無駄にキラキラした服を着た、およそこんな個人生花店には似合わない男、
樹さんの同級生だというこのふざけた格好の男は、この辺りの花業界最大手のフローラM'sの跡取り息子。
派手な顔と派手な服、派手なパフォーマンスで有名な湊さんは、やたら樹さんのところにやってきては樹さんに構う。
いや、ちゃんと実力もある………樹さんには敵わねぇけどなっ。
「何の用だ!?」
樹さんは店の奥に居る。
俺は湊さんに通せんぼをした。
「飯でも一緒に行こうと思っただけだよ」
「今日は俺とカレーって約束してんだ、アンタの出る幕はねぇ」
「アンタとはなんだ、この、小僧が」
「小僧じゃねぇっ!!」
「十分小僧だよ」
分かる。
湊さんは、樹さんが好きだ。
きっとそう、多分そう、絶対そう。
だから俺は邪魔をする。いつもする、毎回する。
樹さんは俺が落とすんだ。絶対ぇに。
樹さんは湊さんが来ても何も言わねぇ。また来たの?って、優しく笑う。
樹さんの気持ちは分からねぇ。
けど。
でも。
「あれ?湊、また来たの?」
「樹」
「樹さん、来んなっ」
「小僧、いい加減にしろ。そろそろ終わりだろ?飯食いに行こうぜ」
「え?行かないよ。しょーちゃんが今日カレーって言うから、カレー作るんだよ。僕も何かカレー食べたい」
「カレー食いに行けばいいじゃん。何で樹がこの小僧の飯作んなきゃいけないんだよ」
「行かないよ。作って食べます。しょーちゃんが美味しそうに食べてくれると嬉しいし、安いバイト代で頑張ってくれてるから、それぐらいしてあげないとね」
いつものように笑いながら樹さんはそう言う。
どや!!って、湊さんにふふんって笑ったら、湊さんに思いきり足を踏まれた。
いてぇぞ、こら。何すんだ。
樹さんは、掴めない。
ふわふわしてて掴み所がない。
俺がどんなに好きだって言っても、またまたしょーちゃんそんなこと言って、とか。
抱き締めても嫌がらないけど、しょーちゃん、何してんの?ってムードなく笑う。
本気にしてもらえねぇ。
この年の差のせいなのか。
最近はしょっちゅう樹さんの部屋に行って夕飯を食べさせてもらってる。
親から送られてくる米だの野菜だのを自分じゃどうにもできねぇからと持って行ったのが始まり。
樹さんは喜んでくれるし、一緒に食べようよって、俺の分も作ってくれる。
樹さんは料理もうまい。
いつ行ったって部屋もキレイだし。
いや、キレイって言うか何にもねぇぐらい質素な生活っていうか。
贅沢できるほど儲かってないし、遊んでる暇もないしねって、本当に必要最低限の物しか持たない。
ちょっとは見習えよな、って。
閉店準備をし始めた樹さんの後をついて歩く、こってこての湊さんを睨む。
「樹さん、閉めたら今日もやるから」
湊さんの前で、敢えての宣言。
樹さんは渡さねぇ。湊さんとご飯になんて行かせねぇ。
「えー?毎日いいのに」
「ダメだよ。こういうのはちゃんと続けなきゃ」
「何だ?おい小僧、樹に何をするんだ」
「何だっていいだろ?俺と樹さんの日課だよ」
「だから日課って何だよ」
「うっさいな、湊さんには教えねぇよ」
こっちでまた言い合いを始めたら。
「あーもー、湊邪魔!!帰って!!」
湊さんが怒られて。
俺は湊さんに思いきりあかんべーをしてやった。
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