ダメなところもかわいくて

CHOPI

ダメなところもかわいくて

 みんなに言ったって伝わらない、僕だけのナイショの話。



 「あー!ごめん、洗濯物失敗したー!」

 休日の昼下がり、いきなりキミが叫ぶから何事かと思った。

 「え、失敗?」

 肩を落としているキミの背中越しに洗濯物を確認する。思わず『うわぁ……』と声が漏れてしまった。キミは少し涙目になってまた『ごめん』と言う。

 「これはこれは……」

 見た瞬間に分かった“失敗”。黒いTシャツ、黒いスキニー……黒物の洗濯物には特に目立つ、白い点々に散った紙。簡単に言えば、ティッシュと一緒に洗濯物を回した、と言うこと。

 「あー、もうー、どうしよう……」

 頭を抱えて悩んでる君に、とりあえずネットの知恵を借りることにする。

 「……柔軟剤入れてもう一回洗濯すると落ちるらしいよ」

 「ホントに!?」

 善は急げ!と声を張りながらもう一度洗濯機を回すキミの後姿を見て、ちょっと笑ってしまった。


 「これ……、苦くない?」

 「煮魚、だったの。焦がしちゃって……」

 キミの煮魚成功率は3割5分といったところ。恐らく思うに火加減が苦手な様子。たまに目をやると強火で調理していることが多いから、だと思う。

 「途中見た時は、まだ中まで火が通ってなくて、油断してたら今度は焦げちゃって……」

 焦げていない部分を箸でつまんで食べてみる。

 「うん、味は悪くないと思うよ、これ」

 「……ほんと?無理しないでね?」

 始めの頃は味付けもなかなか定着せず、薄い日もあったり濃い日もあったり。でも今では進歩して、味はだんだんと固定されてきた。正直それだけでも成長してるな、なんて思う。

 よし、次こそは!と気合を新たに入れつつ、失敗した煮魚を口にしては『うへぇ……』なんていうキミの姿を見て、さっきより煮魚の味がマシになった気がした。


 『大雨洪水警報、波浪注意報が出ており……』

 テレビから聞こえてくる悪天候の注意報。それを二人、ソファに並びながら眺めていた。

 「……ねぇ、凄いどうでもいい話、するね?」

 「え、いきなり何?」

 いきなり振られた『どうでもいい話をします』宣言。気象情報を見ている時に思いつくってどんな話だ。

 「あのさ、“波浪警報”ってさ。小さい頃漢字が分からなかった時、“ハロー警報”だと思っててさ。『なんで“大雨・洪水に並ぶのが『ハロー』?”』って思ってたんだよねー」

 一拍置いて考えて。その後にじわじわ笑いがこみ上げてくる。

 「『ハロー警報』……。なにその平和感にじみ出てるような警報……!」

 クックックッ、と漏れる笑いを抑えきれない。

 「えー、そういう勘違いみたいなの、無かった?」

 「わかんない、あったかもしれないけど覚えてない」

 「あと私、『台風一過』は『台風一家』だと思ってた。それ家族に言ったら『台風は何人家族なの?』って大笑いされた」

 キミのそういうたわいもない話が大好きで、さっきは『どうでもいい話』と宣言されたけど、きっと僕はこの話を結構な確率で覚えているんだろうな、と思った。



 当たり前の日々。平凡な日常。僕にとって毎日の生活は良くも悪くも平坦だった。だけど君と出会ってからはびっくりするくらい毎日に飽きなくなった。キミがいると全然退屈なんてしない。キミがいるだけで驚くほど毎日笑顔の連続。

 

 周りからは『ドジとか天然は、最初はかわいいけどなー』とか好き勝手言われるけど、僕一人だと平坦だった日常を変えてくれたのはキミだった。だからどんなにドジでも天然でも、僕はキミだからかわいいし、キミだから一緒にいたい。もう、キミじゃなきゃダメなんだ。


別にみんなに伝わらなくていい。僕の世界では、キミが一番だってこと。

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