第27話 世界観をいかに伝えるか

 世界観をどのように伝えるか。それはとても難しい。

 技術的な問題でもあるが、作品のテーマによって大きく変わるからだ。


 たとえばヒューマンドラマ。

 主人公の身の回りにおける悩み、不安などをベースに物語が発展していく場合が多い。

 共感を呼ぶには、なぜ主人公が悩むのか、どんな状況下にあるのかなどしっかり描かねばならない。

 それには、家族構成を提示してやらねばならない。


 科学をテーマにした作品もそうだ。

 ある程度世界の成り立ちを説明しておかないと、物語そのものが成り立たなくなってしまう。


 あとは異世界恋愛もだろうか。

 貴族、婚約などといった周囲との軋轢が話の軸なので、貴族社会や人間関係、そのあたりをまず書かないと話にもならんワケだ。


 これらはとりあえず除外する。

 この創作論は、如何にしてハイファンタジーでランキングに乗せるか、注目をあびるかに絞っているので、他ジャンルには対応できないのだ。すまんね。


 ではハイファンタジー。

 どうやって世界観を伝えるか。スタート!


1,ナーロッパと違う部分を書け。


 ナーロッパとはなんちゃって中世だ。

 生活水準は中世中期から後期。人の考え方は現代よりで、貴族は横暴。ギルドなど現在でも再現不可能なテクノロジーが一部存在する。

 主に戦闘では剣と魔法が使われ、作品によってはステータス、スキルなどがとくに説明もなく登場する。


 これら世界観はすでに読者の頭に刷り込まれている。

 なので説明がなければ、そこはナーロッパとして読者は認識するわけだ。


 ここにいきなり銃がでてきたらどうだろうか?

 文明レベルが把握できなくなる。

 銃に準じた文明レベルなのか、文明レベルはそのままで銃があるのか、あるいは魔法が発達した先に銃として形を変えたのか。

 その辺がまったくわからなくなるわけだ。


 これら要素は出てきた瞬間に説明してやるのが好ましい。

 もし、タイトルに出てくるのならば、あらすじに記載すべきだろう。

 ないと読んでいてスッゴク不安になるのだ。


 重機とか家電っぽいのもそうだな。

 文明レベルが当てはまらないときは、とにかく可能な限り早く説明せよ!


2,世界観がウリならもうそれだけ書いちまえYO!


 たとえば魔石で動く列車があったとする。

 そこで働く主人公であるとか、それを使っていろんなところに旅をするだとかの作品。

 そんなときはもう列車についてだけ書いちまえ。

 列車のすばらしさ、そこから広がる冒険録。

 なんなら主人公は後回しでいい。世界の魅力をまずは伝えてやろう。


3、エピソードトークで世界観を。


 魔道列車。それは魔道歴778年に天才魔術師フォーリンが魔素を発見したことより生み出された。

 当時、魔素はどうたらこうたら。

 時の皇帝ホニャララが臣下に令を発し、どうたらこうたらして、基礎となるものができる。

 その後試行錯誤を繰り返し、ホニャララ年の歳月をかけ、魔道列車は排気量一億マジュールになるまで成長をとげた。

 最大積載量うにゃららトン。

 ……


 違うよね。

 マニアしか喜ばないよ。



――――――


「オイ! なにをボヤボヤしてやがるんだ!」


 ふきでる汗をぬぐっていたら、親方に怒鳴られた。

 僕はあわてて火室に魔石をくべる。

 シュシュっと音がして炎がいっそう強くなった。


 この魔石が魔道列車のエネルギー源だ。

 列車の総排気量は一億マジュール。一都市でつかう魔力に匹敵するんだって。

 天才魔術師フォーリンが魔素を発見してから作られたらしいんだけど、僕には難しいことは分からない。


 とにかく僕はヒマさえあればこうやって炉に魔石を放り込むんだ。

 だって、これが僕の仕事だからね。


「ちぇ、あのハゲオヤジは人使いが荒いなあ」


 となりで文句を垂れるのは、相棒のミンティーだ。

 彼女とはだいたいペアになって仕事をしてる。

 年は僕と同じで12歳。見た目からはあんまりよく分からないんだけどね。


「ミンティーが怒られたわけじゃないじゃん」


 つい彼女にあたってしまう。

 だって、ミンティーはあんまり怒られないんだ。

 女の子だけど僕より体力があるんだよ。

 ワーキャットっていう数の少ない種族でさ。

 僕のような大陸の90%を占める人族じゃない。力も身軽さもすっごいあるんだ。


「どっちが怒られたとか関係ないよ。結局やらなきゃいけない仕事が減るわけじゃないんだしさ」


 おまけに考え方も大人ときてる。

 ズルイよなあ。

 たしかにミンティーの言う通りなんだけどさ。


 彼女はいいヤツだ。それにカワイイ。

 ビコビコと動くシッポと耳が、見ていてとても癒される。


――――――


 まあ、内容の良し悪しは置いて、こんな感じでストーリーを進めながら世界観を説明していく。

 魔道列車のこと。魔石のこと。主人公が人間で、人口の90%が人間。

 ワーキャットの容姿と人間との関係性など、情報はけっこう盛り込まれている。


 このあと、主人公の目を通して魔道列車の素晴らしさを語るもよし、事件を起こすもよし、乗客とのトラブルを描くもよしだ。

 そのつど必要とされる情報を補足していけばいい。


 注意点としてはなるべく名前はださないこと。

 親方は親方のままでいい。ストーリーに深く関わるならそのとき初めて出そう。

 主人公の名前も、しばらくいらない。

 そのうちミンティーにでも呼ばせればいい。

 そこで、主人公のエピソードと交え、どんな性格か今まで何をしてきたかなんてものを書けばいい。


 とにかく情報を絞ること。

 主人公が軸になるのなら主人公のことを中心に。

 世界観が優先なら象徴するなにかについてたくさん書こう。


 設定の羅列はダメ。

 必ずストーリーと絡めて。

 あと設定が10あるなら、書くのは1ぐらい。

 9は捨てる勇気を持とう。

 必要に応じて、後で書き足してもいいしさ。


 いかがでしょうか?

 こんな感じが読みやすくなるのではないだろうか?

 もちろん、どの層をターゲットにするかで戦略はガラリと変わる。自分の好み、なにを伝えたいかなどを考えて、自分に合ったやり方をみつけていただければと思います!

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