第11話 改行をつかいこなそう

 文章そのものをうまく書くのは難しい。だったら見た目をよくしてやればいい。

 それには改行だ。

 うまくつかいこなせ。中身そのままでグッと読みやすくなるから。


1,セリフは改行しない。


 意外と知らない人がいる。「」でくくった部分は改行してはいけない。

 地の文と区別がつきにくくなるからだ。

 WEB小説では気にしない人も多いようだが、守らないより守った方がいい。


 だが、長ゼリフのときは改行したくなるよな。

 そういう場合は二個に分けろ。

 ただ、「」を連続させるんじゃないぞ。かならず地の文をはさめ。

 「」が続いていいのは別人が話しているときだけだ。


 ん? よく分からない? よし、例をだそう。


「うんち!」

「うんちうんちうんち!」


 二人の人間が罵倒しあっている感じだ。

 これが一人になると。


「うんち!」


 罵倒の言葉は止まらない。


「うんちうんちうんち!」


 こんな感じだ。

 うまく使いこなして見せろ。


2,間を詰めすぎない。


 たまにギュウギュウに詰まった文章を見かけるときがある。

 まるで満員電車だ。暑苦しいったらありゃしない。

 適度にすきまをあけよう。文字にもソーシャルディスタンスをだ!


 WEBは書籍と違って、つまっていると読みづらい。

 たぶん、縦書き横書きが関係してるんだろうな。

 WEBにはWEBのスタイルがあるのだ。逆らったところでいいことなど何一つない。


 声にだして読んでみよう。

 一般的に息継ぎする場所が「、」で、文の終わりが「。」だ。

 改行は一拍置く感じだ。

 また、話が変わったり、着眼点が変わった場合は一行あけるとよい。

 

3,接続詞を減らせ!


 接続詞は次に続く文の方向性を示す。

「だが」「しかし」などがあれば、前文と違う内容がくるんだろうなとわかる。

 けっこう重要だ。次にくる文章の方向性がわかると、読む際にストレスを感じにくくなるからだ。

 車の運転みたいなものか。

 ドライバーは酔いにくいが後部座席は酔いやすい。

 どちらへ向かうか自分で決められるドライバーにくらべ、前が見えない後部座席は酔いやすいのだ。文章も似たような感じなんだろう。


 ところが、この読みやすいはずの接続詞、WEBではあまり好かれないようなのだ。

 なんでだろうな? 話し言葉が多いからかな?

 SNS文化が根っこにあるからだろうか?


 ひとつ例をだしてみよう。


 俺の妻はメシマズ妻だ。

 魚は焼きすぎてやたらと固いし、ホウレンソウもゆですぎてドロドロだ。

 その割にレトルトには頼らない。妙に手作りにこだわったりする。

 先日でてきた料理なんかは、ソースも手作りだった。

 アンチョビ、いぶりがっこ、初めて耳にする調味料なんかもふんだんに使われていた。


「どう? おいしい?」

 

 妻は笑顔で聞いてくる。


「ああ、おいしいよ」


 言えるものか、マズイだなんて。俺はニッコリ笑って返事をすると、なるべく息をしないように料理を平らげていく。



 こんな感じだろうか?

 ちょっと自信ないが、普通に読める文章になったと思う。


 この文章、接続詞をまったく使っていない。

 マズイけど旨いと答える部分、「しかし」などの反語を使わずに処理してみた。


 セリフや行間を上手く使えば、接続詞はだいぶ減らせる。

 意識して書いてみてはどうだろう。



4、改行で間を表現しろ!


 わざと隙間をあけることで、物語の間をつくる。

 例題だが、そろそろ新しい文章を考えるのがメンドクサクなってきた。自作品から抜粋したいと思う。


――――――


 ピチョン、ピチョン。水滴の落下する音が響く。

 音の発生源は分からない。周囲は暗く、立ち並ぶ金属製の柱が見通しを悪くしている。

 床へと目を向ける。

 ところどころ破損した石のタイルが隙間なく敷き詰められているが、ガラスの破片や瓦礫、紙くずなどが散乱しており、非常に汚い。

 それに付着している黒い染みは血痕だろうか。

 

 わずかな光をたよりに進んでいく。

 光源は壁のポスターを照らすスポットライトと、傾いたネオン管だ。


 やがてロウワーマーケットと描かれた電飾案内板が目に入る。

 マーケットか。食料を手に入れるにはうってつけだ。

 しかし、危険だ。奴らも集まっている可能性が高いだろうから。

 

 ガラガラガラ。


 何かが聞こえた。

 素早く柱の影へと身を潜める。


「浅瀬に~とめた~」


 しわがれた男の歌声。

 チッ、早速おでましか。

 声の出所でどころをさぐる。

 ……あそこか。

 柱の影からそっと覗き込むと、薄汚れた服を着た男の姿が見えた。


桟橋さんばしには~白い~小船が~」


 男は体を左右にゆすりながら、のたのたと歩く。

 そして、ピタリと足を止めると


「――俺のウサギちゃんはドコだぁ!」


 ドゴリと鈍い音がした。

 男が引きずっていた鉄の棒で何かを叩いたのだ。

 その後、棒は何度も振り下ろされる。

 どうやら叩いているのは木製のキャビネットのようだ。


――――――


 こんな感じ。

 行間をとって時間の流れを調節している。

 前半は流して読んで欲しいので、つめ気味に。

 後半は立ち止まって欲しいので、ゆったりとさせた。

 結果、目が滑りにくくなってると思う。

 好みもあるので、いろいろ工夫してもらいたい。


 以上、改行についてでした。

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