【短編740文字】インタビュー『3分で星新一のようなショートを読んでみませんか?』
ツネワタ
第1話
男は国一番の戦士であった。獣のような容姿に大きな体はまさに怪物だった。
やがて無敗のままで世界王座に登り詰め、幾度も挑戦者を返り討ちにしてきた。
しかし、その彼に初めての敗北を味合わせた戦士が現れた。
以下は決闘後のインタビューでの記者と挑戦者のやり取りだ。
【問・チャンピオンは負けたら自分の資産を全て寄付する約束をしていたらしいですよ】
《そうか。ならあいつは不細工な自分の顔も博物館に寄付すべきだ》
《きっと行列が出来るはずだ。それでチケット料を取るのをオススメするよ》
【問・チャンピオンとあなたに違いがあったとすれば何ですか?】
《奴は裕福な家に生まれて、何一つ不自由なく暮らしてきたらしいな》
《おそらくソレが原因だろう。敗北の味を知らなかったんだよ》
【問・あなたは確かスラム育ちですよね?】
《あぁ、ドブネズミのような暮らしを毎日強いられた。だけど今は感謝してる》
《あの貧しい生活があったからこそハングリー精神を失わずに済んだ》
《負け続けの人生だからこそ、勝つための強さを学べたんだ》
【問・今のあなたの人生は一体どんな味なんでしょうね?】
《ハハハハハッ! 表現するのは難しいなぁ》
【問・やっぱり蜜のように甘い味なんですかね?】
《いや…… そんなモンじゃないと思う。きっと、もっと泥臭いはずだ》
《どうしても知りたいなら一つだけ……》
《鼻をすすり、汗ばんだ手で、涙を流しながらパンを食べてみると良い》
【問・それはなぜ?】
《僕の歩んできた人生の味が分かる》
二人の会話は以上だ。
新しいチャンピオンになった男は以降何度も王座を防衛し続けた。
彼の決闘外でのやりとりはその後も注目を集め、対決を盛り上げるためとはいえ、
決闘相手とは犬も食わない罵り合いになってしまう事が多かった。
男は今も王座を守っている。
【短編740文字】インタビュー『3分で星新一のようなショートを読んでみませんか?』 ツネワタ @tsunewata0816
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