第75話 コンテナハウス
40フィートのコンテナ二つを積み重ねて、二階建てのコンテナハウスに改装した。
上側のコンテナを1メートルほどずらして重ね、二階にベランダを付けることにする。
おかげで玄関前に屋根付きのスペースが作れたし、壁際の階段も設置しやすくなったと思う。
二階はロフト風に設計した。基本は吹き抜けで、コの字型のスペースを確保。
通路は1メートルほどの幅を確保し、両脇に広めの部屋を作ることにした。
一番広い部屋を寝室、向かいの部屋をリビングか書斎にしたい。
階段はハシゴ式じゃなくて、ちゃんとした手すり付きの直階段。コテツが登りやすいからね!
「レイアウトを決められるのはありがたいよなー。……うん、窓は大きめにしよう。入ってすぐのドアの横にトイレ、洗面所、風呂スペースにして、奥の壁際にキッチンを設置」
コンテナハウスを購入後に表示された、レイアウト決めの画面をタップしていく。
暖炉は左手側の中央に設置。コの字型の二階部分を吹き抜けにしているため、ちょうど良い。この暖炉ひとつで二階部分も快適な暖かさになるだろう。
「うん、こんなものかな?」
後から変更や追加も出来るようなので、とりあえずはこれで試してみよう。
設置をする前に、家具類や荷物を回収し、テントも【アイテムボックス】に収納する。
撤収させたテント跡地を計測してコンテナハウスのスペースを確保すると、その場所に『建てる』ことにした。
購入したコンテナハウス(二階建て改装済み)は既に【アイテムボックス】内に収納された状態なので、設置するのも簡単だ。
「よし、完成! 今日からここがマイホームだぞ、コテツ」
驚いてパニックにならないよう腕の中に抱き上げていた子猫はぴたりと耳を寝かせている。
唐突に現れた二階建てのコンテナハウスにビックリしたのだろう。尻尾もたぬきのように膨れ上がっている。
「ごめんごめん。驚いたよな。大丈夫、テントよりは快適に暮らせるはずだから」
毛並みを整えるように、そっと手櫛で撫でてやると、ようやく落ち着いてくれた。
さっそく新居を確認しようと思う。
玄関は南側に設置した。入ってすぐ、右手側にバストイレ洗面所を纏めておいた。
もちろん室内は土足厳禁。靴を脱いで【アイテムボックス】から取り出したスリッパに履き替える。
コテツにも
先程は驚いていたが、今は家に憑く妖精らしく、興味津々の様子で室内を見渡している。
「ほら、案内してやるぞ。おいで」
「にゃっ」
ちょろりと後を追ってくる姿が可愛い。
吹き抜けになるように設置したが、思った以上に天井が高く感じた。
コンテナハウスなので窮屈になるかと思ったけれど、天井が高い分、閉塞感はない。
中央左手側の壁際には暖炉。今は使わないが、秋口あたりからは重宝するだろう。
燃料の薪には場所柄的に困らないし、調理も可能なタイプなので使うのが今から楽しみだった。
(暖炉で作る煮込み料理、旨そうだよな。圧力鍋は時短には良いけど味がイマイチに感じるし)
暖炉前のスペースにはテントで使っていたラグを敷いた。
コテツお気に入りの『猫も人もダメにする』ビーズクッションも置いておく。
幅は2メートル以上あるので、コテツと一緒にのんびり寝転がるスペースには充分だろう。
暖炉の向かいに階段を設置してある。少し急だが、手すり付きにしておいた。階段下のスペースはもったいないので、収納にしよう。
窓は自由に設置できるので、暖炉周辺には大きめの物を。コンテナハウスなので、灯り取りも兼ねて窓は大きめ、なるべくたくさん設置しておいた。
「外から丸見えだから、後でカーテンを
今のところ大森林住まいなので、見られるとしたら魔獣や魔物くらいだが、何となく落ち着かないのでカーテンは必須!
透け感のあるレースカーテンと遮光性の高い色柄付きのシンプルなカーテンを重ねて使おう。
「で、奥がキッチン! おお、魔道コンロが三口ある! コンロの下は魔道オーブン⁉︎ 肉料理はもちろん、焼き菓子作りにも使えるな」
電子レンジがないのは残念だが、幸い俺にもコテツにも生活魔法の
「壁際には魔道冷蔵庫と冷凍庫まである!
今回の「改装」は創造神のサービスだとかでポイントは無料だった。おまけにキッチンなどの設備もサービスで付けてくれた。
何でも、創造神の予想よりもかなり早く、召喚勇者たち三人のレベル上げが捗っているとかで。
『君の優秀な餌っぷりに感謝を込めてプレゼントだ! 動力の魔石も初回サービスで入れておいてあげるから、魔力の充填は頑張ってね?』
餌っぷりとは。
微妙な表現に顔を顰めてしまうが、サービスのプレゼント諸々は嬉しい。
従弟たちはかなり頑張っているようで、既に中級ダンジョンは攻略済み。レベルも100オーバーで、現在は上級ダンジョンで腕試し中らしい。
ダンジョン外でも活躍しているようで、邪竜の配下の魔物や魔族を撃破し、占領されていた砦や城を幾つか取り返しているそうだ。
「アイツらの頑張りのおかげだよな。感謝しとかないと」
今はポイントの残高がかなり心もとなくなっているが、後でコンビニスイーツでも送っておこう。
「キッチンのシンク下に収納スペースがあるのもありがたいな。鍋やフライパンはここに置いておこう」
良く使う調理器具は壁に吊るしておく。
スパイス類はケースに纏めてあるので、これは調理スペースに並べておいた。
シンクには見慣れた水道の蛇口がある。水源はもちろん上下水道も謎だったが、そこは環境汚染がないように創造神が特別仕様にしてくれているらしい。
「上下水道にはスライム完備とか? ……まぁ、浄化用の魔石をくっつけてあるんだろうなぁ……」
蛇口の根元部分に水の魔石が埋め込まれていたので、定期的に魔力を補填していく必要があるのだろう。
電気ガス水道代などの光熱費が無料になるのだと思えば、有り余る魔力を有効活用できるのは両手を上げて歓迎する。
ファンタジー世界、最高です!
「さて、じゃあ二階を確認に行くか」
コテツが率先して階段を登って行く。
ちゃんと一段ずつ滑り止め加工済みだったので、子猫でも安心。創造神やるな。
「おお……! 意外と広く感じるな」
通路を挟んで二部屋になるようにレイアウトしたのだが、窓を大きく取ってあるので、視界が良好だ。明るくて解放感がある。
南側の一部屋にさっそくクイーンサイズのベッドを壁にくっつけて設置した。
二階のロフトは手すり付きなので安心だ。
大きめのベッドを置いても寝室にはまだ余裕があったので、壁際にクローゼットを置くのも良いかもしれない。
「で、寝室の向かいには本棚とソファセットを置こう」
北側の部屋はベランダに通じている。大きめの窓にしたので、出入りしやすい。
ベランダからコンテナハウスの屋上に出られるようになっている。
「洗濯物を干すのに屋上は便利だけど、必要ないんだよなぁ……」
お風呂はリラックスのために必要なのでそこは譲れません。
「まぁ、大森林の様子を上から確認できるから、便利っちゃ便利かなー?」
見晴らしの良い高所は本当なら不安だが、この世界でも食物連鎖の天辺にいるドラゴンのブレスさえ弾く創造神の結界付きなので、余裕で森林浴も可能だった。
魔物避けと隠蔽の効果があるので、この拠点が害されることはない。
ちなみにコンテナハウスの外壁は大森林に溶け込むようにと創造神が気を利かせてくれたおかげで、モスグリーンカラーだ。
迷彩柄でなかっただけマシだろうか。
「にゃあああん!」
コテツはコンテナハウスが気に入ったようで、階段を駆使して部屋中を駆け回って遊んでいる。
二階の書斎風リビングを整えると、俺は大きく伸びをした。ひとしきり片付けは終えたので、ぐるりと周囲を見渡す。
ポイントが少なくなったので、まだ足りない家具はあるが、普通に生活するには充分な部屋になったと思う。
シンプルだけど居心地の良さを優先したので、いわゆるホテルライクなイメージに近い。
悪くないよな。何なら、日本で住んでいた部屋よりも立派だったりする。
「カーテンとかクローゼットや食器棚とかは、明日以降ダンジョンで稼いでから用意するとして……」
とりあえずは引っ越し完了祝いとして、夕食はブラッドブル肉でステーキを堪能しよう。
とっておきのワインも開けるつもりだ。
「っし! 異世界スローライフ、楽しむぞ!」
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