【改良版】無茶ぶり探偵~事件を解決するのは私では、ありません。あなたです!~
久坂裕介
第一話
T中学校、一年一組。少し暑さを感じてしまう、五月の昼休み。
僕、
ちなみに今日の時間割りは、一時間目が理科、二時間目が英語、三時間目が社会、四時間目が音楽、五時間目が数学、六時間目が体育だ。
数学の教科書を見ながら、考えた。来年から、この中学校でも教科書は
そうこうしていると昼休みの残り時間は、あと少しになった。
さて、昼休みはもう少しあるから、それまで数学の
「え?! うそ?! 無い、無い、無い! 数学の教科書が無い! えー! どうしよう?!」
声の主は、
だから僕は、思った。あー、お気の毒に。数学の
クラス委員長の、
そしてクラスの
押田先生からは『こんな計算も出来ないのか! お前は、ちゃんと小学校を卒業してきたのか!』と、たびたび怒られていた。でも音楽と美術は、得意だった。だから僕はみのりさんは
みのりさんは、親切で
大人しくてクラスに
更によく、みんなの相談に乗っていた。
『俺、あいつが苦手なんだよね~』
『私、隣のクラスに好きな男子がいるんだけど、どうしよう?!』
そしてそれらに、適切なアドバイスをしていた。そんなみのりさんだから一学期も一週間を過ぎると、皆に
そして今、『数学の教科書が無い!』と騒ぐ咲子さんの隣に、つかつかとやってきた。更に
「数学の教科書が無いんですか? 咲子さん?」
「そうなのよ! どうしよう?!」
「うーむ、これは事件ですねえ……」
僕は、いや、教科書が無いのは事件じゃないと思うんだけど……、と心の中でツッコみつつ、みのりさんを見た。彼女は、「いいわ! この事件、私の
すると突然、みのりさんは僕を
「この事件、五分で
思わず立ち上がった僕は、聞いた。
「え?! ぼ、僕?!」
「そうです! 海太郎君に、この事件を解決してもらいます!」
「ど、どうして僕が?!」
すると、みのりさんは
「それは海太郎君は、数学が得意だからです! だから、きっと無くなった数学の教科書を見つけ出してくれるはずです! これが私の推理です!」
ええ~、そんな理由? それって推理じゃないよ。それってただの、
更にみのりさんは自分の左手の腕時計を見ながら、言い放った。
「
ええ~、五分?! たったの五分で数学の教科書を見つけるの?~と思ったが、やるしかなかった。僕は取りあえず、咲子さんに聞いてみた。
「ちゃんと今日、持ってきたの? 授業で使う、教科書を?」
「うん」と咲子さんは机の中の教科書類を、机の上に出した。
理科の教科書とノート、英語の教科書とノート、社会の教科書とノート、音楽の教科書、国語の教科書と数学のノート。なるほど、確かに数学の教科書が無い。
僕は、再び聞いてみた。
「ちゃんと
「ううん。いつも私は、朝に準備をするの。でも
なるほど、確かに教科書は五冊あるな、と確認した僕は少し考えた。そして、ひらめいた。
「どっかに、忘れてきたんじゃないの? 例えば音楽室に! ほら、四時間目の授業が音楽だったから、音楽室に忘れてきたんじゃないの?!」
すると咲子さんは、『はっ』とした表情になった。
「あ! そうかも! ほら私って、おっちょこちょいだから、音楽室に忘れてきたのかも?!」
だがもし、そうだと
みのりさんは、腕時計を見ながら冷静に告げた。
「あと、二分です」
あと二分?! 無理だよ、あと二分じゃ絶対、数学の教科書を見つけることは出来ないよ!
「はあ~」と、ため息をついて
すると、ひらめいた。いや、咲子さんは音楽室に数学の教科書を忘れてきた
すると、これは一体、どういうことなんだ……、と五冊の教科書を見つめた。理科の教科書、英語の教科書、社会の教科書、音楽の教科書、国語の教科書と数学のノート。あれ? と、違和感に気づいた僕には、全てが分かった。なるほど、そういうことか!
再び、みのりさんは告げた。
「あと、一分です」
★ ★ ★
僕は、咲子さんに聞いてみた。
「ねえ、咲子さん。今朝、ちゃんと数学の教科書をバックに入れた?」
「もちろんよ! だって教科書は、ちゃんと五冊あるし。今日の授業で使う教科書も五冊だし!」
「じゃあ、どうして国語の教科書があるの? 数学のノートはあるのに? 今日は国語の授業は無いよ」
咲子さんは、目を丸くした。
「あ! そういえば、そうだ! どうして国語の教科書を、持ってきちゃったんだろう?!」
僕は咲子さんの国語の教科書と、僕の数学の教科書をピタリと合わせて説明した。多分、国語の教科書と数学の教科書を間違ったんだと思うよ。国語の教科書と数学の教科書は、出版社が同じで大きさと厚さが一緒だから。咲子さんは今朝、寝坊して、あわてていたって言っていたから、きっと間違えたんだと思うよ。僕もたまに国語の教科書と数学の教科書を、間違えるんだと。
すると咲子さんは、「あ~、そうかも知れない……。ほら私って、おっちょこちょいだから。てへ」と
僕はこの
すると、みのりさんが告げた。
「はい、そこまで! うんうん、無事、事件は解決したようね!」
いやいや、みのりさんは何もしていないじゃん! ただ残り時間を告げて、僕を追い込んでいただけじゃん! もちろん、そんなことは言えないが。
すると、みのりさんは自分の席から数学の教科書を持ってきて、咲子さんに
「咲子さん、これを使って」
「いいの?! みのりさん?!」
「いいの。困った時は、お
咲子さんは、みのりさんに
「えーん! ありがとう、みのりちゃん!」
と、感動的なシーンの
「はい、皆、
僕と咲子さんは、すぐに自分の席に座った。だがみのりさんは自分の席へ戻らなければならないので、時間がかかり
押田先生も、
「何だ、瑞生? お前、数学の教科書を忘れてきたのか?」
みのりさんは立ち上がり、右手を
「はい、今日は数学の教科書を忘れてきました!」
押田先生は、
「おいおい、そんなことを
「はい!」
みのりさんは隣の席の男子の、数学の教科書を
完結
【改良版】無茶ぶり探偵~事件を解決するのは私では、ありません。あなたです!~ 久坂裕介 @cbrate
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