第282話 ?????

「一番の誤算は、俺達が勢いで用意した与太話的な夢をだ、お前がまさかまさかの心の底から信じた事な」


 それが俺のやらかし案件とどのような関係性があるんだろうか?


「あー……まぁ、神ってのは基本的に下々の生命体とは絡まないんだよ。何せ最弱だからな、妙な信仰とか願望を押し付けられて変質しても困るから関わらんのだよ」

「ほぉなの?」


 こうして話してると、かなりのフランクリンだぞ? お前。


「親しみやすい神ですので……こほん、そうなんです。だからな、無垢な感じで信じられるっていうのが初体験でな? あれでお前に加護が大量に飛んだ」

「へ?」


 何かとんでもない事をまた言い出しましたぞ、この神。


「したらお前がアクティブに動き出した。大方の予想だと、端っこの方にある設備が整ったコロニーに引き籠って世間から完全に孤立した状態になると思ってたら、まさかのロック・ロック直行の修行開始って……間近で見てて信じられんかったよ、マジで」

「命の危険がマッハでピンチだったからな」

「……まぁ、そういう事にしといてやろう」


 ニヤニヤしやがって……まぁ、外見ソックリだから、ちょっとデミウスっぽくなろうかなぁとは、ナノミクロン程度には思ったのは事実だけどよ……


 俺の様子をニヨニヨしながら見ていたが、まぁそれはちょいと置いておいてと、話題を変えるデミウス。


「でだ、こっちの世界にも戦闘職と生産職っていう縛りはあんだよ」

「ん? は? え? ちょっと?」


 なんですとっ!?


「本来なら、お前は完全に純生産職なんだよ、ジョブ的にはな? それがだ、純戦闘職以上の能力身に付けやがってからに……大量の加護があったからこその力業だったけど、そっからこの世界の法則が乱れた」

「えっと……ごめんちゃい?」

「後でルミに謝っておけよ?」


 何でそこでルミ姉ちゃんの名前が出てくるんだ?


「女神フェリオってのが別名な」


 すっげ聞いた事があるんですが?!


「……この世界の創造神がそんな名前だったね?」

「この世界を作ったのが彼女だからな」


 さらりと言うなさらりと! そんな俺の内心を見て、奴はニヤリと得意気に笑いながら付け加える。 


「ちなみに俺達の遊び場を提供してくれたのも、彼女だ。停滞しているから、それで刺激があれば良いのだけれど、とか言ってたな」

「……」


 ルミ御姉様っ!? いやいや、神なのかなぁとは思ってたけど、まさかの創造神! 物語的には創造神って一番位が高いんじゃなかったっけ?


「んにゃ、世界を作る程度だったら木っ端でもできるぞ。十中八九上手く運営出来なくてアボンするのがオチってだけで」

「ナチュラルに心を読むな心を」

「ケケケケケケケケケケケケケ!」

「でもそうか、ルミ姉ちゃんが女神ねぇ」


 まぁ、ずっとアバターだと思ってたけど、あの外見って神様的には分体だろうから、元の姿に近いのかしらん? という事は、相当な美女だな彼女。いやまぁ、うちの嫁達レベルでも、あそこに届く美貌の女は多いってのが凄まじいが……

 

「で自信をつけたお前は、俺達の思い出の場所が汚されてるってのにキレてだ、アルペジオに向かった訳だ。そしてそこで、あれは俺達もビビったが、ガイアと出会ってまさかの養女とかにするっていうね」


 ガイアって今さっき聞いたぞオラ。地球そのもの的な女神ってのは覚えたぞオラ……っておい! マジか?! 


「……ルル?」


 俺が聞くと、デミウスはやれやれと外人みたいに肩を竦めながら苦笑を浮かべた。


「こっちに転生してるのは感知してたけどな、まさか自力でお前の元にたどり着くとは思わんかったわ。んで、お前のお陰で転生出来たから、とと様と」

「……」


 うちの可愛い娘ちゃんが、元女神だとぉう?! いやまぁ、だからどうしたって気もするな。うん。ルルはルルだしな。


「……本当、お前のそういうとこは凄いわ、マジで」

「何か褒められた? 恐悦至極?」

「そういう事にしとけ……んで、更に予想外で、お前は多くの女を娶り、その女達が持つ権威を利用して国をゲットするわけだ。あれ、見てた神々悶絶してたぞ?」


 ルミがなぁ、タツローちゃんを取られたって騒いでな、大変だったんだぞ、とか抜かしやがる。つーかルミ姉さんとそんな絡みなかったから! どこでそんなフラグがあったし?! 知らんよマジで。つーか嫁達のあれやこれやだってほぼ成り行きだったし!


「知らんがなっ! つーか自発的に動いたってより、ガラティアの企みって感じの方が強かっただろうが!」


 俺は悪くね! 俺は悪くね!


「それでも受け入れたのはお前だろうに」


 こんにゃろ、分かってて言ってるなコレ。それでも俺は悪くねぇ!


「見捨てる選択肢をガンガン外されて、情に訴えられて、あそこでふーんあっそ、って切れたら逆にすげぇわっ!」

「確かに、そこはガラティアの勝利ではあったがな」


 ケラケラ笑いながら、分かってる分かってるよーと頷きやがるデミウス。あー、殴っていいっすかね?


「暴力反対な。んで話を戻すが……お前よりもかなり前の時間軸へアダム・カドモンは逃げ込んで、色々と悪さをしていたわけだ。俺達もそれなりに対応したけど、まぁ上手く行かないかった」

「対応って何をしたん?」

「復活待ちのプレイヤーに頑張ってもらった。せっちゃんとこのクランマスターとか、シェルファの祖先のアーサー君とか、ア・ソのクマとかな。ただ、ガッチガチに真正面から対抗しようとすると、アーサーやクマみたいに始末されるってのを知ってからは、トゥエイに暴れさせるだけにとどめたけどな」

「なんであのマザコンにしたし」

「お前が絶対的な恐怖の対象だから」

「……」


 そんな理由なんだ……あ、そうだ。


「気になってたんだけど、アーサー君って?」

「ああ、マジもんのブリテンの王様だよ」

「え、女の子じゃないやん」

「それ、本人の前で言うなよ? かなーり戦々恐々としてたからな? 神程影響を受けないエインヘリアルではあるが、それでもそこそこの影響は受けるからな。ノブノブとか今完全に女の子になっちゃって、胡蝶姫ときゃっきゃうふふのてぇてぇ感じになっちまってよ。まぁ、そこはそれで楽しんでるから善きではあるんだろうが」


 色々ぶっこんで来たー! 冗談で言ったんだけど……つーかノブノブに胡蝶姫って事は信長か? いやいや、それも衝撃的ではあるが、エインヘリヤルと来たかー。


「……エインヘリヤルって……北欧さんですかい?」

「呼びやすいのと、お前にとって分かりやすい単語という意味でな。英霊なのは間違いない。クマは完全に逸般人だけどな」

「だから字が違うだろ絶対」

「ケケケケケケケケケケ!」


 全くこいつは……しかしそうなると、こっちで死んでしまったプレイヤーの事が気になるな。


「クマとかは死んだまま?」


 気になる事を聞いてみると、デミウスはニヤリと笑ってへへんと胸を張る。


「うにゃ、ちゃんと魂は保護してある。アーサー君とせっちゃんとこのクランマスターは別として、多くのプレイヤーは逸般人と一般人だからな、ちゃんと地球に戻してやらんと世界の理が乱れて厄介事が増えるからな。そこはしっかりケアするさ」

「神様ってのも大変なんだな」

「なりたくてなった訳じゃないってのが一番デカいんだけどな、神って奴は」


 何だろう、サビ残で三日くらい完徹した俺みたいなテンションで言われても困るんだが……


「話しを戻すぞ。で、国を作っただろ? んで奴隷を助けて、特に子供達を助けたとこからお前はおかしくなった」

「人の頭がおかしいみたいに言うな!」

「ケケケケケケケケ! まぁ、あそこで完全にお前は現人神になっちまったな。正しい意味合いからは外れるが」


 子供達の純粋な祈りってのは凄いよな、中まで信仰心たっぷりだもんよ、なんてどこぞのお菓子の宣伝文句みたいな事を言い出すデミウス。


「んで、お前が神になるとだ、その影響はお前の家族に及ぶと」

「……なんですと?」

「お前の嫁達は完全にお前の眷属、女神様ルート直行。まぁ、永遠に一緒だ、って言ってラッキーで終わりそうだよなお前の嫁達なら。義理の息子、娘にも無条件で加護が発動し、これから生まれてくる実子は神にはならんだろうが、超人程度には収まるんじゃね?」

「……」


 色々と頭が痛い事をさらりと言いやがってからに……はぁ……


「ん? そいや、ここに来る前、つーか真っ黒黒助に刺された直後に行った映画館みたいな場所と、某筋肉アトラクションみたいなのは何だったんだ?」

「ああー、あれな」


 デミウスは面倒臭そうに頭を掻きむしると、大きく溜め息を吐き出して項垂れた。少ししてガバリと上を見上げるように体を反り返し、うがーと叫ぶように吠えた。


「出番だぞ! お前らの言うとおり見抜かれたよこんちくしょー!」


 何やってんだこいつ? と呆れた目で見ていると、急にふわんと柔らかい感触に包まれた。


「な、なんぞ?!」


 びっくりして周囲を見回せば、俺に抱きつく美女が一人。煌めく月の光のような銀糸の長い髪に、白を通り越して透明じゃねぇの? と思うくらいキメ細やかで美しい肌を持ち、ゼフィーナに迫るくらいの爆乳とルルっぽいプニプニした感触がする体、何より見ているだけで吸い込まれてしまいそうなブルーの瞳が印象的な美女だ。


「そこで嫁の事を思い浮かべるのはポイント高いかな? やっぱり取られる前に食っとけば良かったわ」

「……どちらさん?」


 いやまぁ、何となく想像というか予想はつくんだけど……ゲームの時のアバターとは別もんやないかい、と思うんですが。


「アルテミス、プロフェッサーが困惑しているだろう。いい加減にしなさい」

「そんな事ないわよねー?」

「……」


 ええっと……ルミ・ステアだったよなルミ姉さんのフルネーム……アナグラム?


「さすがねタツロー君、素敵ね? 素敵よ?」

「……」


 いきなりゲームのアバターに戻して口調も戻さないでいただきたい! つーか、こっちの金髪マッチョなイケメン誰よ!


「この姿で会うのは初だったね。アポロ、アルテミスの双子の兄だよ。ゲームでも会ってただろ?」


 いやもうお腹一杯です。つーかマジで遊戯の宴だったんじゃん!


「助けてデミえもん!」


 つーかルミ姉ちゃんが、アルテミスの拘束から抜け出せねぇ! 何とかしろい! というヘルプ視線を向けるが、あんにゃろ目を背けやがった!


「ま、受け入れろや。それより馬鹿弟子はどうしたよ?」


 こっちを見ろ! こっちを! わざとらしく話題を変えやがってからに!


「ああ、ヤオダバオト? お前が加減無しに踏むから、復活するのに手間取ってるぞデミウルゴス」

「……その名前で呼ぶなよ。好きじゃねぇんだよ、その名前」

「ははははは、ならなんでデミウスなんだ?」

「てきとーだよてきとー」


 あーもう滅茶苦茶だよ! 全然話が進まないじゃないか! だからあの妙な空間はなんだったんだー!

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