第280話 ????????
「神ってのは最弱だ。何せ簡単に滅びる。特に退屈ってのが猛毒でな、旧い神々が姿を隠す最大の理由が退屈だ」
何か衝撃の事実をさらりと流して、いきなり解説を始めおったぞ、このクソ神。
「今じゃ俺レベルの旧い神なんて三柱しかいねぇよ。他二柱に至っては正気を保っているか疑問だな。多分、ボケてんじゃねぇの?」
「俺に同意を求めるな同意を。そいつら知らんし。つーかさらりと一番旧い的なサムシングの事を言うんじゃねぇ」
「実際に旧いしな。旧すぎて認識されてねぇはずが、基幹軸から発生した別の地球の作家が、まさか俺の一側面と同調してコズミックホラーを産み出すとかってハプニングはあった。そしてまさかの概念が感染するように爆発的に広まるっていうね」
「ラブやん!」
おーもー、コズミックホラーって……こいつのちゃらんぽらんな性格と最も旧いっぽいニュアンスからすっと……いや、マジ? まさかアレか?
「アザ……」
「おっとそれ以上はいけない」
「……マジかよお前……」
おおよそ人間の表情筋では出来ない、なんちゅうか形容できない表情で嗤うマイフレンド。つーことは他二柱ってヨグ様とかなんかねぇ……
「あくまで一側面な。何せ神は最弱だからな、自分を守る生活の知恵って奴だ」
「神の生活ってなんなん?」
「わりとカッツカツやで?」
「神ってのも世知辛いんだなぁ……」
俺が同情する視線を向ければ、やめろその視線は俺に効く、とか言いながら顔を背けやがった。
「こほん、話しを戻すがな? 神にとって退屈ってのはきっつい。だから俺達はガイアに頼み込んで、ちょっとだけ文明を進めた。つーか他のどの世界線でも、妙に適応力のある日本人という特殊人種だったら、ちょい文明進めても大丈夫だと思ったら、やっぱり大丈夫だった」
「ジャパニウム鉱石! てめぇかっ!」
「あ~はぁ~ん」
「イエスじゃねぇ! イエスじゃ!」
ニヤニヤ笑って頷く馬鹿神。こんにゃろうぉ……
俺が生まれた地球では日本は勝ち組国家で、それの原因となったのがジャパニウム鉱石。鉱石というか、日本に転がってる石ころをそう呼ぶんだが、これにある一定の電波を放射してぶち当てると特殊な波動というかエネルギーというか、詳しくは知らんが発生するんだ。その特殊なモノを集積して電力変換させる装置に安置するとだ、原発二十基分程度の電力を約五十年間発生し続ける。日本国中にころがってる石ころがだ。
だがこのジャパニウム鉱石、日本国外へ持ち出すと二時間でその特質を消失するという、なんとも我が儘な特性を持っているんだこれが。なら加工したエネルギー、電力をバッテリーなんかにして輸出したらええやん、という方法も、なーぜーかー少しでも日本から離れると減衰速度が上がるという謎仕様があって使えない。となればだ、その優れたエネルギーを国内へ向けるのは当たり前で、このシステムが発見された八十年代は爆速の時代とか、ノーベルさんが降臨していた時代とかって呼ばれた。
「随分と日本だけが得する妙な石ころだと思ってたが……」
「そりゃお前、宇宙開発すら簡単にするような代物を持たせて、そうだ! 平和の為に使おう! なんて発想するのは、日本人くらいやぞ? いや、中には悪巧みしてた馬鹿もいたけども、何でか高い自浄作用が働いて俺らが動く必要すらなかったって、むしろ日本人おかしくね?」
「俺に聞くな俺に。だってそりゃあいつらが大暴れしてたからな……あれお前らの仕業じゃなかったのか? ほれあの」
「ああ、天照正教? 日本は太陽の女神天照様に愛されているから、特別な贈り物をされている。だから日々感謝して生きなければなりません?」
「そう、それだ。いるんだろ?」
「ありゃ
「……」
カラカラと笑うデミウスの言葉に、俺は膝から崩れ落ちながら頭を抱える。
我が国日本には、天照正教という宗教団体がいた。こいつらがまた正義の味方ポジションにおり、こいつらが政治の世界まで首を突っ込み色々やらかして、日本の政治をまともにしたっていう……なんとも頭の痛い話がある。いやまぁ、教義自体は凄い道徳的でまともはまともなんだが、崇める天照様を俺らの嫁! と叫ぶのはどうかと……女性信者は私達の妹なの! とか言ってたけど……
んど
「あ、うちのクランは初期の段階では神を集める予定だったが、お前っちゅうイレギュラーが発生したから、ちゃんと逸般人もおったぞ」
「ぜってー今、字が違っただろ!」
「何の事ですかにぇ?」
「あとナチュラルにこちらの思考を読むな!」
「ケケケケケケケケケケ」
もう深く考えるのはやめよう。こいつらはそういうナマモノであると割り切ろう。
「脱線したが、文明を少し進めてVRっちゅう仕組みを作って、んで最初は俺らだけで遊んでたんだよ。暇潰しに」
「そこに繋がるか」
「おう、退屈は猛毒やからね。だが、これにはすげぇ盲点があった」
「あん?」
「クッソつまんねぇでやんの! 当たり前っちゃ当たり前で、俺らが作った完璧なシステムで構築されたゲームなんざ、教育用プログラムにしかならんのよ」
「あーねー」
こいつらの個性は置いておいて、神は神だからな、そりゃ人間には出来ない完璧なシステムなんざ簡単に作れるだろうよ。
「んで、俺らは一旦自分達の能力を限界まで絞った分体を作る修行を開始して、その間に自分達が選んだ人間にゲームの基礎、土台を作る依頼を出したわけ。VRのコアであるオモイカネちゃんを託してな」
「……湯浅博士、氷室博士、毒島博士、山村博士……」
「有名人だよね!」
きゃるんって感じにクネクネするデミウス。こんにゃろぉ、拳を叩き込んでやろうかマジで……
その四人の博士、いや元々はプログラマーだったんだけど、色々あって開校する事になた日本国新世代プログラム研究大学の教授に就任した四人なんだが……人類史上初となるノーベル賞五連続受賞をし、その後も数々の革新的なプログラムを開発し続けてノミネートされ続けてヤバイってなって、人類史上初の殿堂入りポジションになった日本最強の偉人集団じゃないですかやだー!
「VRのコアは託したけど、あそこまで完成度を上げたのは間違いなく彼らの才能やで?」
「ああ、そうなんだ」
「うぃ。まぁ、才能なんざなくても色々な知を司る神々の加護は受けていたから、あれぐらい出来なきゃおかしいんだけどな、ケケケケケケケ」
「上げて落とすな!」
こいつはもぉ……
「んで俺らも納得出来る分体が作れるようになって、彼らもVRの完成度を高めてくれた。だけど新しい問題が発生する」
「……今度はなんだよ」
「俺らがVR空間へ入るとな、空間その物が俺らを認識できずにバグを吐き出し、空間が消滅してしまうって現象が発生したんだよ」
「……その為の分体じゃねぇのか?」
「権能をギリギリ限界まで引き落として、更には神としての格もギリギリまで落とした事で、システムが俺らを神として見れちゃったんだよ。つまりはシステムが哲学しちゃったんだな、こぎと・えるご・すむ」
「私は考える、ゆえに私は存在するって? デカルト先生ー! 超逃げてー!」
「ケケケケケケケケケケケ! それでAIがぽこじゃか発生しちゃったのも誤算だったね。まぁそのお陰でお前んとこの九十年代は凄い勢いで社会の自動化が進んで、少子高齢化から解放されたけどな」
爆速の時代を八十年代とするならば、九十年代は光速の時代である、とは誰の言葉だったか。確かにAI技術が凄い勢いで発展して、特に医療関係と交通関係の恩恵が凄くなって、少子高齢化の歯止めになったってニュースは良くやってたな。AIによるシミュレーションで不妊関係の問題がほぼクリアーされたとか何とか。製薬関係でも色々な進展というには凄まじ過ぎる進化があったとか何とか。
「でだ、俺達は考えた訳だ。仮想空間がダメならガチの世界を用意すりゃええやん、と!」
この駄目神、キリリとした顔で斜め上方向の事をしゃべりだしやがる……
「つまりスペースインフィニティオーケストラの世界は……」
「やったぜジャパニーズ! お前らが大好きな異世界転移を知らずに体験してたぜ! ケケケケケケケケケ!」
「暇潰しにそこまでの情熱を燃やすか神よ」
「だから暇すぎると俺らがタヒるんだって!」
それでも限界ってのがあらーな! なんだよ世界を用意しましたって!
「いやまぁ、そこまで悪い事ではなかったんだよ実際には」
「なんで?」
「お前が愛したこの世界は、長らく停滞の呪縛に囚われていてな、早晩滅びる定めにあったんだ」
「……りありぃ?」
「あ~はぁ~ん」
何でこう、衝撃の事実がポンポン出てくるんだ……
「俺らも基幹軸の地球を参考に世界を創造するわけだが、大体上手く運営出来るのは一割だ」
「……少なくねぇ?」
「んなモンだって。むしろ自然発生した世界をただただ観測してる方が上手く行くパターンの方が多い。ほれ、お前が大好きな異世界転移やら転生モノの王道パターンは?」
「……世界滅亡の危機を救う……」
「その概念も数々の世界が同じ結末を辿った、その悲鳴を聞いた
「マジかー」
もうお腹いっぱい、ぽんぽんぱんぱんなんですけどデミウス様……
「閑話休題な。で俺らの試みは実際上手く行って、じゃぁ人間にも解放して多様性を持たせようってんで一般開放に踏み切った。それがVR元年ってわけ」
「はぁ……それと俺が神だってのに何の関係があるってんだ?」
俺の疑問にデミウスはニヤニヤ笑う。
「まぁそう急ぐなって。ここは時間の概念なんかねぇから、お前が心配してる事は起こらんよ」
「ああそうなんだ。それなら聞いてやる」
「……いきなり偉そうになりやがって」
「あいあむきんぐ! おーけー?」
「ああ、そいやこのヘタレ王様だったっけ」
ヘタレとは何だヘタレとは。ただ慎重なだけだ!
「はぁ、話しを続けっとだ。本来なら滅びる世界線だったのを引っ張って来た事で問題が発生した。それがアダム・カドモンだ」
「落第邪神アダム・カドモン! 師匠から逃げ出して世界を滅ぼして全神最強!」
「ライトノベルみたいな表題やめような? てか精神的余裕が出来た瞬間から絶好調なのも不安になるからやめような?」
うるせぇ! こっちはぽんぽん世界の秘密を暴露されて結構いっぱいいっぱいなんじゃボケ!
「遅かれ早かれ知る事になる事実だけどな。んでな、アダム・カドモンの野郎、滅びる定めにある世界に寄生しては滅ぼすってのを繰り返していたらしく、元から滅びる予定だった世界が滅びる訳だから、誰も疑問に感じていなかったんだ。滅びる時期なんてマチマチやし」
「遊び場を召喚したらもれなく害虫がくっついてたと」
「そそ、厄介な外来生物がな。この世界風に言うならデデドだな。あいつら不快害虫なだけで、分解者としては優秀なんだけどねぇ。やっぱり見た目かね?」
「俺もゴキはちょっと駄目なんで」
「ヘタレやもんな」
「あれとヘタレは関係ねぇやろがぃ!」
「ケケケケケケケケケケケ!」
どうやら話はまだまだ続くようだ――
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