小話 その時、動いちゃった歴史
「同僚に頼み込んで、何とか御姉様方に複製してもらいました。どうぞ」
「ふむ、これがゼダンの伝説アフレコか。ありがとう! せっちゃんも映像を持ってなくてね、助かったよ」
「いえ、何か催し物に必要なんですよね?」
「まだまだ先の話だけどね? ほら、ライジグスって国が出来ましたって祝典みたいなのってやってないらしいんだよ。そもそも、パパンとママンの結婚式すら挙げてないしさ。だから八千七百六十時間(暦がないので時間単位、これで一年です)経過くらいに、建国記念みたいな催しをね」
「なるほど、生誕祭りですね? 帝国風に言えば」
「そうそう。向こうはすんごいド派手にやるじゃない? でもそういうのよりライジグスらしい特色を出したくてね。そこを区切りにして、時間での把握じゃなくてライジグス暦みたいに分かりやすいモノへシフトさせようかと思ってさ」
「いいですね。ニチヨウビって奴ですね?」
「いいよね! 今すぐにでも導入したいけど、やっぱりそこは特別感を出したいから、建国記念に国民へのプレゼントみたいにドーンってやろうかと」
「良いですね!」
「よし、このデータの内容を確認しよう。皆呼んできて」
「はい」
(ハクシンのエンギをするライジグス国王タツローの熱演を、無言で視聴するレイジ一家)
「……ふむぅ、なるほど……子供向けっていう話だったけど、これは」
「ルル様の反応を見ると、かなり子供に刺さるようですね?」
「これだけ夢中になれるなら、確かに子供向けの知育番組としては優秀なように思われます」
「……確かさ、メイド隊の中に、元放送局に居たって人がいなかったっけ?」
「あ、はい! キーパー(町中の清掃業務を担当する簡易的なメイド。メイド隊の下部組織のようなモノである)のサーディ・ヤーツさんですね」
「そうそう、彼女に協力を要請しよう」
「なるほど、元本職ですし、色々とノウハウを持ってらっしゃるはずですもんね」
「うん、アポお願いね?」
「はい!」
(企画の説明。そして動画の再生。巻き込まれる人々、伝説が始まろうとしていた)
「これ! 絶対ウケますって! これ系でマイナーながらもシナリオ書いてくれそうな人に心当たりありますから、その人に受注しましょう! それとこれだけ潤沢な資金があるのなら、是非! 本格的な俳優じゃなくて、発掘してこちらで育てましょう! これ絶対俳優とかの登竜門的な立ち位置になりますって! 監督とかも腕は良いけどこだわりが強い方とかいますから、そういう人にこそ刺さる企画だと思いますし、やりたいって手を上げる方いっぱい見つけられますよ!」
(こうして手綱は外されたのだった……)
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