才妃さんのぼやき 貧乏くじ引きましたマリオンです

 第二艦隊の艦船、その改修作業を監修しつつ、完璧にウィスル対策を行うチェック項目に目を通しながら、マリオンは切なそうな溜め息を吐き出す。


「才妃様? 大丈夫ですか?」


 タツロー周辺の王配関係者の中で、マリオンは実に優先度の高い扱いを受けている。それは彼女が選んだ船、工作艦ブルーエターナルが絡んでいる。


 ブルーエターナルは、ライジグスで進められている艦船統一計画でも最重要とされているハンマーシリーズ、全ての工作艦の始祖、旗艦とは別の意味でのフラグシップだ。そして、それを十全に扱えるマリオンは、メカニック達にとっての女神、オペレーターの女神がシェルファであるのと同じような存在で、故に才妃の中でもかなり高い序列にあるとされている。実際にはそんな序列はないが。


 そんなマリオンの表情に陰りがある、これは大変だとばかりに、ブルーエターナル所属のメカニックが声をかければ、彼女はへにゃりと笑って口を尖らせた。


「せっかくの時間でしたのに」

「あー、ご愁傷さまです」


 タツローとの熱々っぷりは誰もが知るところだ。いやまぁ、あそこの王配達が不仲な場面など見た事も聞いた事もないが、マリオンがタツローにぞっこんなのは誰もが知っている。だが、状況的に彼女が派遣されたのは正しく、どんな言葉も嫌味になってしまうので、メカニックの女性は言葉を濁しながら無難なところをチョイスして返事をするのが精一杯であった。


「全くもお、誰がこんなイタズラをしたのかしら」

「いやー、イタズラって規模じゃないっすけどね……」


 マリオンはおっとりしている。ちょっと、いや、かなりゆったりしているかもしれない。凄い神速でメンテナスアームを操作しているのが信じられない位に、かなりのゆるふわガールである。そんな彼女の感性にかかると、今回の前代未聞な無差別ウィルス攻撃すらイタズラ程度の扱いになってしまうようだ。


「でも、状況が整えば、すぐにでも陛下はいらっしゃるんですよね?」

「そうですけど……他の家族達が一緒なのにズルいじゃないですか」

「(なんでこの人はこんなに可愛いんだろうか……)そ、そうっすね。でもすぐですよ」


 ぷくぷくーと頬を膨らませて、私怒ってますのよ、という態度はかなり可愛い。これは下手な男共には見せられないな、と思いながら、メカニックの女性は可愛らしいマリオンの愚痴に付き合うのであった。

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