こばなし レイジ君の階級講座
「やあ、お待たせしました。ではライジグスの基本的な階級を説明します」
レイジが壇上に上がると、そこでホールに集まる軍人達を見回す。キラキラ輝く瞳で見てくる一定数に苦笑を浮かべながら、レイジは口を開いた。
「基本的に階級は、この階級章を見れば一目瞭然です」
ホールの後方にある大きなモニターに、明るい青がベース地の無地の階級章が映される。
「青一色の階級章は翼兵、これは見習いだね。これは階級の一番下、ここからが軍人としてのスタートとなる。兵の階級区分としては見習いから兵、尉官まではライジグスの訓練、タスクと呼ばれる技術を習熟した数で評価される。これが昇格だね」
モニターにつらつらとタスクの説明が表示され、そのタスクにチェックマークが付いていくと、ある一定数で無地の階級章に羽根のシンボルが追加される。
「はい、羽根がつきました。この状態で五等翼士、晴れて見習い卒業。この状態ではじめて兵に区分され、部隊に配属されます。別名ウィングファイター、一般的な戦闘艦乗りにとっては名誉な呼ばれ方ではないでしょうか」
レイジがニコニコ笑いながら説明する。一定数の人々の目の輝きが増す。その間にもモニターの階級章にはタスクのチェックマーク数が増えていき、やがて羽根が五枚まで増えると、青ベースの階級章に黄色のラインがプラスされ、五枚の羽根が一枚の翼になった。
「五枚、つまり五等から始まり一等まで上がり、更に規定のタスクをこなすと五枚の羽根が一枚の翼へと変化します。階級区分的には下士官、翼士長と呼ばれる階級へと昇格しました。始まりは五等翼士長から、翼一枚に羽根一枚ですね。ここから一パイロットというよりは班長などを任される階級となりますので、ウィングファイターからウィングコマンダーと呼ばれるようになります」
モニターに同じようにタスクチェック数が増えていき、先程よりは少し小さな羽根のシンボルが増えていく。それが五枚集まると階級章に赤い縁取りが増え、翼が二枚となる。
「はい、尉官です。大翼士という階級へ昇格しました。ウィングチーフと呼ばれます。もうここからは指揮官ですね。戦闘艦の大隊、艦隊の小分隊などの司令職などがこの階級から始まります。ちなみに隊長が良いか、司令が良いか、それとも指揮官が良いか、そこの厳密な規定は決定されてませんので、好きなように呼ばれています。特務艦隊のガイツ特務光翼士は、アニキとかリーダーとか隊長などと呼ばれてますね」
モニターには階級章に更に黄色のラインが追加され、翼が三枚となり、そこからはタスクが艦隊戦闘関係のモノに集中していき、それが一定に達すると羽根が増える。それが五枚に達すると、やはり黄色のラインが追加され、翼が二枚と二枚、羽ばたいているような意匠へと変化した。
「佐官、大翼士長。ウィングマスター。こちらは四等から始まります。もうここからはライジグスの最終兵器扱いですね。ここにいるのは、あのマルト二等大翼士長、カオス三等大翼士長、アベル四等大翼士長、ロドム三等大翼士長。一応、僕も軍部の階級ではここ、一等大翼士長になるらしいです」
羽ばたく意匠のシンボルの間に、まるでゆったり落ちてくるような羽根が追加され、それが四つまで増えると、階級章の縁取りに華美な装飾が増え、五枚の翼が花開くような意匠のシンボルが追加された。
「将官、光翼士。ウィングジェネラル。一個艦隊を率いる将です。現在のライジグスでは先程出た、特務光翼士のガイツ・ルキオ殿。その他では近衛に分類されている陛下の才妃様と側妃様がここになりますか。まぁ、もうあそこまでいくと、ビジュアルディスクの主人公ですが……あ、ちなみに我が国の国王陛下と正妃様ですが、この分類に当て嵌めようなんて愚行はしてません。あれはもうバグ、チート、アンタッチャブル、イレギュラーですからね、真似しちゃダメですよ?」
いや、真似なんかできませんから。その時、会場の気持ちが一つになった。
「それでですね、戦闘関係とオペレーター関係は区別して評価するべきではないだろうか? という声もありまして、戦闘関係はこれで確定だと思いますが、今後、もしかすると別々の評価基準が生まれるかもしれません。その時はまた説明しますので、頭の片隅にでも覚えておいてください」
では質疑応答はありますか? とレイジが聞くが、誰も手を挙げず説明会はつつがなく終了した。
この説明会からライジグス軍人が階級章を付け始め、その階級章のデザインに惚れ込んだ一定数が入隊したり、ウィングファイターだコマンダーだと自慢しまくって、中二病を患った一定数が入隊したりと、ますます文官不足が解消されずに武官が増えるという事態が加速するのである。それでこの制度を考えたレイジが頭を抱える事になるのだが、それはまた別のお話。
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